発熱のため、家族に置き去りにされたホテルの薄暗ーいベッドの上で、書き始めた記事になります
小さい頃から、甘えるのが下手だった。
厳格な両親で、家庭内の空気がピリピリしていたことが原因かもしれない。
大人になって恋愛をしたけれど、やっぱり甘えるのは下手で、ベタベタするような関係は誰とも築くことができなかったように思う。
会う頻度が少なかろうが、連絡がそっけなかろうが、相手に文句を言ったりしたことは記憶にない。
結果、猛烈仕事人のような男の人ばかりと縁があった気がする。
夫は、学生時代から起業してみたり、モデルをしていたこともあって、今でも少々モテる。そんな夫が私を結婚相手に選んだ理由は、
めんどくさくないから。
その言葉が呪縛となって、私は未だに夫に甘えたり、ねぎらいの言葉を求めたり、話し合いを提案することができない。
夫が大嫌いなわけではない。
だけど、明日夫が死んでも、私は何事もなかったように暮らし続けるかもしれない。
今、20年近く一緒に暮らした夫がくれないものを求めて婚外恋愛をしている。
例えばそれがセックスなら、婚外相手が良いセックスしてくれれば解決で、
女として見られることなら、可愛いと言ってもらえれば満たされるだろう。
だけど私が欲しいのは、もっとめんどくさいものだ。
先日の発熱で、Kさんとの予定をキャンセルしてしまった。
会うはずだった日の朝5時。
ふと胸騒ぎがして例のサイトにアクセスすると、Kさんが数ヶ月ぶりにログインしていた。
美人だとか、タイプだとか、私に対する褒め言葉なんて何の意味もなさないことを痛感する。
ご家族のいない、せっかくの自由な夜を1人で過ごしたくなかったのかもしれない。
でも私と会えないからって、私の代わりが簡単に見つかると思っているのなら、そんな人、私はいらない。
…とか思いつつ、Kさんを手放す勇気のない私は、熱が下がったから今日会えるよってKさんにLINEをする。サイトは数分でログアウトされ、私は平静を取り戻す。
Kさんは社会的地位もあって、いつも強くて冷静だ。物腰が柔らかく、社内にファンも多いらしい。家庭には才色兼備な奥さんと可愛い子ども。外には物分かりの良い私もいる。
望むものは手に入れてきたように見えるKさんだけど、彼にだって求めるものはあって、サイトをのぞいて新しい誰かを探したり、現状に納得するための何かを模索し続けているのかもしれない。
Kさんと私は、これからも長く仲良くできるだろう。
それは、お互いがそれぞれの常識の範囲内にいる人間で、生活レベルが同じで、ルックスや性格がある程度をクリアしているから。
そして、私がめんどくさい女ではないから。
堂々巡りに頭を抱えている。