カナダ・ケベックで見かけた砕氷船?(本文には関係ありません)
少し前ですが、とある業界紙等でアメリカの漁業会社が「ジョーンズ法」という法律に違反したため、当局より罰金が科せられた、という報道がありました。
ジョーンズ法というのは、米国内の海上輸送に関する法律で、原則米国内および米国領土(プエルトリコやグアム等)では米国籍の船員による米国籍船しか認めない、という法律です。このような規制は「カボタージュ」と呼ばれ、日本などほかの国も似たような規制がありますが、アメリカの場合、アラスカ・ハワイ、本土でも東海岸と西海岸が離れているため、アメリカで海上輸送を行うときは念頭に置かないといけない法律です。
たとえば、これは米国の船会社PashaのCon-Ro船。ハワイ航路なので当然米国籍。
今回、アメリカの漁業会社はアラスカで採れた魚(マクドナルドのフィレオフィッシュ用のタラなど)をアメリカに輸送する際、当然使用されるべき米国籍船ではなく、外国籍船で輸送していたことから9.5mドル(日本円換算で140億円ぐらい)の罰金が科せられたというものです。
本文とは関係ありませんがマクドナルド塗装のトロリーバス(リトアニア・ヴィリニュス)
それと、今回の題名と何の関係があるんだ?という話なのですが、ここから話が複雑になります。
実はジョーンズ法にはいくつか例外規定があり、その中の一つに、「カナダの鉄道を利用して米国に到着した」貨物はジョーンズ法の適用外、というものです。つまり、アラスカからカナダに向けて外国籍船で輸送した後、トラックで米国に直接入国するとジョーンズ法違反となりますが、カナダに荷揚げされた後、鉄道で輸送されたのち、米国に入国するとそれはジョーンズ法的には問題ない、という規定です。
これをうまく活用したのがその漁業会社です。アラスカからはるばるパナマ運河を経て、カナダ東岸の港に荷揚げされた魚は、2012年までは New Brunswick Southern Railwayという鉄道に乗せられ、30マイル(50km弱)ほど移動した後トレーラーに乗せ換えられ、米国に輸送されていました。
パナマ運河の図(本文にあまり関係ありません)
一応カナダの港の図
ところがこの漁業会社はさらなる費用削減に乗り出します。そこで2012年に登場したのがBayside Canadian Railwayなる鉄道。れっきとしたカナダ当局に登録された鉄道です。トレーラーをそのまま鉄道で輸送することが出来るのですが、一般的に想像する鉄道とは程遠いでものです。
この写真のようにトレーラーを連ねて米国国境ちかくまで輸送されると普通は想像しますが、そうではありません。荷揚げされた桟橋の脇にレールが敷かれており、トレーラーが載せられるフラットカーが準備されていますが、100ftのレールを行ったり来たりして、それで終わりというかなり奇天烈なものです。
この様子はYoutobe等でも紹介されています
結局のところ、米国税関当局にジョーンズ法逃れと認定され、罰金として上記の金額が科せられてしまいました。
どこへも行かない、わずか100ftの鉄道は2022年ごろいつの間にかひっそりと撤去されたようですが、このような摩訶不思議な鉄道はおそらく二度と現れないと思います。