今日も某アメリカブランドのバッグのお店勤務だった。

他店とは違い、ここでは一人で店番している時間が長い。

店長は修理や仕入れや雑用で奥の事務所にいる事が多い。

昨日は印象的なスイスのご婦人が来店した。

60歳くらいの白髪交じりの髪をボブにした、こざっぱりした女性で

リュックを探していた。上海のエアポートで見かけたのと同じリュックを

探していて肩にかけて見ると、やっぱり理想のリュックだったようで

とても満足げな様子だった。


よく見ると、スポーティだがエレガントな服装で、紺のニットのセーターから

襟がきれいに覗いていて、何重かの細いゴールドのネックレスを

している。中身と外見がぴたりと一致したセンスの良い服装だが

リュックだけが若い男の子が使うようなものだったので、

彼女は購入した後にゆっくりと店で中身を詰め替えたて

何度も鏡を見ては満足そうに眺めていた。


「以前イタリアに住んでいた時、一度だけスイスに

行った事があるんです。イタリアを何て綺麗な国だろうと

思っていたのですが、スイスに行ったら更に綺麗でびっくりしました」

と言うと、「日本人はスイスが好きよね。住んでる日本人女性も

結構いるわよ、ほら、公文あるでしょ、うちの親戚の子も

十年通ってたわ」

などと一頻り話した後で

「でも日本人の女性は、帰国するのが難しいみたい」

「どうしてですか?」

「息苦しくなっちゃうみたいね」

「ええ、確かにそうですね」

「あら、あなたもそう思うのねー」

などと、15分ほどイタリアやスイスの話をした後

「今日はいい買い物が出来て本当によかったわ、

私の名前はマリア、あなたは?」

と言って、握手をして店を去っていった。

買い物一つでも心に残るようなきちんとした振る舞いが出来る、

何ていい年のとり方だろう。


他にも今日は、日本人の70歳くらい男性が、ガーメントケースに

スーツケース、ベルトを購入していった。日本の旅行者は

高確率でユニクロのダウンを着ているのですぐわかる。

ワードローブがユニクロでいっぱいも私も

あれはちょっと丈が短すぎると思うのだが。。

ガーメントケース一つでも4万するので、海外によく出張する人にしか

必要の無いものだろう。もう引退して顧問などの役職につく年齢だと

思うが、息子がいれば息子に自分のイニシャルが入ったものを

譲るのも素敵ではないか。適当に買い物するわけではなく

日本の価格も尋ねたり、使い勝手もチェックする。


何でも何十年も前にヘルシンキで大使館勤めをしていた

おそらくは外務省勤務だった友人のリクエストで

当時住んでいたアパートを写真に撮ってきてくれと

頼まれたという。見せられた住所は存在しかなったが、

大使館街の近くのおそらくここに違いないと言う住所を

割り出してマネージャーに印をつけてもらい渡した。

ふと、こういう事を毎日していたホテルに勤務していた

事を思い出す。毎日色んな国の人と話す仕事は、

自分の到らなさに七転八倒する事もあるが

役に立てるとこちらが満足感を与えてもらえ

とても楽しい。








世の中には色んなブランドがある。

主流はヴィトン、エルメスなどのフランスかグッチやプラダの

イタリアだが、中にはコーチやマークジェイコブズなどのアメリカ、

バーバリーなどのイギリスブランドもある。


今週私の働いている店は、アメリカのブランド店だ。

日本では男性に非常に人気があり、ターゲットは

国際出張の多いビジネスマン。デザインやお洒落さよりも

機能・品質・修理保証の良さ重視のブランドだ。


日本では非常に有名だが、80年代までみんな同じ

中山服を着ていた中国人は、まだまだブランドには疎い。

特に小金を持ったおじさん世代は、英語のアルファベットの

発音が苦手で、「これ、何てブランド?」と毎日聞かれる。


「xxと言うアメリカのブランドで、40年近い歴史があります。

防弾チョッキの素材を使っているので有名で、

耐久性があります。オバマ大統領も使ってます。」

と、手短に説明する。すると知らない中国人も

なるほどねーと、すぐに納得してくれる。

