演劇ユニット鵺的『天使の群像』 | 新・法水堂

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演劇ユニット鵺的第十七回公演

『天使の群像』



2023年12月21日(木)〜29日(金)
ザ・スズナリ

脚本:高木登
演出:小崎愛美理(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)
舞台監督:田中翼、伊藤新
アンダースタディ:今井勝法(theater 045 syndicate)
演出助手:石塚貴恵
照明:阿部将之(LICHT-ER)
音響:平井隆史(末広寿司)
Sound/noise/music/composer:北島とわ(Portowal birch)
舞台美術:荒川真央香
宣伝美術:羽尾万里子(Mujina:art)
webデザイン:成川知也
衣装:髙木よしこ
舞台写真撮影:石澤知絵子
ビデオ撮影:小崎愛美理、浪谷昇平、江口嵩大、寺島麻美、周浩田
監修:古池秀(東京弁護士会)
制作:J-Stage Navi(島田敦子、早川あゆ)
制作協力:塩田友克 賄い方:山本かおり
企画協力:contrail(加瀬修一)

出演:
堤千穂[演劇ユニット鵺的](臨時的任用教員・道原さとみ)
山像かおり[西瓜糖](学校長・諸星三津子)
佐瀬弘幸[SASENCOMMUN](教頭・荒木伸三)
森田ガンツ[猫のホテル/なかないで、毒きのこちゃん](二-A担任、地理歴史科・前田義朗)
本井博之(二-C担任、英語科・稲川昭)
小西耕一[Straw&Berry](二-B前担任、国語科・戸部圭一)
とみやまあゆみ[演劇ユニット鵺的](スクールカウンセラー・高梨一恵)
井神沙恵[モメラス](養護教諭・星野多恵子)
渡辺詩子[SPARKO](スクールロイヤー・松川涼香)
小町実乃梨(生徒(学級委員)・真鍋紫乃)
野花紅葉[モミジノハナ](生徒・中島朱羽)
吉水雪乃[風雷紡/コマイぬ](生徒・今野藍)
函波窓[ヒノカサの虜](生徒・相月琢磨)
ハマカワフミエ(道原の元担任・霜澤樹子)
寺十吾[tsumazuki no ishi](保護者・村田和夫)

STORY
学校嫌いながら教員免許を取得していた道原さとみは、勤めていた商社が倒産の憂き目に遭い、高校の臨時的任用教員として働き始める。さとみが受け持つ二年B組では生徒同士のトラブルで村田という生徒が不登校になり、前担任の戸部圭一が休職に追い込まれていた。村田に告白された学級委員の真鍋、彼女をサポートする今野、何かと反抗的な態度を取る中島、お調子者の相月といった生徒が出迎える中、同じ二年生の他クラスの担任や、同い年のスクールカウンセラー・高梨、養護教諭・星野の助けも得ながら何とか教員の仕事をこなしていく。そんな矢先、村田が自分の部屋から失踪。戸部やスクールロイヤーの松川を交えて臨時の職員会議が開かれるが、そこでさとみたちが相談のためにカラオケボックスに行ったときの写真が村田家のポストに入れられていたことや学活でのさとみの発言がネット上にアップされていることが知らされ、教頭の荒木は中島に疑いの目を向ける。

高木登さんの新作を小崎愛美理さんが演出。

舞台は上手手前がやや高く傾斜がついていて、奥にミラー状の壁がまっすぐに一枚、その隣に前傾した同様の壁が角度をつけて並ぶ。
開演時、ランダムに椅子が並べられていたのが客席通路から現れたキャストが1つずつ持ち去り、客席最前列に椅子を置いて着席。そこにいるキャストは時折、クラスメイトとして台詞を発する。

学園モノではあるが、そんじょそこらの学園モノではないのが鵺的的(ややこしいな)。まず主人公となる教師・道原さとみが元々学校嫌いだったという設定が面白い。熱血教師とは違い、学活でも何をすればいいか分からず、自己紹介にも戸惑う。
さとみは着任早々、不登校になっていた村田という男子生徒が失踪するという騒ぎに巻き込まれる。しかもどうやら男手一つで息子を育ててきた父親はかなりクセのある人物らしい。
さとみ、スクールカウンセラーの高梨、養護教諭の星野が相談のためにカラオケボックスに行った写真を村田家のポストに入れたり、学活でのさとみの発言がSNSにアップされたりする中、教頭は中島という女子生徒を疑うが、実際は村田に告白された真鍋の仕業らしいことが見えてくる。
さとみは真鍋と話をしようと呼び出すが、そこに現れたのは村田の父親。これもどうやら真鍋の仕業なのだが、とにもかくにも満を持して村田の父親との対決となる。
やはり相当屈折した人物であることが分かるのだが、もう少しかき乱して欲しかったというのが正直なところ(今回は演出ではなく出演に専念の寺十吾さんが雰囲気を醸し出してはいたが)。
また、さとみが学校嫌いになったのは小学校の時に担任・霜澤が失踪したことが原因で、さとみはその幻影と会話したりもするのだけど、その辺りもやや消化不良気味だった。

小崎愛美理さんの演出作品を観るのは、コロナ禍で無観客配信されたフロアトポロジー×ヒノカサの虜『君の様に鳥が啼く』以来(脚本は本作にも出演の函波窓さん)。
耳障りな音響を用いる演出は寺十吾さんも好んでやるけど、それは鵺的の伝統なんだろうか。それはともかく、舞台美術も効果的に用いられ、役者陣の好演もあって2時間半がさほど長く感じなかった。

キャストでは堤千穂さんが相変わらず絶妙な表情をするなぁと感心。目立つ生徒・中島役の野花紅葉さんもよかった。今後は森田ガンツさんを見るとカントリーマアムを思い出しそう。笑

上演時間2時間23分。