私が、加納の目の前に差し出した写真は、先程まで見ていた写真とは、まるで雰囲気が違っていた。先程まで見ていた写真は、ピントが合っているのは勿論の事だったが、この写真は、まるでピントが合って居ないのだ。それもぼやけていると言うレベルでは無く、うっすら人影が見える程度なのだ。
「そうなんすよねー。これ、最後に撮ったヤツみたいなんすけど。これだけ変なんすよね~。オレこんな写真撮った記憶ないんだけどなぁ…」
「どういう事だ?」
「暗室で現像したら最後に出て来たんですよね」
 加納は、あの日、いまどきめずらしく、フィルムの一眼レフカメラを持って行っていたのだった。
「何かでもよーく見ると、どっかの旅館みたいだなぁって思ったんですよね。見えません?」
「えっ?」
 私は、加納に渡した写真を奪い取るように、加納から受け取りその写真をもう一度、今度は穴が開く程に見た。
 確かに、その写真はぼんやりとだが、立派な日本家屋のように見えた。そして、そこに何か大きな蔵のような物も見えるように感じた。
「確かに、日本家屋みたいに見えるな」
 そう言うと、となりに居た田上部長が私の見ていた写真を覗き込みながらぼそりとこう言った。
「念写のようだな…」
「念写?」
 私と加納が声を揃えて、田上部長の方を見た。
「そう、昔、超能力者の取材をした事があってね。その超能力者、インチキだって中傷された方だったんだけど。僕が取材に行った時に、自分はインチキなんてしていないっておっしゃって、その証拠にって言って、僕の持って行った一眼レフをご自分の額の辺りに、こう持って来て…」
 田上部長は、一眼レフを持った手を自分の額の前に持って行くジェスチャーをした。
「こうしてしばらくすると、フィルムを巻く音がしたんだよ。誰もシャッターを押してないのに。何枚かそんな感じでシャッターが切られてね。そして、その方が今、念写をしたって言うんだよ。早く現像して下さいって言うから、近くの写真屋に言って今すぐ現像してくれって言って現像してもらったら、こんな感じの写真が何枚も出て来たんだけど、カラーフィルムなのにモノクロで一枚だけはっきりと猫が写ってたんだよね」
 そう言うと、田上部長は自分のデスクの引き出しから一枚の写真を取って私と加納に見せてくれた。
「その方は、中傷が原因で自殺されてしまったんだよね」
 その写真には、はっきりと三毛猫とトラ猫の姿が写っていた。






つづく