小学館の「セクシー田中さん」問題の調査報告書も、膨大でした。https://doc.shogakukan.co.jp/20240603a.pdf

 

私が、この報告書を読んで驚愕したのが、脚本家インスタに反論するための原作者の長いブログ記事は、小学館の関係者も了解の上での投稿だったということです。

芦原氏個人の問題として捉えつつ、小学館社員が協力するということになった点については検討べきである。しかし事実として小学館が代理をして締結した原作利用許諾契約に付随して発生した事象であり、小学館が関与することは不自然ではなく、むしろそうすべきであると思われる。(p76)

だったら、どうして小学館名で反論しなかったんでしょうか?‥余計問題が大きくなる?でも、そしたら、少なくとも、自殺だけは免れたのではないの?

 

てっきり、私は、原作者が、個人で発信したものとばかり思っていました。それで騒ぎが大きくなって、「書くんじゃなかった」と思って自殺したのだと。

 

このドラマを作るまで、脚本家が出してくる脚本が、ことごとくひどいものだということは、日テレよりも具体的に書かれていました。日テレの時と同じように、最初から、気になった点を抜き書きしていったのですが、半分過ぎで、「小学館が原作者の反論文章出すことを知っていた」、を初めて知ったため、抜き書きは、このあとに附則するにとどめます。

芦原氏の投稿が、本件脚本家非難という事態を引き起こしたわけだが、投稿には慎重であるべきという意見はあり得るし、現にそのような考えを持った者もいた。 芦原氏の投稿は、炎上被害に対する反論投稿であったが、思いがけず本件脚本家に批判が向けられたことについて、責任の重圧を感じたのかもしれない。(p76)

 

いや、なんでしょうこの他人事感・・・。

 

危機管理体制 :本件脚本家のSNS 投稿がきっかけであるが、芦原氏自らの投稿が図らずも、ネットユーザーから本件脚本家が個人攻撃を受ける結果になった。 一部の者を除き小学館では、本件脚本家の投稿についての関心は高くなく、芦原氏の投稿についても同氏にむけられる炎上には心配する向きがあったが、本件脚本家への炎上が芦原氏に与える影響については検討された様子はない。 (p59)

 

ああ書いたら、こうなるってのは「図らずも」??=想定外ってことですか?・・・いやこの報告書の時点でも、そういう認識なの?と、幻滅します。

 

あのすばらしい「セクシー田中さん」を書いたような筆力のある創作者の、渾身の文章・・・。活字コミュニケーションを得意とするネットの人々の胸を打たないわけ、ないでしょうよ(しかも、作家先生の文章を直すという、日本最高峰の言語集団・小学館の手が入っているんですよね??)そしたら匿名の人々が、正義感で、活字で批判する構図なんて、目に見えますよね。(それとも、私が言っているのは後出しじゃんけんなのだろうか?・・・

 

しかし、小学館のSNS対応を日テレよりもはるかによかったとしている識者の記事がありました。そうなの??生ぬるすぎない?

 

日テレの報告書では、原作者は脚本家側と会いたくないと書いてありましたが、12月の時点で、クレジット問題(脚本家の名前を載せる載せないでもめていた)が解決しないため、原作者の方から、脚本家側3人と会いたいと言っているようです(p50)。しかし、脚本家側に譲歩する気がないことが判明、面会要請を撤回したとあります。「会ったら何も言えなくなる」と言っていた原作者が、会うことを希望しただけでも、すごい勇気だったのに・・・。小学館が(原作者のためを思って)阻止したのです。

 

インスタ投稿から、自殺までの時系列まとめ。(p51~)

 

2023.12.24 脚本家インスタ投稿

2023.12.28 同再び投稿

2023.12.31 原作者はいずれ「アンサー」(反論文)を出したいと小学館側にメール

2024.1.10 原作者はアンサーを出したい意向を小学館側に対面で伝える 

2024.1.17 原作者からたたき台が小学館側に送信

2024.1.18 原作者+小学館側3人で確認作業開始(うち小学館側1人と5,6回修正)

2024.1.26 14:30 原作者アンサー投稿

2024.1.26 15時ごろ 小学館の担当者の上司(過去に炎上経験)が、プリントアウト文を読み、大変なことになったと認識、広報室への連絡を指示。法務室を交えて29日に対策会議へ。

2024.1.27 16時ごろ 原作者とオンライン会議、大きな反響が起きているが大丈夫か、今後どうしたいかなど、芦原氏のケアに努めた。

2024.1.27 18時ごろ 原作者から、「思いは果たしたので、予期していなかった個人攻撃となったことを詫びるコメントを出して、投稿を取り下げることになった」との連絡。上司は、削除はかえって炎上が進むこともあり得るとして制止するように言うとともに、すでに全社マターになっているとして、担当者だけで判断しないように強く指示。週明けの会議に備えて「経緯説明書」を用意。