例えブランド名を知らずとも、それだけ聞けば

「よし、何か買ってもいい」と思ってくれる中国人も多い。

それだけ海外旅行にはりきっているのだ。

更に、免税レシートを発行するし、うちの価格が中国に比べて

どのくらい安いかを説明する。その為にわざわざ中国の

ショップに電話して、価格も自分で調べてある。笑


無料のネーミング刻印サービスもあり、店のバッグの半分くらいには

革のタグに機械でイニシャルの刻印がその場で出来るように

なっている。今日は私も3つのバッグに刻印を押した。

海外のブランド店で中国より遥かに安い値段で買い物をし、

しかも5年の国際保障がついていて、中国でも5年間無料の

修理を保障されている。おまけにイニシャルも無料で入る。

いい思い出にしてもらえるように、丁寧にお礼を言って送り出す。


今日は説明より早く、第一声にこう聞かれた。

「このブランドとプラダ、どっちがいいもの?」

何とまあ、中国人は思うままに生きてる事か。

「プラダとは違いますね、あっちはイタリア物でトレンディー、

うちはアメリカのブランドで実用的で耐久性のあるバッグですから」

と答えたが、おそらく私が腰の低いアジア人で中国語を話すから

聞ける質問だろう。白人の店員に同じ事は聞きにくい・・はずだ。


色んな人がいるか、中国人が来店すると気持ちがひきしまるし

接客は楽しい。



今日はもう中国人ツアーガイドが来る事もないだろうし、

ふつーの日だろうなーと、暇なお昼下がりにそこかしこを

磨いてこすっていたら、昨日のツアーガイドが、同じメンツに

新しい旅行客も交えてやって来た。

これはエンジンかけねばと思ったが、10人が一斉に

店にがやがやと散らばるとどこから手をつけようか迷う。


品定めを真剣にしている人から接客を始めるが、私の予想は

大概はずれ、「あなたがそんなに買う気満々だったとは」と思う人が

10万以上購入したりする。土曜に続き今日もあったのが、

友人のお買い上げしたバッグを見て

「私も同じのが欲しい」と言い出す中国人。

日本人なら全く同じ商品を欲しがるのは真似してるようで

恥ずかしい・・と思いそうなものだが、全く意に介さず、

子供のように同じものをくれと言う。笑


店長がオーナーに電話で確認したが、倉庫にも在庫が無い。

そりゃそうだ、この1週間で4万円する定番商品ではない

季節もののバッグが3つも売れ、そのうち二つは中国人が

お買い上げ。更にもう一つ同じののをくれと、駄々までこねる

3人目の中国人がいようとは。2、3週間前に、マレーシアか

インドネシアの華僑が別店舗のスーツケースを買って在庫が

尽きそうになったのと、似た感じの現象だ。


この店に2日続けて来たのは大陸の、ディプロマのパスポート、

つまり大使館関係や高級官僚、政府の派遣する仕事などを

している人と、一人桁はずれのリッチマン。10万くらいの支払いを

「俺が払う」「いやいや自分で払うから」と言っていた。

後でツアーガイドの言うところによると、億万長者レベルだとか。

その人はかばんを一つ購入しただけで、しかも腰も低く

感じの良い人であった。億万長者でも無茶買いしないとは、

何とも感じがいいではないか。


10年前は中国人の服装やセンスのレベルは今とは比べものに

ならないほどそりゃあひどかった。誰が金持ちか一目でわかったが、

今では金持ちと貧乏人の区別がつかない。

私は韓国人、日本人、中国人の見分けが人並みはずれて

うまかった。だからどうした?っていう、役に立たない能力だが、

時々香港人か台湾人か、大陸の中国人かも服装や髪型、

化粧やメガネ、歩き方や目線などでわかる事もある。

これだけは自信があったが、最近では中国人と日本人の

おじさんの見分けすら怪しくなってきた。


粗悪品や異様にセンスの悪い服が市場から淘汰され、

金持ちも24金のまっ黄色の指輪をはめたりしなくなった。

「見せびらかしステータス」も影をひそめた上に

「海外旅行に行くはりきり」の感じられない普通の服装で、

10年前には5年住んだ中国で一度も見かけた事の無いような、

