海ねこ症候群 第6回本公演
『海月〜いつか編〜』
2024年8月29日(木)~9月1日(日)
王子スタジオ1
脚本:坪田実澪 演出:作井麻衣子
舞台監督:加藤葉月
音響:大嵜逸生(くによし組)
音響操作:胡桃澤梨絵
照明:中村仁(黒猿)
宣伝美術:古戸森陽乃(かるがも団地)
ゲネプロ写真:コトデラシオン(十六夜基地)
特別協力:モダンスイマーズ、西條義将、しみずあかり
制作:海ねこ症候群
出演:
村上桜佳(ノリ)
河合陽花[海ねこ症候群](サチエ)
佐神寿歩(ミヅキ)
作井麻衣子[海ねこ症候群](フミ)
STORY
ノリの部屋に集まる女たち。酒を交わし、たわいもない話をし、学生時代と変わらず楽しい時間を過ごしていた。そんな中、ノリがあるものを取り出し…。【当日パンフレットより】
佐藤佐吉演劇祭2022関連企画《見本市》において上演された短篇作品のリメイク。高校時代を描く【いつも編】と大人になってからの【いつか編】に分けて交互上演。
基となった短篇は《見本市》の際に観ているので、ノリ以外の3人が実は…ということは分かってはいたのだけど、前半はごく普通のガールズトークが繰り広げられる。
お互いの恋愛事情(サチエのみ既婚者で2児の母、ミヅキは合コン三昧、ノリには3年付き合っている恋人がいるなど)を話した後、調香師をしているノリが持ってきたのが3本のオリジナル香水。1つは彼女たちの地元の海の匂いがし、もう1つはサチエの柔軟剤の匂い、残る1本がフミの匂い(ミヅキは開発中)。
ノリが匂いを作る上で友人たちの指を切ったという話をし始め、冒頭の「指を切った」という彼女の発言が誤って自分の指を切ってちょっと血が出たというレベルの話ではないことが見えてくる。
東日本大震災から13年、人々の記憶は薄れつつあっても今なお時間が止まったままの人もいることであろう。友人たちの香水を作るノリは、思い出も瓶の中に閉じ込めようとしているかのようだ。
それでも友人たちと海にドライブに出かけて容器を投げ捨てた後、「結婚しない?」と恋人に電話をするノリの言葉には未来に向かって大きな一歩を踏み出そうとする決意のほどが感じられて胸に響いた。
若松英輔さんが著書でよく書かれているけど、人は死んでもなお生き続ける。きっと香水なんて作らなくてもサチエ、ミヅキ、フミの3人はいつでもノリを見守っているし、ノリも3人の存在を近くに感じながらこれからも生きていくのであろう。
坪田さんが仙台市、河合さんがいわき市出身ということは《見本市》の記事にも書いたけど、作井さんは石川県の出身。作井さんも当日パンフレットの挨拶で書いているように、ホント、いつどこで何が起きてもおかしくないよなぁ……(今も現在進行形で台風が被害をもたらしているけど)。
上演時間55分。