はじめに

この記事はGoogleマップや路線図を見ながら読むことを推奨する。私もGoogleマップを参照しながら記事を書いている。

 

エイトライナー・メトロセブン計画をご存知だろうか。東京に住んでいるけれども知らない、という方も少なからずいるだろう。

エイトライナー・メトロセブン|鉄道計画データベース (tabiris.com)

このリンク先で、エイトライナー・メトロセブンの計画が示されている。葛西臨海公園から赤羽までは環状7号線、赤羽から田園調布までは環状8号線に沿っている。田園調布から羽田空港まで伸ばす計画もあり、そうなると総距離は70kmを超える。

 

この計画には、東京の偏った鉄道網を是正するとともに、幹線道路の渋滞を緩和するという狙いがある。東京の鉄道網は、山手線からいわゆるベッドタウンへと放射状に延びる鉄道ばかりである。ベッドタウンから山手線に向かう路線はたくさんあるが、ベッドタウン同士をつなぐ路線が少ない。では、自家用車・タクシーを使わずにベッドタウンから別のベッドタウンに行きたいときはどうするのか。答えは、鉄道を使って迂回するか、定時制が確保されない不便な路線バスで移動するのである。

 

私の地元、亀有から地下鉄博物館のある葛西まで行く場合を例に挙げよう。亀有から葛西は環状7号線をひたすら南下すると辿り着く。環七シャトルバスというバスに乗ると、40分ほどで辿り着く。ただ、渋滞の激しい環七を走る路線バスであるため、通勤・通学など定時制が求められる場面では使い勝手が悪い。そうなると、鉄道を使いたい。しかし、葛飾区と江戸川区を南北に走る鉄道は、現状では京成金町線のみであり、京成金町線では京成線よりも南側の地域には行けない。京成線よりも南側の地域に鉄道で行くためには、かなり迂回をする必要がある。考えられるルートは以下の3通りだ。

①亀有→大手町→葛西

②亀有→金町→京成高砂→京成西船→西船橋→葛西 *京成西船駅から西船橋駅は徒歩

③亀有→新松戸→西船橋→葛西

どのルートも、かなりの迂回ルートだ。しかも、①に関しては、ベッドタウン同士を行き来したいのにいちいち混雑する通勤路線で一旦都心へ出ないといけない。

これを見れば、エイトライナー・メトロセブン計画の重要性がわかるだろう。

 

しかし、計画の総延長は短くても60kmであり、既に発展しているエリアに建設するため、全区間が地下となるのは必至だ。建設費は決して安いものではない。個人的には、リニア新幹線を建設するお金があるならこっちも建設しろと言いたいが…。

極力、建設される区間は最小限にしつつ、ベッドタウン同士の鉄道での行き来が可能となるべきだ。自転車や自動車による悲惨な事故を撲滅させるには、充実した鉄道網の整備しか方法はない。

 

私は、このエイトライナー・メトロセブン計画は全区間が計画どおりに建設される必要はないと考えている。既に存在する鉄路を上手く活用すれば、エイトライナー・メトロセブン計画の代替となるエリアも存在するからだ。それについて、順に説明していく。ここでは、エイトライナー・メトロセブンを、羽田空港から葛西臨海公園までの1本の路線と考え、いくつかの区間に分けて考えたいと思う。冒頭でも述べたが、Googleマップを参照しながらでないと理解しにくい。

 

 

 ①羽田空港~田園調布

この区間については、既に存在する京急線と、東急池上線・多摩川線(いけたま)を活用することで、エイトライナー・メトロセブン計画の代替となる。いけたまを京急蒲田まで延伸するだけで解決する。いけたまの京急蒲田延伸については、先日記事を出した。興味があればどうぞ。

蒲蒲線の早期実現を! | れもいち写真館 (ameblo.jp)

 

いけたま

 

 

 

 ②田園調布~二子玉川

この区間についても、整備する必要がない。田園調布から東横線か目黒線に乗って1駅or2駅のところで、大井町線に乗り換え可能だからだ。東横線も目黒線も、都心への通勤路線だが、大した距離の乗車にはならないため、この区間については既存路線の活用ということで良いだろう。ありがたいことに、東急大井町線には急行がある。

 

東急大井町線

 

 ③二子玉川~千歳船橋

二子玉川から千歳船橋まで鉄道で行く場合、以下の2つのルートがある。

 

①二子玉川→三軒茶屋→山下→豪徳寺→千歳船橋 *山下駅から豪徳寺駅へ徒歩

②二子玉川→渋谷→新宿→千歳船橋

 

最短ルートは①だが、東急世田谷線は軌道線であり、ノロい。②は混雑する山手線に乗ることになる。

この区間に来て初めて整備すべき区間となった。

 

東急世田谷線

 

 ④千歳船橋~八幡山~高井戸~荻窪

この区間には代替となる環状線が、小田急線と京王線をつなぐ東急世田谷線以外ない。また、京王井の頭線は環状連絡している部分もあるが、吉祥寺と渋谷を結ぶ通勤路線という一面もあり、混雑している。先ほどの二子玉川~千歳船橋と同様にこの区間も整備すべきである。現時点では、整備すべき区間は二子玉川~荻窪である。

 

京王井の頭線

 

 ⑤荻窪~井荻~練馬高野台

この区間も、鉄道で行き来する場合は混雑する山手線への乗車を強いられる。よって、整備すべき区間である。これにより、二子玉川~練馬高野台の整備が必要となった。

 

丸ノ内線

 

西武線

 

