━おはよう。よく眠れたかな?
…君に眠れたかどうか聞くのは野暮な質問だったかな。
今日は星を取りに行こうと思っているんだ。
空の星だよ。明日の君への手紙には同封するから、楽しみにしていて。


彼女はそこにいた。
いつもと変わらず、いつから変わっていないのかも分からないくらい。
風も、大気さえも彼女を避けて通っているかのようだった。
長いまつげは閉じられたままで、腰まで伸びた髪は彼女を守っているかのように四方に広がっている。
微かに、だが確かに胸は上下していた。


彼はそこにいた。
いつもと変わらず、玄関を開けたその先に何も映っていないかのような瞳をこちらに向けて低い位置からこちらを見上げている。
いちごのヘタが頭に付いていて、背中に小さなつばさの生えた豚だ。
いちごぶた、と呼んでいる。
身も蓋もないネーミングだが見たそのままなのだから仕方がない。
こいつは意外と持久力があってよく飛ぶ、大事な相棒だ。
見てくれが多少どうであろうと関係ない。
「頼むよいちごぶたー。今日は手紙が多いんだよ、トマトあげるから頑張ってよ」
豚なのにトマトが好物らしい。あまりよく分からずに色々与えていたらどうもトマトの時だけ反応が違ったのだ。
それ以来、トマトはご褒美としてやっているのだが喜んでいる、ような気がしている。
いつも無表情でどこを見ているか分からない目なので感情が読み取れないのに、トマトをやる時だけ短く鳴いた。
今も"トマト"という言葉に反応したのか少し身体を揺らしたようだった。
「よしよし、その調子。頑張ったらあげるからね…じゃあ、行こうか」