今さらながらの氷艶衣裳展(20)〜朱雀帝〜 | 気まぐれデトックス

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中野友加里さんが、ご自身の大好きなプログラム第一位に、大輔さんの『SWANLAKE HipHopVersion』を挙げてくれました\(⌒∇⌒)/

 

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/figure/2020/06/08/post_17/index.php

>1位は髙橋大輔くんの2007-2008シーズンのショートプログラム(SP)、『白鳥の湖~ヒップホップバージョン』(振付/ニコライ・モロゾフ)。2位はアレクセイ・ヤグディンのソルトレークシティ五輪(2001-2002シーズン)のフリー『仮面の男』(振付/ニコライ・モロゾフ)。3位が中国のペア選手で申雪、趙宏博組が2001-2002から2シーズン滑ったフリー『トゥーランドット』(振付/リー=アン・ミラー)です。

>フィギュアスケートは芸術を兼ね備えたスポーツ。美しさを競うためにクラシック音楽を使う傾向が強く、そういう曲を選んでプログラムを作る選手が多いと思います。そんな中で『白鳥の湖~ヒップホップバージョン』はフィギュアスケートの歴史を変えたプログラムだと思います。フィギュアスケートの概念を覆したと思えるほど革命的なプログラムとして、私の中では印象に残っています。

 

実際、『HipHop SWANLAKE』は国境もカテゴリーも超えて、たくさんのフィギュアスケーターやコーチや振付師からも「革新的」「かっこいい、憧れのプログラム」として名前を挙げられることの多いプログラムですし、HipHopをフィギュアスケートのプログラムに採り入れる選手が、この作品以降ぐっと増えた印象があります。

そうそう、『The Phoenix』の共同振付者の一人であるミーシャ・ジーも、最近のインスタグラムの中で大輔さんに憧れるきっかけのひとつとなったプログラムとして、その鮮烈な印象を熱っぽく語っていましたよね。

但し、上記記事の中でも語られているように、ご本人は「あれは未完成」「なんちゃってでヤダ」と、相変わらずご自分には辛口で(*´∀`*)

彼のように氷上で踊れるスケーターなんて、ほぼいませんが、なにぶん、ご本人の頭の中にある理想像は常にエベレスト級に高いので、満足はしないというね。。。

や、それこそ彼が「芸術家」たるゆえんなのですが。

陸の振付家であるもう一人の共同振付者、シェリル・ムラカミさんも、大輔さんのプログラムの中でお気に入りを訊かれて、真っ先にこの『SWANLAKE』を挙げていますよね。もうひとつが『The Sheltering Sky』だったのは、ちょっぴり意外でしたが、同時に嬉しくもあり。。。

 

最近、Twitterでも「#30DayFigureSkatingProgramChallenge」というタグで、色々な方の様々な観点からの好きなプログラム、印象に残った演技をYoutube映像などで観ることが多く、とても興味深いのですが、大輔さんの作品の中では、やはりこれが頻繁に採り上げられているようです。

あと、『道』と『Blues for Klook』『eye』『道化師』かな。

ま、名作揃いですからねえ(((o(*゚▽゚*)o)))

 

 

 

さて、今日はキラキラ朱雀帝キラキラでございます。

最初にお断りしときますけど、ガチで長いよ?予告どおりに。

できれば、公演前に書いた記事もさっくり目を通していただけると、嬉しいです(⌒∇⌒)/

 

まずは全身像とパネルを。

 

 

 

「氷艶」の朱雀帝は、原典の『源氏物語』における優雅だが気の弱い、臣下の筈の弟に気圧されっぱなしの朱雀帝とはかなり違って、美貌で気位高くて気性烈しい、光源氏と朱雀帝のハイブリッドみたいな人物像です。

 

お衣裳もそれを反映して、華麗にして苛烈。

 

重ねられた下の衣↓さえ、こんなに華やかで豪奢。

 

 

モティーフは光源氏のそれより単純(ザ・炎の鳥!)なのですが、染めや飾りの手法は、複雑な人柄を反映して、色々と手が込んでいます。

生地も単色ではなく、地紋のある生地に、黒と紫と白(生成)の絞り染めが施されています。

 

胸元の朱雀の顔↓あたりには、染めた革や金属の飾り鋲も用いられていて、ちょっと他の出演者にはない強度。

 

 

母の弘徽殿女御の打掛も華麗で、森羅万象を表象していますが、彼の場合、視覚的に訴える力は強い一方で、構成要素は少なめ。

ある意味、とってもシンプルです。闇を裡に秘めた炎の人

 

立ち襟の部分についても、特に襲に色は用いず、黒一色です。

上に写真を載せた下重ねの衣と同じ、赤・黒・金の布で細いパイピングが施されているだけ。

それゆえに、逆に胸元の炎の鳥が、目立ちに目立ちますけどね!!

