柳家小三治が亡くなってから落語で人間国宝が空席だったが、五街道雲助が選ばれた。
経緯は全く知らないけれど、相応しい人選だと喜んでいる。
同じ年恰好で好きな噺家は他にもいて、例えば柳家権太楼や柳家さん喬だっておかしくない。
75歳くらいだと思う。
柳家が続くのを避けたのかな。
雲助は古今亭の流れだから(雲助の師匠は10代目金原亭馬生でその父は古今亭志ん生、弟が志ん朝なのは有名)では三遊亭や春風亭、林家を亭号とする噺家にはいないのか。
うーん。寄席でトリを取ってるときに行きたくなる噺家で75歳見当だと思いつかないな。
立川志の輔や春風亭小朝は次の世代だろうから。
というわけで雲助が高座で何を言うか興味があったので、日本橋教育会館で行われた独演会に足を運んだ。
200人くらいのキャパで、椅子は出し入れ可能な仮設。
ロビーには花一つなくいたってシンプルな落語会だった。
もっとお祝い感溢れる華やかな会だと思ったので拍子抜け。
しかしこれが雲助らしいと安堵もした。
チケット持ってなかったので(しかも当日券出ないと言われたのにも関わらず)受付の近くで何とかならないかと40分くらい待ってたら、普段着の雲助師匠が目の前をツーッと通ってロビーに入っていった。
楽屋入口が別にないような建物だったのだろう。
受付の人が哀れに思ってくれたのか、ぎりぎりになって1枚売ってくれた。
減っていくプログラムの残り具合で大丈夫と踏んだのだろう。
こういう入り方は若いころはよくやったものだ。
主にコンサートの時だけど、まさかこの歳でやるとは思わなかったな。
満員のコアな雲助ファン(本当の落語好きかもしれない)が今か今かと開演を待っていると、前座が枕でスマホの注意をして「寿限無」をきっちりやった。会場のアナウンスもなし。
やる人がいないのか意図的なのかはわからない。
雲助の1席目は「汲みたて」男の嫉妬をバカバカしく描いた噺。
開口一番「これが生の国宝です」で爆笑。
発表後に知らないいろんな人からおめでとうといわれ、山手線ではニュース映像が何度も流れて恥ずかしかったそうだ。とはいえこれから何も変わらないと強調していたので、きっとこれまでのように地道に古典を研究し、いろんな噺を聴かせてくれることだろう。
2席目は「唐茄子屋政談」これは嬉しかった。前半の滑稽さと後半のシリアスな展開がスムーズで、聴き終わると皆が幸せになれる。以前も書いたが、かつて志ん朝の「唐茄子屋政談」を300人劇場で聴いて感動したのだ。その時の録音はSONYでCD発売されている。

エンジェルスが6連敗したときに池袋演芸場昼席で権太楼の「へっつい幽霊」を聴いて腹が捩れるほど笑い、7連敗したので人形町で雲助を聴いて感動。気落ちしたときは落語に限る。
大谷が活躍してチームが勝てば殺人的な暑さの中出かけなくて済むのだが。