ENBUゼミナール『緩やかで無情な景色』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

ENBUゼミナール2023年度演劇公演

『緩やかで無情な景色』



2024年3月29日(金)〜31日(日)

「劇」小劇場


作・演出:福名理穂(ぱぷりか)

舞台監督:安田美知子 舞台美術:泉真

照明:山内祐太

音響:佐藤こうじ(Sugar Sound) 

宣伝美術監修:ヒラザワタケル

フライヤーデザイン:もふみ

宣伝美術協力:金子裕美 宣伝写真:鈴樹けん

制作:永野和哉、野々村紗香

主催・企画制作:ENBUゼミナール


演出助手:尾鷲翔子、半田大介、ヒラザワタケル、三重野広帆

衣装:おさきこたろう、齋河未帆、筒井詩菜

小道具:丑野つらみ、岡よしの、永野りん

広報:高山宗一郎、本間ゆうき、おさだゆみこ、米田マナ海、蓬莱一斗

稽古スケジュール:鵜飼彩郁、佐伯浩司

当日運営:斉藤遼太郎、小林瑠衣、鈴木ゆき、富沢朱夏、野崎紗矢、信國ひろみ


出演:

【隣人】

筒井詩菜(隣人・笠井陽奈)

おさきこたろう(同・大門太一)

【管理人】

三重野広帆(智美の息子・黒木義則)

おさだゆみこ(義則の母、管理人・黒木智美)

【被害者の同級生】

鵜飼彩郁(陽奈の友人・上野風子)

【立川の家族】

佐伯浩司(智美の弟・大野満)

齋河未帆(満の娘・大野小春)

蓬莱一斗(満の息子・大野悟)

高山宗一郎(満の同僚、加害者と知り合い・増田光平)

【占い師】

丑野つらみ(四柱推命・雪柳)

本間ゆうき(タロット・ティアラ真樹)

永野りん(霊視・メメントモリ凛)

【演劇集団】

岡よしの(主役・原夕奈)

ヒラザワタケル(犯人役・角田一)

尾鷲翔子(友達役・丸子重美)

米田マナ海(占い師役・森笑実)

鈴樹けん(父役・橋本譲)

半田大介(脚本家、演出家・玉田又)


STORY

ある大雨の日、新宿のマンションの一室で若い女性俳優が殺害される事件が起きる。被害者と知り合いだった演出家の玉田はこの事件を舞台作品として上演するべく、隣人カップル、管理人親子、占い師ら関係者に取材を敢行。稽古が始まり、台本が完成しない中、殺害シーンを入れるかどうかで議論となる。


ENBUゼミナールの卒業公演。2012年度の卒業生であるぱぷりかの福名理穂さんが作・演出を務める。


舞台奥にはボックスが積み重ねられ、上手に行くほど高くなっている。上手の一部はハンガーをかけるスペース。手前には円形テーブルと椅子。


冒頭、雑踏の中、行き交う人々が登場し、やがて雨が降ってくる。そこから、陽奈(ひな)が誰かの質問に答える形のやりとりが始まり、どうやら隣の部屋で人が殺される事件が起きたことが知らされる。最初は警察の事情聴取なのかとも思ったけど、次々に話をする人が変わっていくうちにこれがインタビューであり、聞き手はこの事件を舞台で描こうとしている人物(玉田)だということが分かってくる。


後半はその劇団員同士でのやりとりがメインとなってくるが、被害者である女性俳優が犯人に絞め殺されるシーンをめぐって議論が繰り広げられる。このあたりはかなり見応えがあったが、演劇を作ることは楽しいことばかりじゃない、時には意見が対立することもあるし悩み、傷つくこともある。また、こうしたセンティティブな題材を扱う際は特にしんどい思いをすることもあるだろう。

今回の卒業生(という呼び方でいいのかな)が演劇を続ける人ばかりではないと思うが、もし続けるのだとしたら、その覚悟は出来てる?と福名さんが問いかけているようにも思えた(そしてその問いかけは演劇に関わっているすべての人に対して有効だろう)。

題材的には2015年に中野区で発生した劇団員殺害事件を想起してしまうが、個人的に数日前にこの事件のことを思い出していたところだったので図らずもタイムリーな観劇となった。


キャストでは陽奈役の筒井詩菜さんがとても落ち着いていて、物語の導入部という重要な役割をきっちりと果たしていた。


上演時間1時間28分。