世界一早い「幸せな不条理」の楽曲レビューです。
2023年7月30日に日付が変わったタイミングでChageさんの新曲「幸せな不条理」のミュージックビデオが公開されました。同時に各種音楽配信サービスでも配信されています。
この文章を書き始めたのが2023年7月30日の10時20分です。楽曲が世に放たれてからまだ半日も経っていません。おそらく世界で一番早い楽曲レビューです。
Chageさんの公式サイトの楽曲紹介文を引用しますと…
Chageの音楽の原点回帰であるUK ROCKなナンバー。
イントロのギターリフは誰もがUK ROCKを感じさせるサウンドに仕上がっており、一度耳にすると頭の中でループが始まるほど印象的なフレーズになっている。
「幸せな不条理」というタイトルも含め、Chageの独特な世界観の歌詞も必聴。
…このように紹介されております。
とにかく何度も繰り返されるギターリフが印象的なロックナンバー。思わず身体が動き出してしまうような絶妙なリズム。bpmは120程度。AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」などと同じ速さです。えっ、そんなにゆっくりなの? って思われる方もいらっしゃるでしょう。実際のテンポ以上に思わせるのはアレンジの妙でしょうね。
イントロが印象的です。
ギターリフから始まるのでありません。シンセサイザーでのB-D-G(ミ-ソ-ド)の単音からギターカッティングでGmを奏でます。そしてギターリフへ。
何度も繰り返される印象的なギターリフを奏でるのは黒田晃年さんというギタリストです。調べてみますと、なんと布袋寅泰さんの昨年のコンサートツアーのサポートギタリストをされています。
先ほど黒田さんがTwitter(Xと書くべき?)で「幸せな不条理」について呟いておられました。
非常に興味深いことを書いておられますので引用しますね。
十川さんが作ったこのカッコ良いリフが
ギターで弾くとハネ方激難🎸
デモはシンセでしたので一緒に弾いてると弾けた気になるやつです^ ^
リフ&ソロも含めて黒田感を思いっきり注入しましたので是非色々な方に届いて欲しいです。
あのギターリフはなんとアレンジを担当した十川ともじさんがシンセサイザーで作ったものだと! 鍵盤で作ったの? いやーびっくりしました。
「激難」とあるようにただ早いだけでなくタメや跳ねがあるフレーズなのであのノリを出すのは確かに難しい。確かに口で再現することも難しいですね(やってみました…)。
間奏のワウを効かせたギターソロも素晴らしいです。
イヤホンで聴くとベースの表現の素晴らしさにも気づかされます。曲の前半の音数が少ない部分のベースの低音が大きくうねっていますが、サビというかChorusと呼びたい「堕ちていくだけのふたり」の部分からはダンスミュージックばりにビートを刻みます。そして間奏で再びうねるうねる。2番のVerse(Aメロ)は1番とは異なるフレーズでルートから外れた音を奏でて不安をあおりますが再びChorus(サビ)で安定。踊れ踊れ!
このベースを担当するのは鈴木渉さん。この方も様々な方のサポートをされていますね。
コーラスはすっかりChageファミリーの一人とも言えるtheSoulの河野健太郎さん。Twitterの7/29の呟きが興味深いです。
https://twitter.com/teamthesoul/status/1684958545769611264
僕(河野)もプリプロ&コーラスで参加させて頂きました
とあります。プリプロとは仮録音のことでしょう。アレンジ&プロデュースの十川ともじさんに渡すデモ音源をChageさんとともに録音したことが伺えます。
Chageさんが自分でコーラスをしたかとも思えるほどの部分もあります。メインヴォーカルへの寄り添い方が… すばらしい。Chageさんが信頼を寄せている理由がよくわかる見事なはまり方です。
あと、そのプリプロ音源… 聞きたいな…
コード進行を分析します。
基本のKeyはGmのマイナーロックです。
ギターリフの部分をコード化するならGm-C7。
Verse(Aメロ)はGm7で押し通す感じですが、「夢を捨てましょう」の部分と「これ以上はもう愛せないから」の部分はおそらくAdim。ディミニッシュの不協和音が不安を紡ぎ出す歌詞とも相まって絶妙な部分転調になってます。この部分大好き!
Chorus(サビ)の「堕ちていくだけのふたり」からE♭M7(Eフラットメジャー7th)に転調します。
1回目はE♭M7-B♭M7-Cm7-D7-Gm7。メロディーをくり返すところでFmに一瞬飛んでB♭7を介して再びE♭M7に還る。…なるほど、うまい。そうやってE♭のKeyに還るのか…。
わかんない、という人が多いでしょうが、ぜひイヤホンでサビの繰り返しの部分のベースの音の動きに集中して聴いてみてください。ここのこと言ってるんかな? ってわかると思います。
2回目はE♭M7-Dm7-G7-Cm7-D7。赤の部分が1回目と違います。ここのメロディー展開的に1番終わり! って雰囲気を作り出します。…なるほど、うまい。そうやって…
ギターソロの間奏はFmに転調してる? 基本KeyがGmの曲で1音下のFmに行くってどういうこと? しかも経過音なし。しかもよくわからないままちゃんとギターリフに戻ってる。
これってジョン・レノンがビートルズの「You're Going To Lose That Girl(恋のアドバイス)」でやってたことと同じような感じを狙ったのでは?
番の頭に戻るときの音楽理論を無視したコード進行と似たような強引さを感じます。
最後はChorus(サビ)の繰り返し。終止感がないのでいつまでも続いていく感じ。
でも、繰り返さずにあっさり終わってギターリフで終わり。あーもっと聞きたいとループ再生。
たった4分15秒の魔法のような曲です。
魔法のようなアレンジ・プロデュースを担当したのは十川ともじさん。たくさんのチャゲアスの名曲をアレンジした十川さんとソロ25周年に組むことになったことをかなり早い段階から告知されていました。
ギターの黒田さんの言葉にもあるようにこの楽曲の生命線とも言えるギターリフを生み出したことと、楽曲の中での活かし方は十川さんあればこそなんでしょう。そりゃあの複雑怪奇なコード進行の「SAY YES」をアレンジした方ですからね。
他の楽曲もどうアレンジされているのか本当に楽しみです。
他にもMixを担当した小寺秀樹さん、ミュージックビデオ監督の坂本あゆみさんと世界的なクリエイターがChageさんのもとに集結しています。
忘れていました。作詞・作曲・歌唱はChageさん。
やっぱりすごい人です。
Chageさんのここ10年ほどの楽曲のクオリティをかつてのチャゲアスファンにももっと知ってほしい。インターネット上で暴走している元相棒に振り回されている人、というようなステレオタイプな認識ではなく、止むことなく進化・深化を遂げているソロシンガーとしての認識です。
さらっと名曲ばかりなんですけどね… ここ数年の楽曲。
聴かないともったいないですよ。
サブスクでも聴けますからね!
まずは「不条理な幸せ」のMVを堪能しましょう。
歌詞については詳しく分析できておりませんが一癖ありそうです。
30回くらいは聴いたとは言え、これを書いているのはまだ発売日当日なんです。
じっくり鑑賞して歌詞の世界にも浸りたいです。