『ガチゲキ!!復活前年祭』【伏線編】 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『ガチゲキ!!復活前年祭』



2024年8月8日(木)〜18日(日)

アトリエ春風舎


舞台監督:稲元洋平
音響:大嵜逸生(くによし組)、深澤大青
音響操作:ワタナベユウタ(株式会社K-works)
照明:瀬戸あずさ(balance,inc.DESIGN)

照明操作:森山紗貴、武田弓果
統括:前原麻希(趣向) 宣伝美術:郡司龍彦
制作:類家アキヒコ 制作補佐:タナバタカナリア
HP製作:斧口智彦(Theatre 劇団子)

企画制作:『ガチゲキ!!』実行委員会


劇団だるめしあん

「ラブイデオロギーは突然に」


作・演出:坂本鈴

出演:

田実陽子(脚本家・杉原美咲)
小泉まき[中野成樹+フランケンズ](原作者・藤井リカ)
陽向さとこ[エアフォルク企画](ヒロイン・雨宮桜子)
勝沼優[ブルーエール](ヒーロー・矢吹和也)
木内コギト[\かむがふ/](塾講師・佐伯啓介/和也の友人/ドラッグの売人/パーティー会場のウェイター)
菅野貴夫(元テレビプロデューサー・櫻庭哲平/桜子の父・雨宮秀俊)
近藤陽子[劇団AUN/劇団晴天](和也の元カノ・柴崎小雪)
坂井和美(桜子の友達・岩瀬あかり)


STORY

20年のキャリアを誇る脚本家・杉原美咲。デビュー作はケータイ小説『あまこい』のドラマ化で、元テレビプロデューサー・櫻庭のYouTubeチャンネルにゲスト出演した美咲はその時の苦労を語る。一方、『あまこい』の原作者・藤井リカはシングルマザーとなって九州のシェアハウスで暮らしていたが、娘に教えられてその動画を見る。『あまこい』の主題歌「スローモーション」をモチーフにしたドラマが月9で放送されることになり、上映会に出席した美咲とリカは顔を合わせる。その時、地震が発生し、シャンデリアが2人の頭上に落ちてくる。


くによし組

「重い愛」


作・演出:國吉咲貴

出演:

國吉咲貴[くによし組](トーチカマメミ)
永井一信[くによし組](夫・トーチカ大輝)

荒波タテオ[popchicfactry](マメミの後輩・荒波)


STORY

マメミと大輝の間に生まれたダイズは出産時の体重が4100グラムで日に日に体重を増していく。姉からの電話に悩まされ、床が沈んで下の住人・青木に迷惑をかけていないかを気に病み、夫がタバコという女性と連絡を取っていることに苛立つ。そんな中、マメミは自分に思いを寄せていた高校の後輩・荒波に「不倫したことありますか」と問いかける。


松森モヘーの小竹向原ボンバーズ

「熱海占い学園伝説からくり人形殺人温泉」


作・演出:松森モヘー

出演:

遠さなえ(遠藤あゆみ/部長の部下・なぎさ/脱出ゲーム参加者・山崎 他)

小嶋直子(あゆみの母・ももえ/月9の妖精/脱出ゲーム参加者・江頭 他)
佐藤昼寝[昼寝企画](刑事・石坂シィンベエ/たつろう/名探偵の孫・東麻生原 他)

加藤睦望[やみ・あがりシアター](あゆみの担任・吉田先生/通行人B/医者/警視庁部長刑事/脱出ゲーム参加者・森永/通行人1/友達1/先生2/園田さん/リコーダー 他)

松森モヘー(転校生/通行人 他)


STORY

熱海占い学園に通うあゆみのクラスにある日、転校生がやってくる。超能力があるという転校生によって姿を消されてしまうあゆみ。母・ももえは担任に相談するも埒が明かず、失踪した娘を必死に捜す。


2011年と2014年に開催された演劇イベント「ガチゲキ」が来年復活するのに合わせた前年祭。

今回の共通テーマは「月9」で、劇団だるめしあん、くによし組、松森モヘーの小竹向原ボンバーズの3組が参加。前期3日間は〈伏線編〉として3組が30分ずつの短篇を上演。


〈伏線編〉ということではあったが、これ単体でも充分に楽しめるものだった。

先頭バッターは劇団だるめしあん。こちらはお初。

周囲に箱馬が立てて置かれ、出番待ちの役者はそこに着席。中央に櫻庭と美咲。

ケータイ小説を原作にしたドラマ『あまこい』は、合併問題に揺れる地方都市が舞台。仲の悪い隣町同士でまったく異なる境遇に育った桜子と和也が七夕の夜に運命的な出会いをして真実の愛にたどり着くまでを描く。

その話を通して、ケータイ小説の8つの大罪(性暴力、ドラッグ、妊娠、不治の病等)について語りつつ、決してケータイ小説そのものを否定している訳ではない。「おっさん(文豪)の妄想では少女たちの心は救えなかった」というのは確かにそうだよなぁ。

最後はダンスで終わりかと思いきや、美咲とリカが『あまこい』の世界に転生。いちばん続きが気になったのは本作。


続いてくによし組。

3組の中ではいちばん月9要素少なめで(マメミが「月9みたいな恋したかった」と言うぐらい)のっけから何だか不穏な空気が漂う。

中央に白い布で囲まれたベビーベッドが置かれているのだけど、マメミが持ち上げられない赤ん坊の世話をするために覗きこんでいる姿を見ると、今にも底のない井戸に落ちるかのように見えてきてしまう。終始聞こえてくるきしむ音が何とも不気味。

今回上演されたのは第二幕だとか。名前のみしか出てこなかった3人がどう関わってくるかも含めて、展開が予測できない。


トリは松森モヘーの小竹向原ボンバーズ。2024年結成で2024年解散。ちなみに小竹向原はアトリエ春風舎の所在地。

もうタイトルからしてごちゃまぜ感があるが、時折、本人役に戻ってモヘーさんが役者陣にダメ出しされつつ、物語を修正しようと試みる。中では「白鳥の湖」をバックにしての『熱海殺人事件』パロディがよかった。

戦隊モノよろしくメンバーカラーが配された声の大きな5人組が期待通りの全力投球。中でも加藤睦望さんのいつも以上に表情豊かで素晴らしかった。

もうこれだけでも充分満足だけど、〈ネタバレ編〉も楽しみ。


上演時間1時間28分(だる36分、くに25分、松森27分)。