誰にも会いたくないと思った。




帰国した夫が暴れた日の夜中、壁に顔をつけるようにして、凹みができていないかを横からチェックしていたときだった。


そういえば、選手くんと別れたタイミングも今と同じ状況だったと思い出す。あのときは、他人を受け入れる余裕がないときに、可愛く楽しませる自分を求められていることに辟易して、翌日のデートに行くくらいなら別れようと思ったのだった。




婚外恋愛は贅沢品だ。身に危険があるときや生活が逼迫しているときにはできないし、そもそも、心が不安定では普通の恋愛さえままならない。




春から予定している子どもを預かることも、こんな日を定期的に迎えなければいけない環境では、無理な気がしてくる。








鏡台とベッドしかない部屋に一人で横になっている。誰にも会いたくはないけれど、このまま眠りたくない。今まで出会った男性たちに片っ端から電話をかけていった。




前に話してた◎◎どうだった?◉◉は?



覚えててくれたの?




男性たちは嬉しそうだった。また食事だけでいいから、ゆっくり話したいと言われた。




私に好感を持つ人たち。最終的には、手を出さずに関係を深めていこうとしてくれる人も多い。美人でもない私が何故かと不思議に思われることもあるが、理由は簡単だ。


私が、相手が主語になる会話を繰り返して、相手が求めているものを言葉にするからだ。人は皆、自分にしか興味がない。連絡先を交換した後は、私自身の魅力なんて殆ど関係ない。当然、私が抱える悩みも。急に電話をかけた理由も。




彼らからのお返しである可愛いや好きという言葉に何故素直に喜べないか。好意を持たれることで承認欲求を満たされたと感謝できないか。自分では分かっている。




婚外を始める前と同じ、私は孤独だ。








選手くんと最初は楽しかったんだけど赤ちゃんぴえん