片面 Van Gelder | レコ屋巡りの夜

レコ屋巡りの夜

塩化ビニール(=レコード)中毒患者のトホホな日々を綴りたいと思います。
オリジナルが欲しいけど高いなら諦めます。

下の写真はつい先日、某レコ屋で入手したブツ:

 

The Incredible Jimmy Smith - Got my mojo workin' ( Verve V6 - 8641 ) 1965年 US LP Stereo盤 カンパニー・スリーブ付き 880円

 

その日は全くの不漁で、何も買わずに帰るのはのなぁ…と無理やり買ってみた1枚。とは言っても、収集対象のジミー・スミス先生だし、ステレオ盤とはいえUSオリジナル(と店側は表記していたけど、本当かどうかは調べなきゃ分かりません。お店の人も人間なら、買うのも人間なので間違い&勘違いは誰にでもあります)。

 

何しろ私を引き付けたのはそのコンディションの良さである。プライス・タグには『ジャケ/盤 EX+/EX+ 』とあるではないか!とにかくオリジナル(であろうがなかろうが)の美品に弱いのである、私は。だからいつも弊ブログに切々とコンディションのことを書くのである。

 

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余談ですが、このブログを見ておられる方は他のレコ・ブログを見られるかと思いますが、レコ・ブログを見るポイントを一つ。そのブログの主が頻繁に書くこと = そのブログ主がレコで最も重視していることである。例えば、そのブログで…

 

1. オリジナルかどうか

2. マト

3. 音質

4. 音楽そのもの(アルバム、シングルの曲)

5. 価格

6. レアかどうか

 

…と様々なことが重点的に語られると思います。音にこだわる方は、比較的1~3をよく語られます。音でなくとも1(オリジナル盤原理主義)ともなると、当然マトを無視することはないかもしれませんが。

 

因みに私は上の例なら、1, 4, 5だろうか?オリジナルと言っても厳密にはマトとか気にしていないタイプ。なぜ?答えは簡単で、このブログに登場するレコはその殆どが非王道タイプ(=マイナー系)だからです。

 

王道・・・いつの世界もこの王道が一番強い。いわゆる歴史的名盤系、もしくは有名アーティスト達の諸作品。60~70s Rock を考えただけでも、Beatles, Rolling Stones, Pink Floyd等々…彼らの作品は、多くの人が認める名作揃い。なのでレコード会社も彼らの”名盤”を何度も再発する。どうして?そりゃ何回販売しても売れるからですね。音楽も所詮はビジネスです。レココレもこういう王道人気アーティストを繰り返し特集しますが、それも理由は同じ。何回特集しても売れますから。

 

で、再発を繰り返す同じアルバムのレコードを識別するのが、オリジナル盤原理主義者のこだわる”マト(Matrix)”ですね。因みにMatrix とは”基盤”という意味。ここら辺は原理主義者さん達オラオラ系の方が沢山見ておられそうなので、あまり触れませんが(笑)。初版を求めるなら、それはマトに拘るのは自然かなとは思います。王道のオリジナル盤至上主義者=マトに走る傾向強しです。

 

しかし!それは再発を繰り返す”名盤”ゆえの問題であって、非名盤系(=マイナー盤)はロクに再発もされない。もう初版のみとかザラ。それでも一つのスタンパーで製造できるレコは2,000~3,000枚位らしいので、それ以上製造されているものなら考える余地はありそうですが。しかし、それも安価なレコなら複数買って「あれ、これ枝番が違う!」とかできますが、高額ともなると最初の1枚を入手することすら難しく、正直マトにこだわっている場合じゃないのである。

 

特に私は”価格”にこだわり、安く色んなレコを探すのが好きなので、このブログには見たこともないような安レコが沢山出て来るわけですな。マトを語っている場合ではないのです、私には。

 

その他自分はコンディションにもこだわる。しかしコンディション云々を語っているレコ・ブログをあまり見かけない。ということは、他の方々はあまりコンディションを気にしてないのか?

