桜の季節が過ぎ緑の眩しい季節になった頃、御所ではジェジュン女御がご懐妊されたとおめでたい噂でもちきりだった。
帝はこの歳で子供ができ、しかもご寵愛の若く美しい女御のご懐妊とあって尚更のことたいそうお喜びであった。
それはすぐにチャンミン様のお耳にも届いた。
ジェジュン女御にお子が…胸が締め付けらるように痛く苦しい。父ユノ帝とのお子か!…いや、そうとも限らないではないか。もしや、あの夜の…と思うといても立ってもいられず、はやる心にて女御のおられる藤壺へと自然に足は向いていた。折しも宿直の夜から、チャンミン様が辺りを回られても誰も怪しまず宮中は人影もまばらであった。藤壺への渡り殿の間ではジュンスの命婦が取り次ぎに現れた。私を見ると慌てて奥の間へと引き込み、どうされましたか?と聞くので、女御様に直接お伺いしたい事があると言うと、とんでもないと!では、ここで待つと座りこむと、遠くから見回りの女房の声が聞こえてくる。
ジュンスの命婦は御簾を下ろし私を隠すとここから出ぬようにときつく言い、足早にお座敷の方へと返していった。幼き頃より勝手知ったる局ゆえ、女御様のいらっしゃるのはあの辺りと検討をつけて、足早に歩みついたての後ろから覗くと、夜のお座敷の上座にて萌黄色の薄衣を重ねゆっくりとくつろぐジェジュン女御のお姿が見えた。
