【『千一夜物語(四)』「鳥獣佳話」より】「鵞鳥と孔雀の夫婦の話⑴」 | 大阪文学学校本科修了生・元産科ナースが書く【動物愛護と俳句のブログ】

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2024/01/10の新記事です。ご紹介したい動物たちの物語を所蔵書籍より転載します。

絵画/カイ・ニールセン「王とシェヘラザード」





『完訳 千一夜物語(四)』岩波書店



第百四十五夜

133ページ17行より


 するとシャハラザードは妹を見やって、ほほえみかけた。次に妹に言った、「けれども、もしあなたが鳥や獣の言葉を聞いたら、それこそ何と言うかしら?」ドニアザードは叫びました、「お姉様、お願いです、どうぞわたくしたちにその鳥と獣の言葉をいくつか聞かせて下さいまし! それはきっと快いものにちがいございません、わけてもお姉様のお口から繰り返されて言われれば!」けれどもシャハラザードは言った、「心から悦んで! けれども、わたくしどものご主人の王様がお許し下さらないうちは決してなりませぬ、それも王様がまだ御不眠を悩んでいらっしゃればのこと!」するとシャハリヤール王はたいへん思い惑って言った、「だが鳥獣(とりけだもの)がいったい何をしゃべれるというのか? どんな言葉で話すのか?」シャハラザードは言った、「生粋のアラビア語で、散文でも韻文でも話しまする!」するとシャハリヤール王は叫んだ、「まことに、おお、シャハラザードよ、そちがいまだ余の知らぬそれらの事柄を語り終えぬうちは、そちの運命に関して余はまだ何事も決定いたしたくない。というのは、今まで余の聞いたことは人間の言葉のみであった。大部分の人間の解さぬ生き物の考うるところを知るのも、また一興であろう!」


 その時、シャハラザードはもはや夜もつきようとしているのを見たから、王に明日まで待つように乞うた。そしてシャハリヤールは、待ちきれぬ思いであったにもかかわらず、それに同意することを肯(がえ)んじた。王は美しいシャハラザードを腕に抱いて、二人は朝まで相抱いた。




けれども第百四十六夜になると


 シャハラザードは言った。✦






鳥獣佳話


136ページより

鵞鳥と孔雀の夫婦の話🪿🦚🦚


 

 おお、幸多き王様よ、わたくしの聞き及びましたところでは、その昔、時のいにしえと時代時代の過ぎし世に、妻と連れ立って海辺を訪ねることの好きな一羽の孔雀がおりました。そして二羽は、海辺まで拡がっていて、流れる水あふれ、鳥の歌の住む森を、歩きまわるのが常でした。日中、夫婦は静かに食物を漁(あさ)り、夜になると、繁った木の上にとまって、無遠慮に若い雌孔雀の美しさを讃えるような、どこかの隣人の欲望をそそる危険を冒さないようにいたしました。こうして彼らは「恩恵者」を祝福しながら、安らかに楽しく、暮らしつづけておりました。


 ところがある日のこと、雄の孔雀は、空気と眺めを変えるため、海岸から見える島の方面にひとつ遠足に出かけようと、妻を説きふせました。雌の孔雀はこれに仰せ承知しましたと答え、そこで二羽はともども飛び立って、太陽の目のもとに、美々しく地におり立ちました。


 それは見事な果樹におおわれ、無数の流れに養われた島でした。それで孔雀の夫婦はこの爽やかな地のもなかの散策をこの上なく悦び、しばらく立ちどまってあらゆる木の実を食べ、このまことに美味しくまことに軽やかな水を飲んだのでした。


 ところが、ちょうど二羽が自分のところに戻ろうとしておりますと、そこに羽をばたばたと動かし、恐れおののいた一羽の鵞鳥が、こちらにくるのが見えました。鵞鳥は全身の羽毛をふるわせながら、孔雀夫婦に身の寄せ場と保護を求めるのでした。そこで夫婦は親身をつくしてこれを迎えずにはおかず、雌の孔雀はねんごろにこれに話しはじめて言いました、「私どもの間にようこそおいでになりました。どうぞお楽におくつろぎ下さいまし。」そこで鵞鳥も落ち着きはじめました。雌の孔雀は、この鵞鳥にはきっと何か驚くべき話があることをひと時も疑わず、親切に訊(たず)ねました、「いったいどうなすったのです、なぜそんなに恐れているのですか?」すると鵞鳥は答えました、「今我が身に起こったことと、イブン・アーダム[アダムの息子、人間]にふるえ上がらせられたひどい怖ろしさで、わたくしはまだ気分が悪うございますわ! ああ、どうぞアッラーはわたくしどもをお守り下さいますように! アッラーはイブン・アーダムからお護り下さいますように!」孔雀はたいそう心配して、言いました、「安心なさい、鵞鳥さん、安心なさい。」そして雌の孔雀も言いました、「こんな海のまんなかにある島まで、どうしてイブン・アーダムがやって来られましょうか? 岸辺からここまで跳んでは来られまいし、海から、どうやってこんなに広い水を渡ってくることでしょう?」すると鵞鳥は二羽に言いました、「わたくしの路の上にあなた方を置いて下さって、わたくしの怖れを忘れさせ、心の安らぎを返して下さったおかたは祝福されてあれ!」雌の孔雀は言いました、「おお、妹よ、ではイブン・アーダムにふるえ上がらせられたその怖れの動機(いわれ)と、定めしあなたのお身の上に起こったにちがいないお話を、私どもに聞かせて下さいまし。」すると鵞鳥は次のように話しました。

 


(つづく)

毎週水曜日に投稿予定







話の先を早く知りたい方は、こちらにこの物語を歌詞にしたものがあります。結末まで分かります。

https://ameblo.jp/lemon-tei/entry-12826450635.html 



「鳥獣佳話」の目次はこちらにあります。

https://ameblo.jp/lemon-tei/entry-12815072793.html?frm=theme






【出典】

完訳『千一夜物語(四)』 (全13冊)岩波書店発行

2018年12月5日 第12刷発行

訳者/豊島与志雄、渡辺一夫、佐藤正彰、岡部正孝

第145夜 佐藤正彰訳

第146〜151夜 「鳥獣佳話」佐藤正彰訳








Kinder Worldの動画より

📖The Story of The Goose Couple


2018/05/11 ショート

https://youtube.com/shorts/a-Wmd38HJHA?si=hunLb5hPR7M2bjwt 





【Geese Saying Goodbye As The Female is Sent To Slaughter】

This couple of geese lived together in a Chinese village since they met.They loved and cared for each other.Hopefully,their heartbreaking story will help people make kinder food choices.


※Famleという英語が見つからなかったので、動画に登場するFemaleのことかと思い、こちらの単語で訳しました。



《日本語訳》

「メスが屠殺場に送られる中、別れを告げるガチョウ」


この夫婦のガチョウは出会って以来、中国の村で一緒に暮らしていました。彼らはお互いを愛し、思いやりました。希望的には、彼等の悲痛な物語は人々がより優しい食べ物の選択をするのに役立ちます。




原文/動画概要欄より


Kinder Worldチャンネルには、素晴らしい動画が沢山あります。動物への愛情を感じるYOUTUBEチャンネルです。ぜひ、他の動画もご覧下さい😊💗🪿💗🪿💗