今さらながらの氷艶衣裳展(17)~長道・謎の敵対者~ | 気まぐれデトックス

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JSPORTSさんが、絶賛「髙橋大輔祭り」を開催中♪

そして敬意と愛情に満ちたコラムまで(*´▽`*)

 

https://news.jsports.co.jp/skate/article/20190310218681/

 

名プログラムは、これだけには留まらない。なにしろジュニアグランプリに初めて参戦した2000年から、シングルスケーターとして出場した最後の全日本選手権まで、髙橋は20年間で通算15シーズンを戦い抜き、全部で31の競技プログラムを披露しているのだ。革命的だった「白鳥の湖ヒップホップバージョン」、ひたすらクールでかっこいい「ブルース・フォー・クルック」、激情の波が押し寄せる「道化師」etc...。

 

ホントにねえ。。。

競技プログラムを31も!毎年ひとつ以上披露してくれていたエキシビション・プロやショー用の限定プロも合わせると、たぶんプログラムの数、50は軽く超すだろう。これに二つの「LOTF」や「氷艶」、グループ・ナンバーまであるんだから、我ら大輔ファンって、まあ贅沢だよね(≧∇≦)

さらにこれに、アイスダンサーとしての競技プログラムも積み重なっていくわけだし、「氷艶3」や「LOTF3」だって♡

いずれ各局の手持ち映像を全て網羅した珠玉のキラキラ髙橋大輔全集キラキラを出していただきたい、というのは多くのファンの切なる願いであろうと思う。(news zeroや「ぼくマン」、古くはオロCからアースジェットや破天荒みたいな、CM映像もヨロシクね?)

でも、きっとそれはもっとずっと後のお楽しみ。

だって彼は、現在進行形で「今が一番素敵♡」を更新中のパフォーマーなんだから!

 

 

 

さてと。PCトラブルでしばらくお休みしておりました「氷艶衣裳展」シリーズ、再開しますね。

どっちかとゆーと、筆者が力入れて書いてる記事より、サラッと書いた記事の方が反応いいので、ちょっとショボくれたりなんかしちゃいますが(ノ´∀`*) 、まあ、自分が書きたくて書いてんだし、しゃーないわなあw

 

今回は敵役のボスっちゅーか弘徽殿様命・長道であります。

まずは全身と紹介パネルを。

 

 

 

 

ぱっと見、前作「破沙羅」の弾正殿のと色味の近い、黒・銀・ちょっぴり赤の、ザ・敵役なお衣裳ですが、当時の貴族のいでたちとしては、なかなか不思議なお衣裳でもあります。

 

 

そもそも、長道って何者なん???って、「月光かり」ご覧になって、皆さん、きっと思われましたよね?

帝に直接話しかけちゃうし、次代の帝候補の皇子二人に「何をしている!」などと居丈高に声をかけることが可能なのだから、かなりの上級貴族なんだよね、と思えば、自ら刀振るって庶民を殺害しちゃたりもする。海戦にも自ら参加しちゃう。

 

え?なに?貴族なの?武士なの?

 

そして「長道!」と、名前で呼び捨てにされている。

「長道様」でも「長道殿」でもない。

人をファーストネームで呼び捨てにするのって、現代日本においてすら、相手が目下の場合だけですよね。

部長や社長相手に〇〇!なんて名前で呼びつけるって、フツーしないでしょ。

名とは呪でありその人の本質である、という感覚が強固にあったはずの平安時代の日本でなら、さらにそうで、官職名か居住地名でしか相手を呼ぶことはありません。

「惟光」などと本名を呼び捨てにされるのは、その人のことを話す相手が、光源氏や帝など、ものすごく上の身分の人の場合です。

 

いったい、あーた、上流貴族なの?下っ端なの??

 

そもそも「長道」って名前自体、「道長」をひっくり返した名前ですもんねえ・・・。

藤原氏摂関政治の頂点を極めた人・藤原道長。

そういえば道長の、娘たち三人を全員后にした!とすんごい鼻息で、イキリまくって当時ですら「・・・はあ?」と眉を顰められた著名歌

「この世をば我が世とおもふ 望月の 欠けたることのなしとおもへば」

は、「破沙羅」の悪の四天王の一人、蘇我入鹿が独り舞いでひとさし舞った時の謡となっていました。

ふたつの「氷艶」を結ぶよすがとしての「長道=道長」でもある、と思えば、重要人物であることは間違いなく、実際、「月光かり」のストーリーをグイグイ進めていくのは、長道のセリフであり行動です。

 

そんな不思議な立ち位置の、長道のお衣裳は、やっぱり不思議。

順に挙げていきます。

 

まず、冠。

 

 

ぱっと見、それほど変ではなく、当時の武官の冠↓と似ているように見えます。

 

 

但し、それはパネルにもあるように「老懸(おいかけ)」の部分だけです。

形については、かなり変形されています。

まず、後ろの「纓(えい)」と呼ばれる部分(上の図↑だとくるっと丸められてる部分ね)が、ありません。

 

 

たとえば、こうやって並べて見ると、金の挿頭(かざし)を除いて見れば、朱雀帝の冠なんか、かなりしっかり基本形に則った形をしていますよね?