品のいいツイードのオレンジのジャケットを着ていたりする。

近づいて見ると更に仕立てもよい物で、更にはベルトも靴も

気の利いたおしゃれな茶色のものを合わせている。

さすが「あのカバンが欲しい」と駄々をこね、数時間後に再来店して

大きさ違いを購入していくお洒落さんだけある。


そんなリッチな中国人と対照的な、海外旅行には来れたが

ブランド店で買い物できるほどのお財布に余裕の無い中国人も

もちろん沢山来店する。大概すぐに店から出るので接客も

殆どしないが、中には色々知りたがる人もいるので、

スーツケースの説明をしていた時だ。


そのスーツケースは非常に特殊な素材で出来ている。

どのくらい特殊かというと、アメリカ軍に素材を提供している

アメリカの会社の特許素材で、防弾装甲車の素材に使われるくらい

丈夫で、しかも軽い。そのサンプルがあって、足でガンガン踏んでも

ぺこっと凹むだけで傷もつかず、パックンともとに戻る。

「そんな軽い素材が丈夫な分けない」と、中国人のおじさんが主張するので

「でも本当に防弾車両に使われているくらい、丈夫ですよ」というと、

6万するスーツケースを、いきなり拳でガン、と殴ったのだ。

何が彼をそうさせるのか。

スーツケースは特殊素材なので傷一つつかないが、あきれ果てた。

たまにこういう粗野な中国人がいる。こちらが丁寧に接していると

大概の中国人は気持ちのいい人達だが、こういう人もわずかだがいる。

日本人には皆無に等しい、粗暴な素行に言葉を失った。


兎にも角にも、この店は今日も一日が終わってみると

土曜に並ぶほど、セール中でもない平日にはえっ?と思うほど

高い売り上げを出した。中国人を相手にするなら、もれなく

色々頭の痛い事がついてくるのだが、それもまたおいおい書きたい。









疲れが残ったまま月曜の出勤に出た。

家から駅まで300メートル、電車でヘルシンキの中心街まで7分。

そこから店まで5分くらい歩く。出勤すると店長が笑顔で挨拶してくれた。

日本だと「店番させるの不安だからシフトに組まれて・・」なんて話になったら

気まずいもんだと思うが、一日中店長は丁寧に接してくれたし、

私も普通に接した。


店長は私とほぼ同じ年で、なかなか美人。

笑うと可愛いし、日本人から見るとちょっとぽっちゃりめのお洒落さん。

フィンランド人女性にしては珍しく、自分で髪を結ったり色んなヘアースタイルで

現れる。服装は到って地味だが、テキスタイルを大学で専攻しただけあって

センスもいい。色々欠点もある店長だが、店の在庫管理は厳しい性格のおかげで

余分な物がありすぎたり、足らない商品がないように効率よく保たれ、

おかげで店員の私たちも「お客さんが欲しがってるのに、在庫が切れて

商品が無い」という、他の店舗でしょっちゅうある事態に陥らずにすむ。


店は独立店舗になって3年目だが、ゆっくり右肩上がりで売り上げが成長

し続けていて、店長として尊敬出来る要素も沢山ある女性なのだ。

だからオーナー家族も店長の厳しい在庫管理につきあい、

余分なバッグがあると倉庫に持ち帰ったりと協力をしている。


今日はオーナーの娘が朝の在庫補充にやって着た時に

土曜の売り上げについて

「10万ペソ(仮)以上あったじゃない」と言われたので

「はい、中国人の来店が多かったので」と答えた。

店長の前でわざわざ数字を出してくれたのは、

私の事を気遣っての事で有難いではないか。

このオーナー家族はおそらく超リッチなので、

ヘルシンキ近郊のどこかの島に別荘を持っていて

週末はそこで過ごすらしい。


私はまだ勤務経験が浅いのでいまいちピンと来なかったが、

うちの店が4店舗で一番の売り上げを出すことも少ないようだし、

際立って高い売り上げだったようだ。今日改めて売り上げを

チェックすると、2番目の店員の倍以上の売り上げで

一番の売り上げだった。でもこれをヤンツェクが知ったりしたらと

思うとマジで恐ろしく、素直には喜べないし

寒くなればなるほど観光客は減って私の出る幕も減る。


