「レッド・スコルピオン」(1988)

 

ドルフ・ラングレンのアクション映画をAmazonプライムのスターチャンネルEXで観た。

 

 

アフリカ共産主義国家の反乱軍指導者を暗殺するミッションを受けたスペツナズ(ソ連の特殊部隊)の中尉がドルフの役どころ。アメリカ人、ソ連人、アフリカ人の3人で反乱軍に潜入するシーンは第一・第二・第三勢力の三つ巴で、当時の世界の勢力図を凝縮した人物配置になっていたり、なんやかんやあって、サン族(いわゆるブッシュマンで、三つの勢力のさらに外にいる存在)に助けられた後に赤いサソリの焼印を刻まれて、サン族のボスとの二人旅(なぜ二人旅をすることになったのかはよく分からない)で真の解放に目覚め、そのボスにも別れを告げて、首にぶら下げているソ連軍のタグを投げ捨てて、世界のどの勢力にも属さない“レッド・スコルピオン”という孤高の男に生まれ変わるところなどはシンボリックで含蓄のある設定なんですが、なんせストーリーがザルなのが残念です。ただ、砂漠の陽炎が立ち込める中を、正面に向かって歩いてくるドルフとサン族のツーショット場面は、「アラビアのロレンス」(1962)にひけを取らない、この映画のベストショットです。

 

映画の前半から不気味に上空を徘徊していたソ連のゴツいヘリコプターが満を持して反乱軍の集落を焼き尽くすシーンから、物語はクライマックスを迎えます。反乱軍側を救うべく、ドルフが有志を率いてソ連・キューバ軍に反撃を開始、ほぼ無傷で敵をまとめてなぎ倒してくれます。あと、「治安紊乱(びんらん)罪」というセリフが出てくるのですが、人生で初めて目にした言葉でした。勉強になりました。

 

監督は「地獄のヒーロー」(1984)でもおなじみのジョセフ・ジトー。共産国側をソ連と共にサポートしてるキューバ軍の一員としてブライオン・ジェームズが出ています。「ブレードランナー」(1982)で一際デカかったブライオンよりさらにデカいドルフ、さすがです。アメリカのジャーナリスト役のM・エメット・ウォルシュも「ブレードランナー」に出てたなあ。他には、特殊効果がトム・サヴィーニ。終盤でキューバ軍人の右腕を吹っ飛ばす場面などでいい仕事をしています。音楽には、先日亡くなったリトル・リチャードの曲がガンガン使われていました。「ジェニ・ジェニ」や「のっぽのサリー」だけでなく、エンドクレジットでは、「All around the world」に劇中で放たれた銃声や爆発音をサンプリングしたシュールな音楽が流れます。