何だか、夢を見ているような、不思議な感覚のまま私は、風呂に入ったそれから布団に入り眠りに就いた。しかし、数時間もすると無情にも目覚まし時計が起床時刻を声高に叫びだした。冬の朝の寒さは、布団から出る気力を失わせるものだ。私は、枕元の鳴り響く目覚まし時計を止めると、その目覚まし時計を掴み寝ぼけ眼で時刻を確認すると、暫く布団の中でゴロゴロとするのが、この時期の日課のようなものだった。そして、うとうととしてくると決まって、寅吉が私の枕元に来て大きな鳴き声をあげてくるのも、寅吉の日課のようなものだった。この日も例に漏れる事なく寅吉は、私の枕元に来ると大きな鳴き声を上げて私を起こしたのだった。
「…はいはい。解ったよ。起きれば良いんだろ。起きれば…」
私は、寅吉にそう言うと、布団から出て暖房の効いていない氷のように冷たい床で、目を覚ますのだった。
「寒っ」
冷たい床を歩いて居間に行くと私は、電気ストーブのスイッチを入れた。スイッチの入った電気ストーブは、赤々と温かそうな色に染まり、冷たい部屋を温め始めた。寅吉は、伸びをしながらその電気ストーブの前に来ると、目を細めてその前に座った。私は、そんな寅吉に構う事なく、洗面所で氷水のように冷たい水道水で顔を洗うと、冷蔵庫を開けて、昨日、半分だけ出した寅吉の缶詰と同じく昨日の夕飯の残りを出して、夕飯の残りをレンジに入れた。
私は、ぼんやりと、昨晩の出来事を思い出していた。昨晩、間違いなく寅吉と話しをしたのだ。そして、寅吉は、昨日取材した猫、千代を知っているのだ…。私は、何だか狐につままれたような心持ちだった。
朝飯を食べて、支度を終えた私の後をついて来るように、寅吉は、私の後をついて玄関まで来ると、まるで仕事にでも出掛けるかの如く、私と共に外へ出るのも寅吉の日課のようなものだった。寅吉が、室内と屋外を自由に出入り出来るように、小さな扉を付けたのだが、寅吉は、朝は決まって私と一緒に出掛けるのだった。
「お前さんも出勤かい?一体、給料いくら貰ってるんだ?まぁ、いってくるよ。寅吉もいってらっしゃい。気を付けてな」
私がそう言うと、寅吉は私の方を振り振り返り、ニャーと一声鳴いた。
路線バスに乗って、約20分くらいで職場に着くのだが、この日は、やたらと道が混んで居たせいか、始業時間の5分前に職場に到着した。
「杉原さん、おっそーいっ!!」
私は、職場に着くなりいきなり加納に捕まってしまった。
「うるさいっ!今日は、道が混んでたからバスが遅れたんじゃっ!」
「とか言って~!ホントは寝坊なんじゃないの~?!」
「うるさいなぁー。お前だっていつもは、ギリギリじゃないか。そんな事より、お前、朝からこんな所で何してるんだ?」
「あっそうそう!昨日の写真出来たから、見てもらおうと思って」
加納は、そう言うと手に持って居た封筒を私に渡した。
「なかなか良く撮れてるでしょ~?!」
私は、封筒から写真を取り出して一枚づつ確認をした。
「なかなか良いんじゃないか?」
「でしょーっ!オレの腕が良いからなぁー」
そう言いながら、加納は、私の見終わった写真を見ながら、周りに集まった人間に見せていた。
「伊集院さんトコの娘さん美人ですねー!」
「本当、女優さんみたい!」
「おいおい、伊集院さんの娘さんばっか撮ってたんじゃないだろうな?!肝心なのは、千代くんなんだからな!」
「そんな事無いっすよー!」
「そうかぁ~?じゃあ、この写真は、どう説明してくれるんだ?!」
私は、一枚の不可思議な写真を加納の目の前に差し出した。
「えっ?!」
つづく
「…はいはい。解ったよ。起きれば良いんだろ。起きれば…」
私は、寅吉にそう言うと、布団から出て暖房の効いていない氷のように冷たい床で、目を覚ますのだった。
「寒っ」
冷たい床を歩いて居間に行くと私は、電気ストーブのスイッチを入れた。スイッチの入った電気ストーブは、赤々と温かそうな色に染まり、冷たい部屋を温め始めた。寅吉は、伸びをしながらその電気ストーブの前に来ると、目を細めてその前に座った。私は、そんな寅吉に構う事なく、洗面所で氷水のように冷たい水道水で顔を洗うと、冷蔵庫を開けて、昨日、半分だけ出した寅吉の缶詰と同じく昨日の夕飯の残りを出して、夕飯の残りをレンジに入れた。
私は、ぼんやりと、昨晩の出来事を思い出していた。昨晩、間違いなく寅吉と話しをしたのだ。そして、寅吉は、昨日取材した猫、千代を知っているのだ…。私は、何だか狐につままれたような心持ちだった。
朝飯を食べて、支度を終えた私の後をついて来るように、寅吉は、私の後をついて玄関まで来ると、まるで仕事にでも出掛けるかの如く、私と共に外へ出るのも寅吉の日課のようなものだった。寅吉が、室内と屋外を自由に出入り出来るように、小さな扉を付けたのだが、寅吉は、朝は決まって私と一緒に出掛けるのだった。
「お前さんも出勤かい?一体、給料いくら貰ってるんだ?まぁ、いってくるよ。寅吉もいってらっしゃい。気を付けてな」
私がそう言うと、寅吉は私の方を振り振り返り、ニャーと一声鳴いた。
路線バスに乗って、約20分くらいで職場に着くのだが、この日は、やたらと道が混んで居たせいか、始業時間の5分前に職場に到着した。
「杉原さん、おっそーいっ!!」
私は、職場に着くなりいきなり加納に捕まってしまった。
「うるさいっ!今日は、道が混んでたからバスが遅れたんじゃっ!」
「とか言って~!ホントは寝坊なんじゃないの~?!」
「うるさいなぁー。お前だっていつもは、ギリギリじゃないか。そんな事より、お前、朝からこんな所で何してるんだ?」
「あっそうそう!昨日の写真出来たから、見てもらおうと思って」
加納は、そう言うと手に持って居た封筒を私に渡した。
「なかなか良く撮れてるでしょ~?!」
私は、封筒から写真を取り出して一枚づつ確認をした。
「なかなか良いんじゃないか?」
「でしょーっ!オレの腕が良いからなぁー」
そう言いながら、加納は、私の見終わった写真を見ながら、周りに集まった人間に見せていた。
「伊集院さんトコの娘さん美人ですねー!」
「本当、女優さんみたい!」
「おいおい、伊集院さんの娘さんばっか撮ってたんじゃないだろうな?!肝心なのは、千代くんなんだからな!」
「そんな事無いっすよー!」
「そうかぁ~?じゃあ、この写真は、どう説明してくれるんだ?!」
私は、一枚の不可思議な写真を加納の目の前に差し出した。
「えっ?!」
つづく