昨日義母から聞いた話によると、義母の職場では

常に人手不足なのに、夏になる前から4ヶ月だけ人を雇い

試用期間過ぎたら全員を首にしたという。

何でも社長がひどい人で、忙しい季節だけ働かせて

お払い箱にしたとか。ばれたら完全に違法だが

ばれるはずもなく、私も同じ憂き目に会わないと

誰が言えようか。


取り敢えず今日も店は中国人ツアーガイドが連れて来た

リッチな中国人のおかげで、平日らしからぬ高い売り上げを出せた。

後は豪華客船でやって来たブラックカードのオーストラリア人など。

オーストラリア人のおじいちゃんは、なまりに加齢が重なって

30%くらい何言ってるかわからなかった。

この店は男物のバッグが大半で、外人の白人層の観光客は

アメックスのブラックカードホルダーが多い事に気づいた。


中国のホテルで働いていた頃、日本の普通のサラリーマンは大概

ゴールドカードを持っている事に驚いた。海外出張を頻繁にする

レベルで35歳以上の人は、80%以上がゴールドカードホルダーで、

自分と同じ色の普通の色のアメックスのカードはごく少数で

10年たった今でも顔を思い出せるくらいだ。笑

あの頃もなるべく朝食券をつけてあげられるようにしていたが、

今でも庶民的な財布事情が感じられると、引き出しの奥の

セール品の残りなどを、すぐに見せてしまうのであった。笑







癒しと言っても休みに温泉につかれるわけではなく、

本日土曜はバイトのとても性格のいいロン毛の男子30歳と

一緒のシフトなのだ。心の中でスイートハートと呼んでいる。笑


先月まではもっとシフトに入っていたが、この度学校に

入学し学生援助金をもらい始めたので、月額6万以上の

収入を得てはいけない事になり、日曜はシフトに入れる

ものの、土曜は入れない事が多くなってしまった。

今迄はだれかが長期休暇の時は彼が代わりに

働いていたが、今月からはそれも出来ない。


彼の名前をヴィンセントとしよう。

店を開けて会話を交わしているうちに、話の流れが

シフトの事から店長の事になると、彼の言葉の端々に

どうも店長に困っている感じがにじんでいたので、

昨日の事をかいつまんで話したら、彼は過去に

店長と大問題があったという。私より大きい問題って

何なんだよ、と思ったが、彼ももうバイト歴4年目?くらいなので

過去の話だが、店長は悪い人ではないが一緒に働くのは嫌いだ」

と言い切った。「私だけかと思ってたよー」と言うと、

以前同じ店内に2つのショップが併設されてるころ、若い

女の子の間で「あの人はとにかく難しいし、すぐ怒るから注意」

人物だったらしい。私だけを特に嫌っているというわけでは

なさそうなので何とかこれからうまくやっていきたいが、

前途多難そうだ。


今日は「チャイニーズデーだね」というくらい、中国人旅行客の

来店が多かった。前半はフィンランド人より圧倒的に多いくらいだった。

どうもリッチな人が多かったらしく、高額なバッグが良く売れて

店はこの2週間で一番の売り上げを出せた。

おかげで今日も4店舗の店員の中で1番の売り上げを早々に

出せたので、残りはヴィンセントにまかせる感じで接客した。

売り上げを出せた事で自分の存在意義を感じられるが、

「ツナ子、ここの店で売り上げだせるからもっとシフトに入れよう」と

オーナーがシフトを組むと、ヤンツェクと店長のいるこの店で

働く羽目になる。


忘れていた中国語もだいぶ戻ってきて、

お客さんが楽しそうにリラックスしてくれるととても嬉しいし、

「一緒に中国来るか~?」とか冗談言われたり、

やっぱり中国語を話すと色々お願いされたりわがまま?も

言われるが、なるべく要望を叶えようと丁寧に接客すると

去り際に満足した表情でお礼を言ってくれる。

中国語、英語、フィンランド語を使って仕事するのにも

だんだん慣れてきて、言語の切り替えもスムーズになってきた。

中国の人と接客するとこっちも元気をもらえる。

彼らと接客していると、80年代後半、90年代初頭の

日本人が海外のブランド店を席巻していた頃を思い出す。

日よまた登れ。