2024.1.28 16時過ぎ 原作者は謝罪コメントを出して、X の投稿を削除、ブログ閉鎖、以後連絡取れず

2024.1.29 原作者死亡判明

 

やはり、これまでの経過を見ると、改変対応で心身共に疲弊しきっていたところへ、脚本家のインスタでさらに傷ついた姿が、両報告書からわかります。でも、「アンサー」を送信し、世間の反応に責任を感じたのが、最後のとどめになったと思います。(それも、に書きました)

 

この、最後の、SNSに関する小学館とのやりとりが、こんだけ密だったことを見ても、なんとかなりませんでしたのか?と思うばかりです。というより、こんだけ密だったのに・・・。という気持ちです。原作者を守るということは、そういうことではないのでしょうか。

 

日テレの報告書で、脚本家があの問題のインスタ投稿を止められなかったことを知り、問題だと思いましたが・・・・小学館はその点でもっと罪が重いのでは?つまり、「会社ぐるみ」で、あのブログを世に放ったということが。

 

 

原作改変(改悪)については、小学館の報告書にいろいろ書いてありました。具体的に元の脚本が提示してあったわけではありませんが、脚本家の改変は、かなり、ひどかったと推測できます。

 

原作者は、最後は、ドラマの出来について満足していたと報告書には書いてありました。ということは、元脚本を軌道修正するのにかなりの労力と費やしたのでしょう。ほんとうに、大変なことだったと思います。

 

では、以下は、報告書前半部分の流れ等で、私がメモしておきたい部分を抜き書きしたものです。

 

2023.3.9(p13)

「日本テレビ社員Y氏は、キャスト候補者を増減しつつ、6人の脚本家候補、3人の監督候補を追記した企画書の修正版を社員A に送信した。なお本件脚本家はこの候補者には入っていなかった

 

2023.4.5(p14)

「日本テレビから脚本家候補者として本件脚本家ほか1名の提案があり、同氏の代表作リストも添えられていた。この時点では芦原氏は異論を述べず、その後同月19 日に本件脚本家に決まった。」

 

→先に出した6人は却下して、どうしてこの脚本家が選ばれたのか、興味がわきます。

 

2023.5.19((p17)

「芦原氏(略)の回答では「第2話プロット(5/10 版)」については偶然エピソードが多すぎる不自然さを指摘し、「第3話プロット(5/17 版)」については原作のエピソードの順番入れ替えで流れが悪くなっていると注意し、 さらに原作は「田中さんの頑なな心が、朱里や笙野達との小さくて大きなエピソードを順番に積み重ねる事によって、少しづつ溶かされていく様子を丁寧に描いてるつもりなんですが…」と原作におけるエピソードの順番が大切であることを説明し、「エピソード順番入れ替えて切り貼りする事で、キャラ達の絆が自然に深まって行く過程や、それぞれのエピソードの効果的な見せ方が邪魔されて、チグハグになってしまってる」と脚本家に注意を喚起した。すなわち、原作者としてエピソードの順番の入れ替えをしないよう脚本家に求めた。

 

→日テレの回答で「順番入れ替え」「切り貼り」などの表現があったのですが、原作者の意図(2番目の赤字部分)を読んで、やっとその意味がわかりました。また、このあとに、脚本家側が、朱里がダンスの道に進む案を出してきたことが書いてあります。それは日テレ報告書にも書いてあり、それはひどいと思ったことは書きました。

 

2023.6.9~10(p19)

芦原氏は、オリジナル部分は自分で書く考えを示し、同月9日、社員Bがその意向に基づき日本テレビ社員X氏に申し出て了解を得、翌10日にはさらに担当の日本テレビ社員Y氏との間でもオリジナル部分は芦原氏が詳細プロットもしくは脚本を書く方法で進めていくことの承諾を得た。」

 

→これは初耳と、思ったら、日テレの報告書(p30)にも、10月21日、原作者から日テレ側へのメールで「 最初にきちんと、終盤オリジナル部分は本件原作者があらすじからセリフまで全て書くと、約束した上で、今回この10月クールのドラマ化を許諾した。」とありました。

 

私の今までの認識では、原作者は、あまりに脚本家が出してくる脚本がダメすぎるのが続いて疲弊し、それで9、10話はもう自分が書く・・・という流れでした。が、そうではなくて、9、10話は原作者が書くと最初から決まっていたのですね。それを脚本家には全く知らせていなかったのですね。これは、日テレ側の大失敗と言えると思います。しかし、確かに、脚本家には言いづらいし、そんなことって前例はあるのでしょうか。

 

2023.6.9(p20)

「社員Aが翌 9 日、芦原氏に意見を聞いたところ、当時既に本件脚本家の脚本を信頼できないと感じていたと思われる芦原氏から(略)」

 