うん、燃え上がるような情熱的な人柄が、お衣裳からもにじみ出ていますよね(*´▽`*)

 

なにせ「弟の女」である女性に一目惚れの挙句、あ~んなことやこ~んなこと↓しちゃうんですから。

 

 

まあ、ラテン系(お母さまがポルトガルご出身)のステファンには、こういう情熱的なお役はぴったりです。

と言うより、大輔さんの一番のライバル=ステファン、というマネージャーさん情報から、宮本亞門さんがステファンを朱雀帝に、と決定した時点で、炎のように激しい華麗な人、と朱雀帝の人物像も書き換えられたんじゃないかと。

 

 

一方で、開幕前に公式宣伝写真で用いられていたものは、今回の衣裳展で展示されていたものとは、後姿が大きく変わっておりました。

女性貴族の「裳」に相当するものを着用していた公式宣伝写真↓

 
 

 

 

角度は違いますが、実際に展示されていたお衣裳を後ろから見ると↓(そう、朱雀帝のお衣裳だけは、光源氏と藤壺宮との後ろのわずかな空間から、ちゃんと後姿を見ることができたんです♪)、随分様変わりしているのが、わかりますよね(⌒∇⌒)

 

 

今回の展示で↑は、光源氏のと同様、下襲の裾↓を袍の下から出して引く形になっていて、時代考証上、正しい着用方法になりました(⌒∇⌒)

 

 

 

ウチの過去記事をチェックしてくれてたりして?(ヾノ・∀・`)ナイナイ

 
 

 

 

こうして見比べてみると、朱雀帝のお衣裳は、けっこう、きっちり衣冠束帯姿↑になってますね(^▽^)

 

光源氏のは、袖口に狩衣の要素が付加されていて、ちょっとカジュアルになっている、という話は去年しましたが、朱雀帝のは概ね正統派。冠の形も。(帝なので、纓の形は、本当はちょっと違います)

 

袍の後ろの方に、スカートみたいに大きく襞を取ってあるので、陰陽師のお衣裳よりは変形されてますけど。。。

結果として、帝なのに、臣下の誰よりもフォーマルな装いをしているという倒錯は起こってしまっております(;^_^A

 

前にも書いたけど、身分が高い人ほどカジュアルな装いでいていい、というのは、平安時代に限らず、現代まで続くドレスコードです。

 

たとえば、ちょっと高級なレストランでは、ウェイターさんは蝶ネクタイに黒タキシードという正装で給仕をしますよね?

お客様よりもフォーマルな装いをすることで、お客様への敬意を表しているのです。

「帝の方がフォーマル」ということの異常さ、感じていただけますでしょうか。

 

同じような倒錯というか逆転現象は、地紋でも起きています。

筆者のこだわってしまうこの下襲の裾ですが、公式宣伝写真の時とは、地紋が違いました。

公式宣伝写真のは、檜垣紋↓という紋様で、

 

 

会場に設置されていた方は紗綾形紋↓という紋様です。

 

 

うーーーーん(-_-;)拡大するとかえってボケるな。。。

 

 

なんと朱雀様に限っては、公式宣伝用のお召し物も二種類あったということになりますね!

この金地の紗綾形紋様の生地は、袍の襲↓にも使われています。金地の部分ね。こっちは割と鮮明に見えるんじゃないでしょうか。

 

 

金の下に重ねられている、紫味を帯びた黒の襲は、皺加工を施したペイズリー柄の地紋で、少し桐壺帝のお衣裳の生地と似てますが、同じではありません。桐壺帝のは、もっと光沢があって皺加工はされていませんでした。

 

黒と金、なんて襲の色目は、もちろん、ないです。まあ、あんまりこだわってないんだろうと思います。

黒・赤・金に色数を絞った装いで、十分に華やかっちゅーより虹派手虹で、細かい繊細な細工の施された光源氏の衣裳より、遠目には目立って見栄えがします(;^_^A

横浜アリーナの広さじゃ、キラキラ朱雀様圧勝キラキラです。

 

冠も金の羽根に飾られて、華やかこの上ない。

 

 

