『窓ぎわのトットちゃん』(八鍬新之介監督) | 新・法水堂

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『窓ぎわのトットちゃん』

Totto-Chan: The Little Girl at the Window


2023年日本映画 114分

監督・企画・脚本・絵コンテ:八鍬新之介

製作・ナレーション:黒柳徹子

原作:『窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子(講談社刊)

共同脚本:鈴木洋介

キャラクターデザイン・総作画監督:金子志津枝

イメージボード:大杉宜弘、西村貴世

車輌設定:和田たくや 美術設定:矢内京子

美術監督:串田達也 色彩設計:松谷早苗

撮影監督:峰岸健太郎 編集:小島俊彦

音響監督:清水洋史

音響効果:倉橋静男、西佐知子

音楽:野見祐二

主題歌:「あのね」あいみょん


声の出演:

大野りりあな(トットちゃん・黒柳徹子)

役所広司(校長・小林先生(小林宗作))

小栗旬(パパ・黒柳守綱)

杏(ママ・黒柳朝)

松野晃士(泰明ちゃん・山本泰明)

滝沢カレン(大石先生)

三浦あかり(ミヨちゃん・小林みよ)、三田一颯(高橋くん)、小野桜介(泰ちゃん・山内泰二)、山田忠輝(右田くん・右田昭一)、斎藤潤(大栄くん・大栄國雄)、織田碧葉(天寺くん)、西光星咲(サッコちゃん・松山朔子)、弘山真菜(税所さん・税所愛子)、落井実結子(青木さん・青木恵子)、石川浩司(自由が丘駅の駅員)、ダニエル・ケルン(指揮者・ローゼンシュトック)、駒田航(チェロ奏者・齋藤秀雄)、園崎未恵(赤松小学校の先生)、加納千秋(泰明の母)、菊池通武(チンドン屋)、小玉雄大(同)、青木崇(同)


STORY

落ち着きがないことを理由に、小学校を退学になってしまったトットちゃん。新しく通うことになったトモエ学園の校長先生は、出会ったばかりのトットちゃんに優しく語りかけた。「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」トットちゃんの元気いっぱい、すべてが初めてだらけの日々が始まるーー【公式サイトより】


黒柳徹子さんの大ベストセラーをアニメ映画化。奇しくも黒柳徹子さんは午前中に観た小津安二郎監督『出来ごころ』公開の1933年生まれ。


これまでアニメ化されていなかったのが意外という感じもするが、今更というよりも今だからこそと感じられる作品だった。

原作は子供の頃、実家にもあったので読んだ記憶があるが(黒柳朝さんの『チョッちゃんが行くわよ』とともに)、小学校を退学させられたというエピソードが強烈。

そんなトットちゃんを受け容れるのがトモエ学園。校長の小林先生がトットちゃんの話を全部聞くという出だしからして素晴らしいのだけど、いやホント、トモエ学園がなかったら今の黒柳徹子さんはないと言っても過言ではないのでは。

古い電車の車両を教室にしたり、決まった時間割があるわけではなく、どの勉強をするかは自由だったり、まるでトットちゃんのために作られたような学校で、トットちゃんは何をしても叱られない(その分、生徒に無神経な発言をした大石先生が小林先生に叱責されるシーンが印象に残る)。

そんな中で小児麻痺のため手足の自由が聞かない泰明ちゃんと親しくなるトットちゃん。プールに入ったり木に登ったり、かなりハラハラもさせられるけど、こういう別け隔てのないところがトットちゃんのいいところ。泥だらけになった服を見て、泰明ちゃんの母親が泣くシーンがたまらなくよかった。

戦争が近づくにつれ、母親は警察に華美な服装を慎むように言われたり、弁当も炒った大豆だけになったり、と生活も苦しくなってくる。更には建物疎開で赤い屋根の黒柳邸が取り壊され、空襲でトモエ学園が全焼。「今度はどんな学校を作ろうか」とつぶやいたという小林先生、どこまでも凄い人だな…。


客席は子供からお年寄りまで、これまで見たことがないほど幅広い客層。中には三世代で観に来ていた人たちもいて、これだけでもこの映画が作られた意義があると感じた。