いーにーは、物静かで我が儘をあまり言わない子だったけれど、一度こうと決めると、なかなか頑固なところがあった。
「ボク…これ嫌い」
セロリが嫌いだった。
繊維質が豊富で身体にもいいけれど、たしかに独特の青臭さがあって、嫌いな人も多い。
焼き物、炒め物、揚げ物、色々調理法を研究し、末の妹からも薦めさせ、散々四苦八苦したものだ。
食べてくれた時には、勢い余って記念パーティーを開いた。
街で仲良くしてくれていた子たちも呼んで、盛大にやった。
いーにーは恥ずかしがったが、そこはスルーだ。
今から思えばやり過ぎだったかとも思うけれど、それまでの苦労を考えれば、まぁ不思議ではないかなと。
それに、良い事があった時には、素直に喜ぶべき、というのが私の持論だった。
この世は、苦労と不幸ばかりで、喜びや楽しみは、その絶対量が前者と釣り合っていない様な気がするのだ。
良い事、嬉しい気持ちを伝播させ、嫌な、沈んだ気持ちを中和、上書きするのは、人生に不可欠なテクニックだと思う。
ムシャクシャした時にやけ食いしたり、嫌な気持ちをお酒で忘れるのは常套手段だ。
だけど、子どもの場合はそうはいかない。
お小遣は決して多くないし、おやつも定量。お酒は言語道断だ。私が絶対許さない。
だからこそのパーティー。
あの子のお祝いという名目だけど、散々苦労した私が、自分を労いたい気持ちもあったと思う。
繰り返しになるけれど、私は本来無精な人間で、怠ける事と手を抜く事が大好きで、堪え性がない。
閑話休題。
私たちは冒険者になったあの子たちのお買い物で、街に繰り出していた。
私のココロが弱かったせいで、この子たちに血みどろの道を踏ませてしまった事への罪悪感もあって、私は二人に対して、ひとつの決めごとをした。
「どんなものでもいいからね。これだと思う、自分が気に入った武器をひとつだけ選びなさい」
イーニッドは、もともとの腕力が強かったからか、私が魔法使いだったからか、戦士としての道に踏み出した。
あちこちの武器店、露店を巡る。
立ち止まり、眺め、手に取らせてもらい、また次の店に向かう。
鞘から抜いて、ぶんぶん振り回すと、(他者に怪我を負わせなければ、逮捕まではされないが)街を巡回する衛兵からお小言を食らうので、それは控えさせる。
武器とは、自らの命と仲間の安全を守る上で、最も重要視すべき装備だ。
慎重に慎重な吟味を重ねて、やり過ぎという事はない。
逆に私が物を売る際、十分な吟味なしに即決で買っていく人を見ると、大丈夫かと正直な気持ち不安になるくらいだ。
もちろん私が扱う品に不足があるとは、露ほどにも思ってはいないのだけれど。
一巡りしたかな?と思ったところで、いーにーが私の手を引き、先刻いちど見た露店の前へと連れていく。
ちょっと、ちょっと待ってよ。ねぇ、この店なの? この店に置いてあったのは、確か、まさか。
他の店より少し長めに立ち止まっていたその店、その武器の前へと。
あのパーティーの後、あの子はますます我が儘を言わなくなった。
いい子になった、という言い方もできるけれど、子どもが我が儘を言わないというのは、それはそれで寂しいものだ。
その子が、いーにーが私の顔を見上げて言った。
「ねーさん、ボクこれがいい」
いーにーには、まだ(自分の名前以外の)読み書きを教えていない。数字くらいは読めるが、それだけだ。
あの子が指さした武器、黄金色に輝く両刃の大斧には、『価格・応相談』と書いた値札が貼ってあった。
陽気にあてられてか、私はくらりとめまいに襲われた。
――――――――――――――――――
イーニッドさん、レベル1にして、断罪の斧+7げっとです。
この当時での最強武器で、お値段も当然それなり。
店主に取り置きのお願いをし、
新しい杖ほしいなーと貯めていた貯金を取り崩し、
不足分は、レンさんが今までの冒険で集め、露店でまったり売っていた商品を叩き売りして現金に換え、
なんとかかんとか費用を捻出します。
防具は無強化の安物だったりするのですが、それはまぁやむなき事かなと。
ソウルランク3の時に買ってきたこの斧(SR3から装備可)、ソウルランク6の現状においても、イーニッドの主武器として活躍中です。
現状ではランク6用の装備までしか配信されていませんが、ランク10くらいの武器が出るか、サムライにクラスチェンジするまで頑張ってほしいな、と期待しています
