その後彼女のイライラはだんだんと薄れていったが、

接客していても、彼女の話の腰を折り続けたり、

「いや僕のバッグはもっとサイズが大きくて・・」

などと勘違いをし続ける客には、イライラを隠せず

客に「ソーリー」などと言わせる店長なので、

またいつぶり返すやもしれん・・


今日の「ツナ子をうちにまわすな」苦情には

目に涙が浮かぶくらい一瞬参ったが、

中国人旅行客や外人の旅行客が色々と買い物

してくれたおかげで、今日は4店舗の店員の中で

一番の売り上げを出せた。

「一番大事な事は利益を出す事だと思って取り組んでます」

とオーナーに言ったのを、たまたま運よく数字で

示すことが出来た。別に何を言われてもいいや、

こんな事あっても、数字できちんと結果を出せたしと

落ち込むどころか気分よく仕事を終えた。


店長にも「私のせいで色々迷惑かけてごめんなさいね、

明日の誕生日は楽しんで下さいね」と、笑って挨拶しあえたし

出来る事は全部やった、気持ちの良さだけが残った。

仕事がこんなに楽しいなんて、思ってもみなかった。

思うに、息子が出来た事で人生ががらりと変わり、

全く想像しなかったほど、成長した。

成長はしてないかもしれないが、私を苦しめ続けた

異常に傷つきやすく、嫌な事を繰り返し繰り返し延々と

思い悩むのが、ぴたりとやんだ。言葉にすると簡単だが、

生きているのが嫌だという思いを引きずりながら毎日を

過ごす苦しさを長年背負う苦しみは、わかる人には

わかると思う。


明日出勤したら、明後日は1日休み。その後また5日出勤。

17日間で休みが1日と言う、違法じゃないの?と

義母からつっこみの入るシフトだが、例え試用期間の

4か月が終わって本採用にならなくても、出来るだけベストを

尽くして、悔いのないように働こうと思う。


話していて、「うーむこの人は感情の起伏が思った以上に

激しいし、人の気持ちが全然読めないな」と思ったので、

「あなたの言ってる事は筋が通っている」と言うような事を

色々事例を挙げてこちらも納得してる事を示した。

どの同僚と気まずくなろうが、損をするのは外人の

自分だけなので、まずは店長をたてておいたが、

私はクビになって仕事無くなると困るんです」と

はっきり言っておいた。オーナーに苦情を言う以上、

言われた側も生活かかるんで気軽に言わんで欲しいし

こんな事度々あるのは嫌だ。


ほどなくオーナーのパパ、ママ、娘(38歳)から電話が

呼び出し電話がかかってきて、すぐ近くの事務所に行った。

「仕事、どんな感じ?」と、とても丁寧な態度で切り出されたので

「働く事を楽しんでます、でも今の店舗は他の店舗に比べて

思ったように売れないし、他の店の商品と違って

詳しい説明が求められるので、苦戦してます。

週ごとに店舗を周っているので、覚えるスピードが遅いので

ノートに各店ごとのレジ処理や商品説明を書きとめて、

家では単語を主人に教えてもらって勉強もしています」

とか、努力してる事もアピールしておいた。


「うん、あなたは売り上げ頑張ってるよね」とオーナー娘に

言われたので、やっぱり売り上げ見てるんだなと確信。

「英語の方が達者なら、電話でも接客でも

英語でお話ししても宜しですか?って一言きいて

英語に切り替えればいいから。フィンランド語はおいおい

勉強すればいいから。その店アメリカのブランドだから

英語で話してOKよ」と、言うではないか。


オーナーファミリーは私が来る前から私の苦境を察して

出来る限り親切に皆で話しかけてくれた。

思うに、店長の気難しさや気分のムラは百も承知で、

店長がフィンランド人を雇いたい、しかも自分で人選

したいのに対し、オーナーは売上重視なので、

アジア人客の売り上げを取りこぼさない事に

重点を置きたいのだろう。戻って店長に

「英語でなるべく接客するように言われました。

アメリカのブランドなのでそうするようにと」

と言うと、案の定目の玉が「え?」と、ハトが豆鉄砲

くらったような顔を一瞬したが、「そう・・」と言いながら

こりゃ納得するしかないな・・と思っているのがわかった。


ひょっとしたら更年期障害があるのかもしれないし、

マイグレンの頭痛持ちだし、根は悪い人では無いし、

あの人きらい!!とか思うほど私も若くはないし、

店長がどう気にいらなかろうが、他にスタッフが

いないので当面はどうしようも出来ない事を

悟ってくれたのだと思いたい。

今日出勤したら店長からいきなり

「オーナーから話があるから」って言われたので

・・これはおかしい、何か店長がオーナーに言ったな?

と思ったので尋ねてみると、店長が帰った後の1時間

私を一人で6時から7時まで店に残すのが安心できないと言う。

そらそうだ、働きだしてまだ2か月もたってないし

私は4店舗を周る回遊魚なので、この店の勤務はまだ

3週間目。なのに店を閉めて現金の売り上げ計算や

鍵も渡されて閉店をまかされてる。


シフト表を見たとき、「ええ??私が店閉めんの??