 ⑥練馬高野台~練馬春日町~平和台~東武練馬・上板橋

この区間には、環状線とは言い難いものの、山手線に行かずに行き来できるルートがある。部分的にエイトライナー・メトロセブンを実現させるためには、この区間の整備をカットすべきだ。ひとまず、二子玉川~練馬高野台の整備に落ち着いた。

 

有楽町線の愉快な仲間たち(奥の緑色の電車を除く)

 

 

 ⑦上板橋~志村三丁目~赤羽

この区間は整備が必要だ。山手線の駅まで行かないと行き来ができない。都営三田線と東武東上線の接続駅が無いためだ。エイトライナーの部分で整備すべき区間は、二子玉川~練馬高野台と、上板橋~赤羽だ。

二子玉川駅から練馬高野台駅までは環八経由で16.2km、上板橋駅から赤羽駅まで志村三丁目駅経由のルートは7.1kmだ。エイトライナー部分は合計で23.3kmとなった。計画ではエイトライナーは30kmを超えるため、多少は整備区間を縮小できた。二子玉川~練馬高野台の環八エリアがいかに環状線空白地帯かがよくわかる。

 

 

 

 

 ⑧赤羽~西新井

メトロセブン計画に突入だ。私のテンションが上がってきた。環七の赤羽以東は私の地元であり、Googleマップを見なくても記事を書けてしまうからだ。

赤羽から西新井まで鉄道で行くと、西日暮里駅を避けて通れない。京浜東北線と千代田線のどちらかは物凄く混雑していることとなる。メトロセブンで整備する区間はまずこの区間だ。距離は8.7㎞。

 

 

 

 ⑨西新井~六町~北綾瀬

 

この区間については整備不要である。確かに鉄道で行くと迂回を強いられるが、北千住駅での乗り換えが可能であり、山手線にまで行く必要はない。足立区民にとって北千住は交通以外でも重要な場所である。京成線・日暮里舎人ライナーユーザーを除けば、北千住に行ったことのない足立区民など皆無である。

 

北綾瀬行きの千代田線

 

 ⑩北綾瀬~亀有~青砥

この区間もまた整備不要である。北綾瀬から亀有は、綾瀬で乗り換えれば2駅で行き来できるし、亀有から青砥は京成金町線を利用できる。京成金町線は本数は少ないが、現状でも混雑はそこまでひどくない。私は毎朝京成金町線の朝ラッシュに挑んでいるが、後方の車両はラッシュと思えないほどゆとりがある。ただ、今後京成線以南の南北鉄道が開通した場合、そこから京成金町線に客が流れてくる可能性もある。そうなった場合、現状の4両から6両に編成を増強する必要があるが、京成金町線の駅は柴又駅以外は4両分しかない。残りの金町駅と高砂駅のうち、高砂駅はホーム延伸がほぼ不可能だ。金町駅は両サイドの道路と、歩道の一部分を潰せば何とかホーム延伸は可能であるが、果たして地元は許してくれるだろうか。

 

京成金町線

 

 ⑪青砥~上一色地区新駅

この区間については、JR東日本が所有している貨物専用路線である「新金貨物線」の活用によって代替できる。青砥のお隣の京成高砂駅の近くにある新金貨物線に駅を設置し、総武陸橋付近にも駅を作り、それらを結ぶ旅客列車を走らせる。線路は既にあるため、駅さえ設置してしまえば列車の運行が可能である。新金貨物線の旅客化計画は沿線民にとっては悲願であるが、国道6号線との交差支障の解決が難しく、実現には至っていない。ひとまず、新小岩から高砂までの開業で十分である。

 

 

 ⑫上一色地区新駅~一之江~葛西~葛西臨海公園~(東京ディズニーリゾート)

この区間については整備が必要だ。上一色地区から一之江駅までは離れており、大杉地区の鉄道空白地帯の解消も兼ねている。また、カッコ書きで東京ディズニーリゾートとしたのは、現在の環七シャトルバスは葛西臨海公園駅から東京ディズニーリゾートまで向かっているからだ。メトロセブンに少しでも収益性を求めるなら、東京ディズニーリゾートまで延伸すべきである。この区間の距離は、13.4km。

メトロセブンで整備すべきなのは、赤羽~西新井と上一色地区新駅~東京ディズニーリゾートだ。距離は合わせておよそ22.7km。

 

東京ディズニーリゾートを周回するディズニーリゾートライン。

 

 整備が必要な区間のまとめ

エイトライナー・メトロセブンにおいて整備が必要な区間と距離は以下のとおりだ。

 

①二子玉川~練馬高野台 16.2km

②上板橋~赤羽 7.1km

③赤羽~西新井 8.7km

④上一色地区新駅~東京ディズニーリゾート 13.4km

 

合計で45.4kmだ。羽田空港を含めた計画が73.4kmで、羽田空港を除いた計画が59.7kmであるから、それなりに建設費の節約にはなりそうだ。開業後の運行はエリアによって複数の鉄道会社が分担すると良い。私がこの記事で部分開業を主張してきたのは、鉄道マニアでもない限り、環状線に起点から終点までずっと乗る人はほぼいないからだ。必要な区間だけを整備すれば良い。

 

 

 おわりに

2024年問題によって、路線バスが窮地に立たされている。しかし、東京都区内における公共交通機関に対する需要は今後も絶えないだろう。東京一極集中は各業界における人手不足が解消されない限りは続く。果たして、現状の鉄道網のまま移動難民を出さずに都市を維持できるだろうか。路線バスが完全に自動運転が可能になってくれれば良いが、安全性は鉄道が他の交通手段を上回る。リニア新幹線の件で散々揉めているが、果たしてあれに乗る人はいるだろうか。莫大なお金は元をたどれば血税である。市民が本当に必要としている路線を整備すべきではないだろうか。