「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」(1993)

 

ジョー・ダンテ監督の傑作をAmazonスターチャンネルEXで観た。

 

 

1962年のキューバ危機の中で、米軍基地周辺に住むティーンの数日間を描いた作品。30年前の時代設定・音楽、その時代の政治状況ならではのサスペンス、ティーンの友情・恋愛、マニア向けのオマージュ等、「ストレンジャー・シングス」(2016‐)にもあった面白さを先取りしたような世界観。映画としてヒットしなかったのは、スター性のあるキャラ、登場人物たちの冒険・成長を見守るワクワク感、物語を推進する大がかりなサスペンスといったキャッチーな俗受け要素が物足りないからかもしれませんが、いかがわしさも入り混じった映画館体験の楽しさ、映画全体に漂っている牧歌的で平和な情景など、観ていて幸せになれる愛すべき映画でした。

 

キューバに近くて軍事基地もあるフロリダ州キーウェストに住む少年が主人公。父の転勤(キューバ沖の海岸封鎖任務中)で引っ越してきたばかりで周りになじめず、大好きなホラー映画だけが友人のような存在。来週末に特別上映されるのは、斬新な仕掛けのある蟻人間ホラー「MANT!」。怖がりの弟や最近できた友達と一緒に観に行くことになるが、キューバ危機のピークに達したその日に映画館で起きたこととは・・・というお話。ここでの上映企画成功を皮切りに全国への展開を夢見ているのが、ジョン・グッドマン演じる映画監督ウールジーで、劇場の椅子を揺らしたり、風を吹かしたり、今の4DXのようなギミックを実際に行った、伝説の映画監督ウィリアム・キャッスルをモデルにした人物です。

 

映画館には、「黒猫の怨霊」(1962)等の看板や、「蒙古の嵐」(1961)「Journey to the Seventh Planet」(1961)「性本能と原爆戦」(1962)「脱獄」(1962)「The Day the Earth Caught Fire」(1961)「ハタリ!」(1962)といったポスターが、主人公の部屋には「Killers of space」(1954)などのポスターが貼られていました。若き日のナオミ・ワッツが出ていた、劇中の別の映画「暴走ショッピングカート」もキュートで面白かった。劇中の架空の映画「MANT!」も実際に35㎜で制作するなど、ジョー・ダンテのこだわりが随所にある逸品でした。

 

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