『ヴェルクマイスター・ハーモニー』(タル・ベーラ監督) | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『ヴェルクマイスター・ハーモニー』

WERCKMEISTER HARMÓNIÁK


2000年ハンガリー・ドイツ・フランス映画 145分
脚本・監督・製作補:タル・ベーラ
共同監督・編集:フラニツキー・アーグネシュ
原作・脚本:クラスナホルカイ・ラースロー
撮影監督:メドヴィジ・ガーボル
音楽:ヴィーグ・ミハーイ

出演:
ラルス・ルドルフ(ヴァルシュカ・ヤーノシュ)
ペーター・フィッツ(エステル・ジェルジ)
ハンナ・シグラ(妻エステル・トゥンデ)
デルジ・ヤーノシュ(太陽・コートの男)、ジョコ・ロシック(地球・ウェスタンブーツの男)、タマス・ヴィクマン(月・水兵帽の男)、パウアー・ギュラ(居酒屋店主ハーゲルマイヤー氏)

STORY
ヴァルシュカ・ヤーノシュは、天文学を趣味に持つ、郵便配達だ。彼は靴職人の工房に部屋を借りている。仕事と家の往復の中、老音楽家エステルの世話をするのが日課となっている。エステルは、ピアノのある部屋で、口述の記録を続けている。それは、“ヴェルクマイスター”という18世紀の音楽家への批判のようにも聞こえる。そんな、ある日、街角に1枚の張り紙が…。“夢のよう!”“自然界の驚異!”“世界一巨大なクジラ!”“ゲストスター、プリンス!” そして、夜の街を、巨大なトラックがゆっくり通り過ぎた。エステル夫人が、ヤーノシュを訪ねて来る。「風紀を正す運動に協力するように、エステルを説得して」彼女は何かに取り憑かれるいるかのようだ。広場に何かが来ているという噂を耳にし、ヤーノシュは広場に向かう。広場には、トラックとそれを取り囲むように、数え切れないほどの住人達がいた。トラックの荷台が開く。木戸銭を払い、乗り込むヤーノシュ。そこで目にしたのは、“クジラ”だった。不気味に光るクジラの目。ヤーノシュは、それに魅了される。また、潜り込んだトラックの中で目にする“ゲストスター、プリンス”の影。彼らの目的は何なのか? どこから来て、どこへ向かうのか? そんなヤーノシュをよそに、街中の何かが歪み始める。いたるところで、炎が上がり、爆発が起こり、群衆が集まる。街中に“破壊”が充満する。群衆が向かったの病院だった。そこで彼らが見たものは…。ヤーノシュは、破壊されつくした街を徘徊する。戦車が動きまわり、廃墟がひろがる。ヘリコプターに追跡されるヤーノシュ。なぜ? どうして? エステルが、病院のヤーノシュを見舞っている。言葉が消えたヤーノシュ。エステルは広場に向かう。そこには、あの“クジラ”だけが横たわっていた。その“目”ですべてを見ていたかのように。【公式サイトより】

『倫敦から来た男』のタル・ベーラ監督の旧作。

本作でもシンプルなクレジットに始まり、長回しが続くのは新作と同じ。
しかも本作は2時間30分近くありながら、ショットの数は37(Wikipedia英語版によれば39)しかない。製作に4年かかったということだが、それだけ1つ1つのショットに神経を配っているということだろう。

正直、『倫敦から来た男』ほどはのめり込めなかったのだが、それはストーリーが新作に比べて抽象的ということもあるかも知れない。
冒頭、居酒屋にやってきたヤーノシュが男たちを太陽、地球、月に見立ててそれぞれの動きを説明する。言わばここで彼は秩序を作っているわけだが、次第に混乱と破滅が街を包み込んでいく。
その象徴となるのが巨大な鯨。
聖書では神聖な魚とされている鯨(実際に鯨という言葉は出てこないが)が広場に横たわっている姿は、神の死、信仰の死、すなわちこの世の破滅をも意味している。

そんなことを漠然と感じ取ったが、到底充分な理解ができたとは思えない。
今一度じっくり1つ1つのシーンを検証しながら観てみたいという気にさせられる。そのためにも、出来ることなら本作のDVD再販、更には7時間半に及ぶという代表作『サタンタンゴ』のDVD化も望みたいところだけど…。