 

 

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閑話休題。最初のJimmy Smith US盤の話ですが、そもそも国内盤は持っていたのですが、やはりUSオリジナルの荒々しい音を期待しつつ購入したわけですよ。安かったし、何しろ美品だしと(ステレオですが)。

 

で、その夜帰って早速聴いてみようと軽く盤を洗う(汚い盤は針を痛めるので、必ず最初に洗います)。今年は安価ではあれどオーディオを一部買い替えたので、音にも興味を持ちだした。マト…と言っても枝番は上で記したように興味はないですが、Cutter ( = カッティング/マスタリングしたエンジニア・独立系会社)には注目するようになった。意外とマイナーなアーティストにも有名なエンジニア・会社が関わっていたするし、関わっていると大抵の場合音が良い(経験上)。そしてこの盤もターンテーブルに乗せる前にマトを見てみれば、何とあの”VAN GELDER” 刻印がある!(ヒャッハー~~!) 

 

(チョッと見ずらいですけど)

 

「ヴァン・ゲルダー?はぁ?」

 

という方は、沢山ネット上に記事がありますのでそちらをどうぞ(下に一つ貼っておきます):

 

写真のとおり、自信に満ち溢れた男です。

 

「俺様がカッティングしといてやったぜ…。聴いてみな。飛ぶぞ!」

 

と言ったかどうかは定かではないですが、いちいち自分がやったぞと証拠を残すあたり物凄い自信家です。日本の政治家もそのくらい自分の政治活動に責任と証拠を残せと言いたい!(ハァハァ・・・)

 

彼は誰もが認める超一流のエンジニアで、とにかくこの刻印があれば、全ての音が前面に飛び出してくるような素晴らしい音が堪能できる!(ハァハァ・・・) 少なくとも私の中では断トツの1位のカッターである(こういう呼び方は私だけだろうな…笑)。

 

で、盤を洗浄後さっそく聴いてみると…ん?いつものヴァンゲル先生の音じゃない(汗)。ナニコレ?凄い凡庸な、どこにでもある引きこもりオッサンのような音である。んなバカな?ヴァンゲルだぜ、この盤は?嘘だろ?…と思いつつも夜遅かったこともあり、その日はそのまま就寝。

 

翌日、昨夜のあれは何だったんだ?と盤を再びよく見れば、上の画像のようにやっぱりヴァンゲル刻印は入っている。でも昨夜Side Aを聴いたら全然普通の音やん…というかUSオリジナルの荒々しさの欠片もないし。とA面のマトをよく見れば、ヴァンゲルダー刻印がない!えっ?ウソだろとB面を見ればB面には入っている。そ、そんな…クレジットを見ると…

 

Recorded at Van Gelder Studios

Engineer: Rudy Van Gelder

 

となっとるやん!

 

速攻でB面を聴いてみると、針を落とした瞬間からもうそこはヴァンゲルダーの音の海!チープなオーディオで聴いても、大して音の良し悪しが分からぬ私でも直ぐに分かる高音質(恍惚…)。そもそもA面と比べると、録音レベルが高い!と、急いで少しアンプのボリュームを下げる。いわゆる”ラウド・カット”状態である。A面とB面で録音レベルが違うってどういう事よ(笑)?

 

これはどう考えてもA面は別人がカッティングしてるのは明らかである(論理的には当然ありえますが)。考えられるのは…売れっ子ヴァンゲル先生は、同時にいくつものカッティングしなけりゃいけない盤を抱えて、片面だけやって後は他の人間( Verve お抱えプレス工場の名もなきエンジニアかなぁ?)に任せたとか?終生彼は弟子を取らず、その録音技術も秘密にしていたらしいし…。

 

ネットで調べたら、Stan Getz / Joao Bilberto にもこの片面ヴァンゲルダーがあるそうだ。

 

 

Discogs で見ても、片面ヴァンゲル刻印なんて記述はなし。真相は分かりません。レコは奥が深いですなぁ。両面ヴァンゲルダーの音で聴きたかったぜよ(トホホ)。