2023.7.16(p28)

「芦原氏は、まず「第 7 話プロット(7/10 版)」について、冒頭の朱里と小西の喧嘩場面で脚本家が挿入したセリフは相手の人格を否定する 無神経なもので、喧嘩する二人の関係を理解していないとして、原作どおりの言葉へ書き直しを求めたり、あるいは小西と進吾が飲むシーンについても言葉を端折らないでほしいと要望したりした。そして朱里のメイク大失敗こそ、これを解決する過程が感動を呼ぶ「旨味」であるのに、脚本で削除されていることが問題であるとも指摘した。」

 

2023.7.28(p29)

「日本テレビ社員Y氏は、「第7 話プロット(7/27 版)」を送 信したが、芦原氏は同プロットでは、田中さんの失敗メイクのシーンが単なる派手すぎるメイクという平板なものになっていたことから、当該俳優で漫画原作のようなコミカルなシーンができないのか、日本テレビ側に確認したいと述べた。これは本件漫画のテーマである「年齢の壁」の観点からは田中さんの老け顔が前提になるところ、キャスティング当初において俳優の美貌と年齢から懸念された点であったからである。日本テレビ側からは演技とメイクで対応できるとの説明を受けていた。

 

→だから木南さんは無理があったんだよね・・。

 

2023.9.5(p32~)

「9月5日には日本テレビ側が芦原氏の修正要請を理由を挙げて断るとともに本件脚本家が芦原氏の説明に拒否反応を示していると」

 

「第6話では、芦原氏が求めた、「サバランか」との田中さんの飲酒場所の質問セリフを情景から分かるという理由で採用しないこと、田中さんのダンスが社内で評判になったきっかけについては、芦原氏の意見に反対して 採用しないことを明言し、ダンス曲名称は専門家に確認したとしてマスムーディで統一するとの説明がされた」

 

→これが、原作者の意見を断った具体的な内容の一つですね。

 

「そして本件脚本家にむけたメッセージ〘修正について〙で、芦原氏は、 監修者として漫画とドラマは媒体が違うので、ドラマ用に上手にアレンジするのがベストであることは理解している。全てお任せして「ああなるほどそうくるのか!面白い!」と思える脚本が読めるなら、一番良いが、「ツッコミどころの多い辻褄の合わない改変」がされるなら、しっかり、原作通りの物を作ってほしい。脚本で100 点を目指すのはもう無理だと思うので、演技や演出力で、なんとか 80~90 点に、引き上げて欲しい。ベストは無理だと判断したので、限りなく全力でベターを目指して欲しい。と一層の努力を求め、原作者として「作品の根底に流れる大切なテーマを汲み取れない様な、キャラを破綻させる様な、安易な改変」は、作家を傷つけることをしっかり自覚して欲しいと要請しつつ、役者スタッフ等多数人の労苦に感謝しており、「闇雲に原作を変えるな!と主張しているわけではなく、よりよいドラマになるように、自分を守るために、現段階でできるベストを尽くしているつもり」と結んで本件脚本家の理解を期待した。」

 

→こりゃきついね。脚本家は、やる気なくすね確かに。こんなの読まされたら。でも、そうとう酷かったのでしょう。どうりで、原作者からの文章はきつすぎて読めないから、咀嚼(消化だっけ?)して伝えてくれって、脚本家がプロデューサーに言ったわけだね。よいものを作りたいというきもちはわかりますが、双方のディスコミュニケーションが問題でした。

 

 

 

どうすれば原作者が自殺しなかったか(判断ミス今後の再発防止のために)

 

【1】原作者は、ドラマ化を承諾しなければよかった。=しかし、そうしたら、このすばらしい「セクシー田中さん」という物語を、私は知ることができなかった。

 

【2】脚本家に、ベテランでプライドのある脚本家ではなく、新人か「書き起こしロボット」のような脚本家を使えばよかった。こりゃだめだと感じた時点で、原作者の権利として、交代させればよかった。それを小学館が行使すればよかった。

 

これが、私の考えるベスト策です。

 

【3】最初の段階で一度会うか(原作者が、メールやり取りの方がいいと言って拒んだ)、クレジット問題が発生した時会うか(脚本家側に丸め込まれるのを避けるため、小学館が会わないほうがいいと原作者に助言、会わないことになった)しておけばよかった。やはり、顔を見て会話すれば、いくら、罵詈雑言の世界になったとしても、こんな多数の伝言ゲームよりはましだったと思う。

 

【4】日テレが、脚本家のインスタ投稿をなんとか止めればよかった。(ただし、インスタというのは、他人が止めることが難しい種類のものだと思う)

 

【5】小学館が、原作者の反論ブログをなんとか止めるか、代替策とした発信を会社名ですればよかった。(これについては、冒頭に書きました)