━ねえ君は今何を見ているの?
君が好きなゼラニウムが僕の目の前で咲いてるんだ。
1つしかないけど…
…ねえ、君の世界は痛い?


「あー」
箒を片手に天を仰いで特に意味のない声を出す。言葉にならないだけで意味はあるんだ、と自分では思っている。
「植物が目に痛い季節だねえ」
明らかに少し前の時期とは違う日差しが現れつつあるようだ。
でも痛いって表現はどうだろう、生命は痛い?


取るに足らない、本当に意味のない思考を一通り終えたところで自分の脇にあるポストが風もないのにカタンと音を立てた。
分かっているのに反射的にそちらに目を向けて、ニヤリとしてしまう。
"毎日律儀だね"
今度は声に出さずに口の中で言った。独り暮らしが長いと、独り言が多くなっていけない。
意識を戻して再び掃除に取り掛かった。
時折吹く強い風でどこから来たかも分からない植物の遺骸が積もるのだ。
「よいしょ」
思ったそばから口に出してしまった。
思わず苦笑してしまう。
簡単に朝食を済ませたら出発しよう。
…彼女が、待っているから。