こんにちは。今日はちょっと考えさせられた話を共有したいと思います。
少し意外に聞こえるかもしれませんが——これから5年のうちに「プロダクトマネージャーの大量失業」というニュースが出ることは、おそらくないと思っています。でも「プロダクトマネージャーという役職そのもの」が、静かに姿を消していく現象は、もう始まっているんじゃないかなと。
似ているようで、全然違う話なんですよね。
求人を見ていて気づいたこと
最近、いくつかの中小企業の求人情報を見比べていて、面白い変化に気づきました。
2年前の求人はこんな感じでした。
プロダクトマネージャー募集。要件定義、PRD作成、プロトタイプ設計、部門間調整を担当...
今年の求人の多くは、こう変わっています。
「事業オーナー/プロジェクトオーナー」募集。プロダクト思考を持ち、要件からリリースまで一人称で完遂できる方。AIツールを活用した開発経験必須...
注目したいのは、仕事内容はほぼ同じなのに、肩書きが変わっているという点なんです。「プロダクトマネージャー」という言葉が、採用市場から少しずつ薄れていっている気がします。
なぜこうなったんだろう
AIが「プロダクトマネージャー」という仕事を、2つに分解したのかなと思っています。
ひとつは「定型的なアウトプット」——PRD作成、フロー図、要件ドキュメント、競合分析。この部分は、今のAIが速くて正確にやってくれます。専任の担当者は、もうあまり必要なくなってきています。
もうひとつは「判断と意思決定」——この機能をやるべきか、ユーザーの本当の課題は何か、リソースを投じる価値があるか。ここは依然として人が必要なんですが、もう「独立した職種」がまるごと担うものじゃなくて、現場の全員が持つべき基礎能力になってきているように感じます。
つまり、以前は「エンジニアがコードを書き、プロダクトマネージャーが何を書くか指示する」という形でした。今は、エンジニア自身がAIでPRDの骨格を作って、自分で優先順位を判断する。プロダクトマネージャーという「中間の翻訳機」が、だんだん圧縮されてきているんですね。
「プロダクトマネージャーが解雇された」というより、「プロダクトマネージャーの仕事が、みんなに分散した」という方が近いのかもしれません。
ある実例
知人が経営している、SaaSツールを作る10数人規模のチームの話です。創業者自身がエンジニア出身の方です。
このチーム、創業以来「プロダクトマネージャー」という肩書きの人を一度も採用していないんです。でもチーム内のエンジニアやカスタマーサクセス(CS)担当者、それぞれが従来PMがやっていたこと——ユーザーフィードバックの記録、要件の優先順位判断、UI設計——を自然に担っています。
CSチームがユーザーフィードバックを扱う上で、以前一番困っていたのは、ユーザーがチャットで言ったこと、メールで送ってきたこと、サポートチケットに書いたことが、5〜6個の別々のチャネルに散らばっていて、プロダクト会議で優先順位を整理しようとしても、どこから手をつければいいか分からない、という状況だったそうです。
そこで使い始めたのが FeedLog というツールだそうです。AIが内蔵されたオープンソースのフィードバック管理ツールで、散らばったチャネルのフィードバックを一箇所に集約して、AIが自動でタグ付けと要約をしてくれるみたいです。以前は専任の担当者が一日かけて整理していた「ユーザーの声」が、今はシステムが自動で分類してくれるので、誰でも空き時間に見て、そのままエンジニアに「今月はどの要件をやるべきか」を相談できるようになったとのこと。
このチームのプロダクトの意思決定は、今は「ひとりのプロダクトマネージャー」がやっているのではなく、エンジニア・CS・創業者の三者が、AIによって整理された同じフィードバックデータを見ながら、一緒に判断しているそうです。
これが「プロダクトマネージャーという機能」は残っているけれど、「プロダクトマネージャーという職種」は消えている、というリアルな姿なのかなと思いました。
「プロダクトマネージャー」という言葉に、今後も意味はあるのか
私なりの考えはこうです。独立した採用の肩書きとしては、使われる頻度が下がっていく。でも「能力」としての重要性は、むしろ上がっていく。
似たようなことが10年前にもありました。「インターネットプロダクトマネージャー」という言葉、覚えていますか?かつては独立した、ちょっと特別なタイトルでした。でも今や、ほとんどのプロダクトマネージャーがインターネット関連の仕事をしているので、「インターネット」という前置きは区別する意味を失って、自然に消えていきました。
今、「AIプロダクトマネージャー」も同じ道をたどっているのかもしれません。すべてのプロダクトマネージャーがAIツールを当たり前に使うようになったとき、「AI」という前置きも消えるんじゃないかなと。AIが重要じゃなくなったからじゃなくて、逆に、当たり前すぎて、わざわざ表記する意味がなくなるから。
そして「プロダクトマネージャー」という言葉そのものの行き先は、もっと大きく変わるかもしれません。標準語になるんじゃなくて、他の職種の能力要件の中に、分解されて溶け込んでいくんじゃないかなと思っています。
最後に、自分への3つの質問
もし今、あなたの肩書きがプロダクトマネージャーなら、こんな質問を自分に投げかけてみてもいいかもしれません。
1. あなたのPRD、プロトタイプ、週報を全部AIに任せたら、あなたの仕事はどれくらい減りますか?——「ほとんど」と答えるなら、今の仕事はまだ「定型的なアウトプット」の層にとどまっているのかもしれません。
2. この1ヶ月で、AIには答えが出せず、自分の判断だけが頼りだった決断は何でしたか?——具体的な例が思いつかないなら、まだ「判断と意思決定」の層に入っていない、ということかもしれません。
3. もし肩書きが履歴書から消えて、やってきたことだけが残ったら——それでも、あなたの価値は伝わりますか?
職種の名前は変わるし、業界も変わります。でも、正しい判断を続けられる人は、いつの時代も必要とされる気がします——その仕事が「プロダクトマネージャー」と呼ばれているかどうかは関係なく。
最後まで読んでくれてありがとうございます😊
みなさんの会社のプロダクトチームでも、ここ数年でこういう「見えない変化」が起きていないか、コメントで教えてもらえたら嬉しいです。