いいのかよ、新人に鍵渡して、金計算させて、

てきとうやなー」と思ったが、どこの電気を消して

どう売り上げ計算書に記入するか、メモ帳に全部書いた。

「ツナ子が店閉めた時、計算違ってた」とか言われないように。


明日1日出勤したら休みだが、今週はなんと11日連続勤務。

というのも、あるスタッフがかぜをこじらして持病を悪化させた為、

今日は休みだーと思って朝10時ごろ息子とごろごろたわむれていた

ところ、「今日出勤出来ないか」とオーナーから電話がかかってきて、

1日の休みもなくなってしまったからだ。ヤンツェクは里帰りで国外だし

他のスタッフはこの店の勤務経験が殆ど無い。

しかも最近2人熟練スタッフがやめたばかり。

月曜に出勤したら、出勤して来てくれてありがとう~と

言っていたのに、店長は私のフィンランド語が下手なので

うちで働かれるのは困る、とオーナーに言ったのだ。


言ってる事は全くもって道理になかっているので、

「私がフィンランド語が下手なのは履歴書にも書いたし、

オーナーにもはっきり言ってあっていつも英語で会話してるけど、

確かに店でのフィンランド人の接客は思ったように出来ないし、

聞き取れない事も多いから、店長の言うとおりだと思う。

特にうちはブランド店だから、接客の水準も保たないと

いけないし、あなたの決定をリスペクトして従うよ」

というような事をぐちゃらぐちゃらと話した。


あなたは商品について勉強よくしてるし、覚えも悪くないし

外人客の売り上げも悪くないけどフィンランド語がね、

接客してても聞き取れない言葉も多いみたいだし、

電話の応対も問題だしね、学校に行って勉強するのはどう?

とか、言われた。そんな時間あるわけないし、

第一外人向けの中級以上のフィンランド語の学校が

2、3種類しか無い。決して悪い人では無いのだが、

えっ?っと思うような小さい事を延々気にしていたり

この店長の店には細かい決まりごとが日本人並みに

一杯ある。最初からこの人が一番ややこしそうだと

踏んだので、決まり事を覚えて、指示にも従い、

長い話にもあいづちをうち、それはどうかな?と思う事にも

意見も言わないようにして、極力きちんとしていたが、

それでもダメだった。









今日、店番をしていたら、うちの店が移転する前に

入っていた洋服店の女性オーナーが、背の高い

年配の男性を連れて入ってきた。

「ヨルマ・ウオティネンじゃんか!!」と思って、

にこーーーっと笑いかけたら、ヨルマさんいい笑顔を返してくれた。

やっぱいい人だ。



Mermaid and Crocodile


何でこんなヨルマさんばっかり見るんだろう。

疑問はさておき、接客に粗相があってはと思い、

サラダをむぐむぐ食べているマネージャー(これまた結構美人)

を興奮して呼んだ。ヨルマさんはさすがに目ざとく

アメリカの建築家がデザインした特別仕立てのスーツケースを見て

「これは綺麗だなー」と、感心していた。

空港で見かけた事もあるジェットセッターヨルマさんが、

うちに再来店してスーツケースを購入する暁には、

一緒に写真を撮ってくれるよう、お願いしてみたい。




Mermaid and Crocodile




アルバイト勤務の同僚の、最近メインの他の仕事を首になった

某男子が、「応募しよっかな」と言って見ていた販売員の口に、

「これ、高級店て書いてあるから、ヴィ☆ンのお店の事じゃない?

電話してみないさいよ」と言って、励ますふりして電話させ

やっぱり某店だとわかると、

「さっきのページ見せて?」と言って、ちゃっかりメモった。

某男子はスローペースなので気づいてなさそうだが、

ヤンツェクはその職を失った某男子よりも段違いの

激しい執念でその応募に闘志を燃やしているに違いない。


「ヤンツェク、あなたが某店で働いてるとこが想像できるわ、

だって凄くエレガントだから」と言うと

「知ってるでしょ、そんな簡単には行かないってこと」と

彼にしては冴えない切り返しをしてきたとことからも、

本気具合が読み取れる。


ヘルシンキにはバッグのブランド店は、もの凄く少ない。

あるのは、ヴィ☆ンとうちの系列店を除いたら、5店舗あるかないか。

つまり、ヤンツェクのようにバッグのブランド店で経験もあり、

売り上げの一番多いロシア人客が相手に出来て、

フィンランド語も英語も完ぺきに近い人物は、いないに等しい。

彼が応募して通らない理由が、一つもあげられない。

ハイブランドの話が大好きで、ヴィ☆ンが大好物の彼が

応募しないはずがないので、近い将来彼が店を去る事も有りうる。


彼が今働いている店は、他のブランド店よりも実用性の高い

商品のため、バッグの知識が格段に求められる上に、

複雑な修理を担当している。

彼はたぶん、うちの系列店で一番いなくなると穴が埋められない

やり手販売員なので、やめる事になったら女性マネージャーが

怒る様子が目に浮かんでくる。フィンランド人なら穴は埋めやすいが

ロシア語更に英語堪能のいい人材は見つけにくい。

もっとロシア語を話せる人材が必要なくらいだ。

はっきりイメージ出来る事は実現する可能性が

とても高いので、ヘルシンキ唯一のラグジュアリー路面店の

ヴィ☆ンに我らがデビルパンが勤務する日も近いかもしれない。