舞姫 (集英社文庫)/集英社
¥330
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「舞姫」、「普請中」、「妄想」、「雁」の四作が収められている。

「舞姫」は、オビに「格調高き悲恋の物語」とあったが、悲恋のようには感じなかった。
解説に"裏切り"の物語とあるが、そちらに近いと思う。
あたかも運命に切り裂かれたかのように語られているが、
豊太郎がレールを踏み外せない人間であっただけで、
本当にエリスを愛していたならどうとでも行動できたはずだ。
相沢を憎むではない、引き裂いたのは自分自身だ。

「普請中」の中に出てくる女性はエリスがモデルであろうか。
私が「舞姫」を読んで持った感想からは同一人物のように思う。



…と、前半二作には良い印象を持たなかったのであるが、あとの二作が良かった。
「妄想」


生というものを考える。自分のしている事が、その生の内容を充たすに
足るかどうかだと思う。(54)


日の要求に安んぜない権利を持っているものは、おそらくはただ天才ばかりであろう。自然科学で大発明をするとか、哲学や芸術で大きい思想、大きい作品を生み出すとかいう境地に立ったら、自分も現在に満足したのではあるまいか。自分にはそれができなかった。(75)


別荘の真似事で建てた小家で余生を暮らしながら、さまざまな回顧をしつつ生と死について考えるもの。
生かされていること、と生きること、は違うと思う。



「雁」は、四作のなかで一番とっつきやすい作品だと思った。
好青年岡田と美人のお玉の、恋とも言えないような恋物語がベースに書かれている。
お玉は末造の妾として囲われているのだが、ある日出逢った岡田に恋をする。
岡田と親密に語りたいと願ったその日、釘一本、の話に出てくる釘ように青魚の味噌煮が運命を動かすことになる…

解説にもあったが、「舞姫」と「雁」は、男が女を不幸にする話だと捉えても良いと思う。
特に「雁」は、何一つ不自由しそうにない器量の女が、男に騙され市場価値としての傷ができることで他の女のように嫁に出ることが難しくなっている。
彼女は不幸に身を任せて耐え、運命を怨みながらも甘んじるのだ。
恐らくこれが女のあり方だったのかと思うと胸が痛い。



『舞姫』は、この作品を載せる順序がとても上手いと思った。
好みにも拠るのだろうが、続けて鴎外、もしくは漱石を読もうかという気持ちになった。

キッチン (角川文庫)/角川書店
¥420
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「キッチン」、「満月」、「ムーンライト・シャドウ」の三編が収録。
共通するのは、親しいひとの死に直面した人びとが描かれていること。

吉本ばななはたぶん、自分の大切にしたいものを自分の大切にしたい仕方で大切にして、愛していると思う。
題材はすべてひとの死。
それはこうも前向きに「克服」できるのかどうかわからないし、「克服」したことが「成長」なのかもわからない。そしてそれが美しいのかも。
ただ、物語のなかでの彼女たちも、大切にしたいものを大切にしたい仕方で大切にしている。
死ではない、もっと身近なものに置き換えて読むと、そのまっすぐな姿勢にぐっとくるひとはぐっとくる…のではないだろうか。

特筆すべきはその文体。
詩を読んでいるようとよく評されるのが理解できる。
ですます調とである調の嫌味ない溶け合わせ方、そして句読点の使い方、それは独特で、そうさせるのは彼女の才か、それとも度重なる推敲の賜物か。
彼女の作品に影響を受けた作家も多いのではないかと思う。
私が読んだ中では、島本理生が近いように感じた。
繊細に日常を切り取る傾向、作品全体に流れる透明感。
好みの問題ではあるが、私が敬遠しているジャンルだ。

しかし、その独特の空気感がいやではないので、人間の生きる道を生きたい、といった気分のときに読むと良いかなと思った。



…それでも疲れました。
硬質な文章で書かれた、ずっしり重たいものが読みたいです(笑)

夜の仕事も辞めて、
今、のんびりアパレル一本。
本を読む時間が増えて幸せです。

転職をしようかなぁ、と、動いてるところ。
どうなるか分からないけど

なんとかなる、と思えるのは
きっと歳を取った証拠w



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