真正面から顔を見る
すると顔を逸らす
顔を逸らせないようにと
お前の両頬をガッチリ掴む
すると今度は目線を逸らす
そんな他愛ない戯れ合い
それが出来なくなった日
あれから１年が経った
俺がお前のお友達をコッソリと撫でる
お前はそれを目敏く見つける
そしてワンコラワンコラと
激しく焼き餅を焼く
お前を撫でると逃げるくせに
そんな面白可笑しい出来事
それが増えなくなった日
あれから１年も経った
もっとお前とおさんぽしたかった
もっとお前とボール遊びをしたかった
もっとお前とウマウマをシェアしたかった
もっとお前とドライブをしたかった
どんなに嫌がられようとも
もっとお前と戯れ合いたかった
どんなに煙たがられようと
もっとお前を撫でていたかった
それがよく分かった１年だった
お前が旅立つ２週間程前
松本平が右から左まで見渡せる山の上で
お前はその景色をただずっと眺めていた
もっとあの景色を一緒に見ておきたかった
普段のおさんぽの時
唐突に止まって空を眺めることかあった
その時のお前の視線の先にある景色
もっとその景色を一緒に見ておきたかった
お前との日々
悩んだことも困ったことも沢山あった
でも今思い返してみれば
全部が全部楽しかったし面白かった
お前と過ごした14年間
それは本当に大切で大事な宝物だと
心の底から心の天辺までそう思える
でも、それでも全部が足りないとも思える
もっともっと
もっともっと
お前と一緒にいたい
この世での"もう一度"は叶わない
それならそっちで"もう一度"をやってやる
今度は我慢はしない
今度は気を使わない
忖度などするもんか
思い切り戯れついてやる
思う存分撫でくりまわしてやる
頬同士をくっつけて
お前と一緒の景色を見てやる
それまでそっちで元気でな！
ティーダ！