あと、長道のは、巾子(こじ)の部分も半透明で、向こう側が透けて見えてます。これは、他の登場人物のかぶりものにはない特徴です。

 

 

そして、装束それ自体も、ちょっと時代が違う感じなんですよね。

一応、刀ばんばん振るって血なまぐさいことやってるんで、当時の武官↓に相当するんだろうと思ってみるとですね。

 

 

 

なんか違いますよね?

特に違うのが、上着の合わせの部分。胸元ね。

形は微妙に変わっても、当時の貴族の衣装は、源氏や朱雀君や陰陽師の衣裳のように、短いハイネックになっている丸首の上着を上に着るものですが、長道↓のは、どちらかというと後世のいわゆる着物に近い形になっていますよね?

 

 

これ、平安時代なら庶民の着物で、もう少し時代が下がった鎌倉時代あたりで、武士がある程度きちんとしたカッコ(今で言えばスーツ姿?)として身に着けるようになった「直垂(ひたたれ)」↓に近い形です。

 

 

ついでに言うと、右側が銀、左側が黒、という左右違う布の着物になっていますが、これは「片身替り」という、室町~安土桃山時代あたりにかなり流行したデザインなんですけれども、少なくとも平安時代には、片身替りの着物は着用されていなかった筈です。

一番古い例で、鎌倉時代の絵巻物に登場するようです。

ぶっちゃけ、「かぶき者」が好んだデザインです。

要するに、長道の衣裳は、かなり時代が違う、かぶいてる、その上、貴族というよりは武家、なのです。あんなにエラソーにしているのに。

 

まあ、そうはいっても、紫の上や朧月夜のお衣裳だって、飛鳥~奈良時代の貴婦人の装束に近いので、メンズだって多少時代がぶっ飛んでるのは、しょうがないっちゃしょうがない、ですよね。

 

でも、もうひとつあるんだなあ。。。

極めつけ、この、どう見ても鳥の羽根にしか見えない銀地の上半身。

 

 

バレエファンにとっては、黒と銀の鳥の羽根で飾られたメンズの衣裳といえば、『白鳥の湖』のロットバルト↓です。

 

 

堂本さんは、バレエのお衣裳も何度も手掛けておられるので、当然「ロットバルトみたい」という感覚はおありだったろうと思うのです。

ロットバルトは、若きジーグフリード王子を罠にかけ、オデットとの誓いを破らせ破滅に導きます。

ついでに言うと、ヌレエフ版ではロットバルトと王子は禁断の恋仲であることが暗示されていますし、マシュー・ボーン版ではやりたい放題な母王妃の不倫相手の一人がロットバルトです。

ねえ、、この符合!!

 

 

そして、この「月光かり」の中で「鳥」といえば、もちろん、朱雀帝と弘徽殿女御です。こちらは黄金の鳥ですけれども!

チーム「鳥」という意味なのか?とも考えましたが、その割には、長道や帝に付き従う兵士や、朧月夜には「鳥」の要素はありません。

そして、「鳥」の要素が衣裳にあるのは、全登場人物中、この三人だけです。

 

桐壺帝の回に書いたように、桐壺帝のお衣裳は「竜」のイメージで満たされていて、「桐」に止まって翼を休めるという意味合い以外には、「鳳凰=鳥」の要素はありません。

一方、成人後の朱雀帝のお衣裳には、皇帝の象徴である「竜」の要素はありません。

 

もしかしてもしかすると、最初の「月光かり」の構想(戸部さんによる脚本原本と言ってもいいかもしれない)の中では、弘徽殿と長道の不倫の関係は、もっともっと深い根を下ろしていたのかもしれません。

つまり、朱雀君は桐壺帝の子ではなく、長道の子であると、少なくとも、桐壺帝はいつからかそう疑うようになっていて、結果として、どう考えても皇太子に据えないのは不自然な、高貴な生まれの正妃の息子・長男・心身共に健康、と三拍子揃った朱雀君を、立太子するのをためらったということなのではないかと。

そして朱雀君も、いつしかその疑いを持つようになっていた。成人後の彼の変貌(白衣が黒衣に変わる)は、それがきっかけかもしれません。

それゆえにこそ、彼はあれほど母を嫌い拒絶し、最後にはその手で母を殺めるにまで至ったのではないか・・・?と。

 

桐壺帝と弘徽殿女御、朱雀帝の衣裳を彩る黄金。

 

 

陽にして何ものにも侵されない黄金は、正統の、嫡子の表象の筈。

 

一方で、彼の全身を彩る鳥の羽根は、桐壺帝には欠片もなく、母弘徽殿の傍らで策謀に耽る長道の半身を覆う。

 

そういえば、都に凱旋した光源氏一行を迎えた長道は、迦楼羅(=ガルーダ)の面をつけて舞っていましたね。

 

 

迦楼羅は、インド神話に登場する神鳥で、ナーガ族(蛇・竜)と敵対関係にあります。

 

「月光かり」では、桐壺帝→光源氏が竜の系譜であることを考えれば、鳥の羽根を身にまとい、迦楼羅の面をつけた長道は、光源氏の永遠の敵対者でしかありえませんね。

 

~続きます~

 

 

 

 

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