桜色に染まる華やかな御所では、久しくチャンミン様のお姿が見られなかった。チャンミン様がいらっしゃらない今年の春は美しさも陰り、春の王子は何処に?と女房達は嘆き、帝もたいそうご心配されていた。
まだ貴方の温もりが残る手をじっと見つめる。あの日から心を貴方の所に置いてきたのだろうか…今は御所への出仕もままならず、二条の屋敷にて床に臥せ、ただ日々虚しを重ねていた私の元に夜遅くジュンスの命婦より文が届いた。慌てて開くと桜の木に結んだ文からは愛しい貴方の香がして、思わず抱きしめハラハラと涙を流した。
「ご病気が長引かれていると伺いましたが、いかがお過ごしでしょうか。御所でも長くお姿を拝見できないと、帝がご心配されております。
もしやあなた様のお心を苦しめているのがあの春の日の夢であれば、どうかお忘れください。私達はただ幼い日の夢の続きを見ただけ。今はただ儚く思われます。
私の背負う罪は許されるべきものではございませんが、今はただ一心に帝にお仕えする所存にて、もう二度とお会することはかないません。どうか私のにことはお捨ておきください。」
波を流されてていたのだろうか、にじんだ文字から女御様のお悲しみが透けて見えるようだった。
覚悟は出来ていた。そうだ、こうなることは!私の思いに巻き込まれ心乱れていらっしゃるだろう女御さまにただただ申し訳なく思う一方で、あの日の罪さえも私達二人のものだという事が嬉しく思う自分が恐ろしかった。