- 舞姫 (集英社文庫)/集英社
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「舞姫」、「普請中」、「妄想」、「雁」の四作が収められている。
「舞姫」は、オビに「格調高き悲恋の物語」とあったが、悲恋のようには感じなかった。
解説に"裏切り"の物語とあるが、そちらに近いと思う。
あたかも運命に切り裂かれたかのように語られているが、
豊太郎がレールを踏み外せない人間であっただけで、
本当にエリスを愛していたならどうとでも行動できたはずだ。
相沢を憎むではない、引き裂いたのは自分自身だ。
「普請中」の中に出てくる女性はエリスがモデルであろうか。
私が「舞姫」を読んで持った感想からは同一人物のように思う。
…と、前半二作には良い印象を持たなかったのであるが、あとの二作が良かった。
「妄想」
生というものを考える。自分のしている事が、その生の内容を充たすに
足るかどうかだと思う。(54)
日の要求に安んぜない権利を持っているものは、おそらくはただ天才ばかりであろう。自然科学で大発明をするとか、哲学や芸術で大きい思想、大きい作品を生み出すとかいう境地に立ったら、自分も現在に満足したのではあるまいか。自分にはそれができなかった。(75)
別荘の真似事で建てた小家で余生を暮らしながら、さまざまな回顧をしつつ生と死について考えるもの。
生かされていること、と生きること、は違うと思う。
「雁」は、四作のなかで一番とっつきやすい作品だと思った。
好青年岡田と美人のお玉の、恋とも言えないような恋物語がベースに書かれている。
お玉は末造の妾として囲われているのだが、ある日出逢った岡田に恋をする。
岡田と親密に語りたいと願ったその日、釘一本、の話に出てくる釘ように青魚の味噌煮が運命を動かすことになる…
解説にもあったが、「舞姫」と「雁」は、男が女を不幸にする話だと捉えても良いと思う。
特に「雁」は、何一つ不自由しそうにない器量の女が、男に騙され市場価値としての傷ができることで他の女のように嫁に出ることが難しくなっている。
彼女は不幸に身を任せて耐え、運命を怨みながらも甘んじるのだ。
恐らくこれが女のあり方だったのかと思うと胸が痛い。
『舞姫』は、この作品を載せる順序がとても上手いと思った。
好みにも拠るのだろうが、続けて鴎外、もしくは漱石を読もうかという気持ちになった。
