滑走屋の誕生を言祝ぐ(1) | 気まぐれデトックス

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あー、素晴らしく幸福な瞬間から一週間が経過してしまいました。

私は「遠征はしない」という禁を破ってしまいましたが、せめては「日帰りできるとこにしか行かない」だけは破るまい、ということで、中日の日曜日、14:30-と18:30-の回に、飛びました。(ま、帰宅したら日付は変わってたんだけどねー(;^_^A)

 

「滑走屋」

 

これまでのフィギュアスケートのアイスショーとは全く違う世界が、そこにひろがっていました。

時を告げる鐘の音と共に、暗闇に次々に滑り出してくる長い黒衣のスケーター達。

Love on the Floorの1シーンを思い起こさせるレーシィな黒い仮面。

誰が誰かわからない(まあ体格その他でわかっちゃうけどね、スケオタ的には・笑)、そしてアンサンブルスケーターとソロスケーターの区別はそこにはない。

全員が主役。

アイスショーではお馴染みの名前のコールもない。

そして高橋プロデューサーの指定に基づくソロスケーター達のソロ作品も、全般にダークでミステリアスにカッコいい、このショー全体をひとつの「作品」として構成するもの。

バレエ組曲「くるみわり人形」にたとえれば、ソロナンバーは「金平糖の精」や「花のワルツ」みたいなもので、それぞれの個性をきらめかせながら、しっかりと全体を形造っている。

 

前代未聞の5曲をつないだ14分間のオープニングが、既に「作品」。

いや、オープニングからエンディングまで、切れ目なく、音楽とライティングと滑り・踊りだけで目まぐるしくも鮮やかに展開されていく世界は、コンテンポラリー・ダンスの舞台として、世界のどこへ出しても胸を張れるものに仕上がっていた。

 

ちょっと待て。

このショーに登場するスケーター達、特にアンサンブルスケーター達は、アイスショーに出演するのさえもこれが初めてという、学生さんを含むアマチュアスケーターズじゃなかったのか。

なんなんだこのレベルの高さは。

作品として、ショーとしてのレベルが全然違うじゃないか。

これなら、我が親愛なる毒舌家揃いの舞台愛好家の友人達にも胸張って「観に行きましょう!損はさせません」と勧められる。

正直言って、アイスショーを舞台好きに勧めるのは勇気が要るのだ。

少なくとも「フィギュアスケートに興味がある」とか「高橋大輔を一度生で観てみたい」程度のモチベーションというかフックが元々備わっている相手にでなければ、勧められない。

なにしろお高いもの。

「氷艶」シリーズも、同じく全力で胸張ってお薦めしたいショーではあるが、やむを得ないとはいえ単価がお高いゆえに、歌舞伎座一等席をほぼ毎月、というクラスの、若干金銭感覚がぶっ飛んだ舞台好き(言っておくが、自分自身はぶっ飛んでるどころかもはやそもそも「存在しない」💦)でなければ、「ちょっと行きません?」とは誘いづらい。

 

と、話がそれてしまったが、正直、私も「この子、前に全日本か西日本で観たことあったかな」くらいの認識しかなかったスケーターも何人かいたので、ここまで彼ら彼女らの役割が大きい/重いとは予想もしていなかったのだ。

 

ひょっとすると、参加したスケーター達も、声がかかった時には、ここまで自分の責任が重いとは想像もしていなかったかもしれない。

だって、そんなショー、これまでなかったもの。

結果、当然のように準備期間は、世に数多あるアイスショーでは考えられないくらいのハードさであったらしい。

仮にもトップアスリート中のトップを意味する✨オリンピアン✨である村上佳菜子嬢ですら、ショーの準備期間を指して「満知子先生の所にいた時代を含めて、過去に記憶にないくらいハード」と証言しているくらいだ。

トップクラスの現役選手である友野一希選手や山本草太選手からも「過去イチ濃い」「一生忘れられない」「濃厚」と表現された。

 

これまた斬新な試みで、パンフレットに記載されたQRコードからダウンロードできる練習風景の写真を見ると、大輔プロデューサーが文字通り「手取り足取り」スケーター達を指導している様子がうかがえる。

そりゃあもう、凄かったろう。こんな練習したことなかったろう。

なんなら、十万単位のお金払って受けたいくらいのワークショップだろう、こんなん。

世界のダイスケタカハシが手取り足取り、自分の身体で見本まで見せて貴方を一週間みっちり指導します、ってさ。

 

とはいえ聊かハード過ぎたのか、残念ながら、最近猛威を揮っているインフルエンザ等の感染症なのか、開幕前に三人、大千穐楽前にもう一人のスケーターが体調不良で抜けてしまったのだが、これだけ目まぐるしくフォーメーションが変化し、しかも猛スピードで多数のスケーター達が交錯する舞台において、誰かが脱落するというのは、大変な事態だったと思う。

もともと、アイスショーでは「代役」というものが存在しない。

今回は、全ての振付とフォーメーションが間違いなく頭に入っている大輔さんと、鈴木ゆまさんの振付を氷に落とす作業を一緒に行った村元哉中さんが、多くの欠員パートを補ったのではないかと思われる。(経験豊富なPIWの中西樹希さんが加わってくれたのは心強かった)

とりわけ、欠員となったのが全員男性スケーターだったので、女性である村元さんではカバーできない部分は、大輔さんが負わざるを得なかったと思われ、ふと気がつくとアンサンブルスケーターの中に見まがう筈のない大輔さんがしれっと混じっていて驚いた箇所もいくつもあった。

 

参加できなかったスケーター達は、どれほど無念だったろう。

途中降板を余儀なくされた三宅星南君、楽日を前に見せていた涙は、もしかすると何かの予兆だったのだろうか、どんなに悔しかったろう。

そういう「仲間」の想いを胸に、変更に次ぐ変更を急いで頭に叩き込み、即応していったスケーター達裏方さん達の献身にも、頭が下がる。

そういう沢山の「大変さ」を乗り越えた大千穐楽。

大輔さんの、そしてほぼ右腕といった立ち位置にいた友野一希君の顔は、涙でぐしょぐしょだった。

私は楽日は観ていないが、全演目どれでもスマホ撮影可!というこれまた斬新極まりない試みのおかげで、会場中であらゆる角度・視点から撮影された映像がTwitter上にたっぷり流れてきたので、それを知ることができた。

 

大変だった、ということ以上に、その晴れやかな表情ににじむ達成感に、胸を打たれた。

間違いなく、「滑走屋」は福岡の地で、初めてフィギュアスケートを生で観た人々の心に記憶に深く刻まれたと思う。

日に日に「追いチケ」する人が増え、グッズはほとんど初日で売り切れ(手ぬぐい好きの筆者としては、手ぬぐいゲットできなかったのは痛恨である)、初演にして大成功をおさめた。

おめでとう、そしてありがとう。

貴方たちのハードな日々は、こんなにも美しく輝く結晶として生まれ出でたよ。

 

まずはその誕生と成功を言祝いで、おそらくしばらく続くはずの、「滑走屋」感想記録のPART1を締めくくる。