「野獣狩り」(1973)

 

Amazonプライムで、藤岡弘主演の気合いの入ったアクション映画を観た。

 

 

ギラついた藤岡弘が革命集団に立ち向かう野心作といった感じでした。

 

革命を標榜する"黒の戦線"という組織(といっても5人くらいの集団)がポップコーラ日本法人社長を銀座の日本支社で誘拐。人質と引換に要求したのはコーラの原液成分を教えること。ニューヨーク本社はそれを拒否して30万ドル(当時の金額で8,000万円)を提示。人質救出と犯人逮捕のため、警察は特別捜査本部(といっても10人くらいで対応してるようにしか見えない)を結成して、過激派と対決するというお話でした。事件のスケールはなかなかデカく、革命の志も大いにケッコウなのですが、製作費の問題からか、過激派側と国家権力側で関わる人数が共に少なく、それぞれの行動がどうにも粗雑です。

 

捜査本部の現場で空回り気味に奮闘するハミダシ刑事が、藤岡弘。親父の伴淳三郎も刑事で同じ捜査に駆り出されますが、自身のチームワークを重んじるやり方とは考え方が全く違う息子とソリが合いません。また、話の筋とはほぼ関係なく、藤岡弘の恋人役の渚まゆみがベッドシーン要員として出演していたりもするので、親子ゲンカや色恋沙汰のエピソードが余計に感じます。でも、ベッドシーンは大事です。

 

しかし、それを補って余りあるのがこの映画の撮影方法。全編の7割くらいが路上でのゲリラ撮影を敢行しており、銀座や有楽町(ちょっとだけ池袋)の当時の街並みがガンガン出てきます。今は亡き都市銀行の名前や聖徳太子の札束(身代金)が懐かしかったです。また、電車内の撮影もほぼ無許可なのではないでしょうか。木村大作の撮影監督デビュー作らしく、手持ちカメラで登場人物を追いかけた映像は臨場感たっぷりで、銀座歩行者天国でのゲリラ撮影は圧巻です。ビルの高層階の壁面を根性で歩く藤岡弘の場面にいたっては相当スリリングです。有楽町にある東宝のビルを使用したから実現できたとはいえ、今では絶対にできない撮影でしょう。「ゲッタウェイ」(1972)の看板が映っていたので、撮影は日本公開時の1973年3月ごろなのかな。過激派が死ぬシーンはペキンパーっぽいスローモーションなのですが、これはカッコ悪かったです。音楽(村井邦彦)も当時の日本としてはダサくないものの、追跡シーンで同じフレーズが何度も出てくるので少し食傷気味になります。

 

1970年代前半は藤岡弘の絶頂期なので、ギラギラ感がハンパなく、インテリっぽい犯人たちよりもかなり野獣です。もっと予算をかけて身の丈に合ったスケールで描いていれば、傑作になっていたのではないでしょうか。翌年にほぼ同じ主要スタッフで「野獣死すべし 復讐のメカニック」(1974)を作っていますが、そちらは未見です。須川栄三監督のハードボイルド系の作品は他にも観てみたいと思いました。