それから暫くは物忌みのためと帰参を遅らせてはみたものの、長々と宿下りをしているわけにもいかずようやく宮中へもどると早速ユノ帝からのお召しがあった。
帝の夜の御座所へいつものように通う道々、飾り立てた衣装は鉛のように重く思われた。列の先頭を歩く女房の持つ灯が風で揺らめくたびに頼りなげに心は乱れ、渡り殿を包む闇は黒く深くまるで女御を呑みこもうとしている様で恐ろしさのあまり身震いがした。
主上の前に進み出て長々の宿下りを詫びる口上を述べる。恐る恐る顔を上げると帝はいつもと変わらない穏やかな笑顔で「ようやく戻ってくれましたね。女御が居ない間、寂しく一人、物思いに明け暮れていましたよ。」と優しい声で慰めて下さった。
ああ、ユノ帝。若くしておそばにお上がりした私を強く大きな愛で導いてくださり、私は主上のそばでいままで安心生きてこられた。父のように偉大で兄のように広いお心で、私を慈しんで下さいました。お許し下さい。
顔を背けハラハラと泣く私に駆け寄り私を胸に抱いて「実家にかえり兄上にお会いしたからですか。寂しくおなりになったのですね。ああ、子供の様に頼りなげに泣かれて」と、背中をゆっくりさすりながら大きな胸に私を包んでくださいました。