一方で、紗綾形紋様や檜垣紋様は、紋様として格下とまでは言いませんが、光源氏の使用している蜀江錦紋様と較べると、老若男女問わず一般的によく使われているものです。

たぶん、このふたつのどちらかが地紋になっているお着物や帯を持ってらっしゃる方は、それなりの数、いらっしゃると思います。

ちなみに、着物大好きな筆者はどっちも持ってます(⌒∇⌒)アハハ!←誰も訊いてねえ💦

 

 

桐壺帝の項でも書いた通り、朱雀帝のお衣裳は、どこにも皇帝=竜の要素がありません。

 

 

朱雀=炎の鳥=鳳凰と見做せば、かろうじて「聖天子」につながりますが、衣裳の上では、彼は「竜の子」とは見做されていないのですね。

そうして、皇族・貴族中のひとにぎりのトップしか使用できなかった筈の、超高級舶来品の蜀江錦を模した紋様の着物を着用している光源氏に対して、朱雀帝は、そこまで由緒由来のある地紋のものを着用していません。

 

黄金の帯↓の地紋の雲立涌紋様は、親王が着用するもの、とされていますけれども、、、「帝」なのに「親王」って、、、ちょっと、どうよ?!

 

 

・・・なんか、書いてて、どんどん朱雀様が不憫になってきました( ;∀;)

こんなに高貴で華麗なのに。。。←もはやファンモードを隠しもしない( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

 

原典の『源氏物語』では、帝位はいったん光源氏の子である冷泉帝に渡りますが、真実を知った冷泉帝によって源氏は太上天皇となって「臣下の子」ではなくなりますし、冷泉帝は男子を持つことなく、帝位は朱雀帝の皇子の血筋に戻ります。(光源氏の姫がその后となって、結果としては朱雀帝・光源氏双方の血がつながっていくことになりますが)

当時の貴族社会で生きていて、今上の后に仕え、今上ご自身も『源氏』をお読みになることがある、という状況にいた紫式部は、さすがに二重のエクスキューズを用意している訳ですね。

 

これに対して、「氷艶」の朱雀帝は、自分の血筋を天皇家に残すことなく退位した筈です。

天皇家を継いでいくのは、太上天皇の地位に上るどころか、若くして亡くなった光源氏の子。あくまで「源」を名乗る「臣下の子」です。

これを、桐壺帝が真実を知りつつ黙認した、ということが、ひとつの大きなポイントではないかと私は考えています。

桐壺帝がこれを黙認する、ということは、少なくとも光源氏を通じて、若宮には桐壺帝自身の血、天皇家の血が流れている、という点が重要だったのではないかと。

長道の回に書いたとおり、当初の「月光かり」の構想において「桐壺帝が、朱雀君のことを弘徽殿女御と長道の不倫の果実と疑っていた」という描写があったとすれば、この黙認は、当然の帰結となりますよね。

 

揺るぎない帝王である筈の自分が、正妃を一臣下に寝盗られた、などという事態は、絶対に公になってはならない。

一方で、出生に疑いのある朱雀君を帝位につけ、その後も彼の子が代々帝位を継いでいくという事態もまた、許してはならない。

結果として、いったんは成人皇族で嫡男の朱雀君に帝位を譲るものの、その後継者には、少なくとも自分の血を引く皇族男子ではある若宮を据え、光源氏をその後見人とする、というのが、なんとか着地可能な落としどころになった。

 

輝かしい白衣のプリンスだった朱雀君が、暗い炎を背負った影ある黒衣の帝になる。

 

正統の帝である筈の朱雀帝の身を彩る闇の色、彼の抱える鬱屈の深さが、衣裳からも立ち上ります。


 

しかしまあ、これだけボリューミーなお衣裳で、よくもあれだけ跳んだりステップしたりユリア抱えてツイズルしたりできたもんです💦

さすがステファン!

大輔さんが「やっぱりアイスダンスの技術は要る!!」とメラメラ闘志を燃やしたのも、絶対、この時のステファンの演技が影響していると思います

 

 

 

そういえば、完全に脱線ですけど、「刀剣乱舞」の三日月宗近様のお衣裳↓の地紋は、紗綾形紋様ですね( *´艸`)←子の趣味につきあって得た知識です♪写真は去年、「京の刀」展で撮影したもの(^▽^)

 

 

紗綾形紋様は、もともと「卍」を崩してつないだ卍繋ぎ紋様と呼ばれるものでしたが、紗綾と呼ばれる光沢のある絹織物の地紋として頻繁に使用されたことから、転じて「紗綾形紋様」と呼ばれるようになりました。

「不断長久」の祝意が込められているという意味で、平安時代から今に伝わる国宝の刀には、ピッタリですね♪

 

~続きます~

 

 

 

 

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