━今日は空が暗くて雲が立ち込めているよ。
君の居る場所が見えない。
まだ雨は落ちていないけれど、今にもこぼれてしまいそうな低さなんだ。
あ、今、光ったよ。

大丈夫。大丈夫。
彼女のベッドは汚れていない。
何者も気付いていない。
まだ、目覚めてはいけない。
地上が彼女に相応しい大地を取り戻すまでそのままでいなくてはいけない。
だが彼女独りにするわけにはいかない。
僕が行けたらいいのだけど…
方法がないものか、思いあぐねていたら不思議な噂を聞いてとある人を知った。
その人は気高く、何にも染まらない人だった。
忠実で迷わない。
こんな空でも道を迷わず進んでいける力を授かっている。
出会った事も、話した事もないけれど確信を持った。
彼女に相応しい。

太陽が真横に見える場所に彼女はいる。
残る手紙は一通。
毎日通うあの場所へ届けなくてはいけない。
もう何度通ったか数えるのはやめてしまったので分からないが、おかげでいちごぶたも最後に立ち寄るのはここ、と覚えてしまった。
羽虫を追い越し、鳥を越え、雲よりも上。
ようやくたどり着いたそこは雨が降らなければ風もない。
あるのは光と、白い部屋と、ベッドと、彼女。

ベッドの足元は手紙で足の踏み場もないほどになっていた。
はじめは枕元に手紙を置いていたのだがいつしか溢れてこぼれ、どれがはじめの手紙なのかも分からなくなってしまった。
いつもの通り手紙を彼女の枕もとに置くと、がさがさと音を立てて古い手紙がまた床に山を作る。
仕事はこれだけ。
少しだけ彼女の顔を見て"じゃあね"と口には出さずに声をかけて立ち去った。