Kさんがサイトにアクセスしていた。




なんで私だけで良しとしてくれないんだろう。早朝の薄暗いベッドで夏布団に包まったまま泣いた。


でも今日で良かった。子どもたちの学校はまだ始まっていないので、あと30分は1人でゆっくり悲しむことができる。




ティッシュの箱を引き寄せる頃には少し冷静さを取り戻していた。


私に泣く権利はない。Kさんのことで泣いていいのは、Kさんの奥さんだけだ。


私にだって、すぐ隣の部屋には、不倫なんて言語道断とする潔癖な夫がいる。


私の婚外恋愛は人生におけるエンターテイメントのうちの一つで、この悲しい気持ちだって、本当の悲しみじゃない。




私が本当に悲しかったのは、母に拒絶されたときと、祖父が亡くなったときだ。


7人いる孫の中で私が一番可愛いと言ってくれた祖父が亡くなった夏、私は婚外恋愛を始めた。可愛がってくれた祖父に今の自分を一度も見せずに済んで、本当に良かったと思う。




今の時代、自分を紛わせることができるものは次々に手に入るけれど、いつまで経っても本当に欲しいものは手に入らない。


Kさんを始め、私を取り囲んでいる全てのものをリセットしたら、私には何か残るんだろうか。




自分と別れたときに、れもんに何か残せたらと思っている。




Kさんはそう言って私に本を渡すけれど、私にはそういう思いを愛情として上手く受け取れる能力がない。




私だってれもんに愛情をかけた、と母は言う。


れもんに不自由な暮らしをさせないことが愛情だ、と夫は言う。




恋愛の高揚感を愛の深さと勘違いしてしまう私が、男をコレクションのように増やしていったとしても、いつかは誰からも相手にされなくなって、寂しさを持て余すことになるだろう。




それとも、誰よりたくさん遊んだら、この世を楽しめたと思って、満足して死ねるのかな。




どちらにしても長生きはしたいので、朝ごはんは、健康酢を飲んだり、納豆を食べたりした。




※ 朝食後にKさんから会いたいと連絡がありました。時間ができてサイトにアクセスしたけど、良い子がいなかったんだね… 真顔