MCR『ぬけ男、恥さらし』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

MCR EXPO '23 W

『ぬけ男、恥さらし』



2023年12月6日(水)〜12日(火)
OFF・OFFシアター

作・演出:櫻井智也
舞台監督:門馬雄太郎、西山みのり
舞台美術:門馬雄太郎 照明:久保田つばさ
音響:葵能人(ノアノオモチャバコ)
当日運営:松本悠(青春事情)
宣伝美術:これでよしお 映像撮影:吉田雅人
web管理:松下哲

出演:
永井一信[くによし組](永井)
黒澤風太(ふうた)
櫻井智也[MCR](ふうたの父・櫻井)
伊達香苗[MCR](ふうたの母・カナ)
大石ともこ[みそじん](永井の妻・ともこ/ともこ先生) 
堀靖明(編集者・堀/堀先生)
上田房子[MCR](ともこの妹・房子)
加賀美秀明[青春事情](房子の夫・加賀美)
三瓶大介(ふうたの同級生・三瓶)
稲葉捺月(ふうたの同級生・稲葉捺月)
三澤さき(ふうたの同級生・三澤さき)

STORY
一部ではカルト的な人気を誇る小説家の永井は、妻のともこに働かせ、義妹の房子と加賀美の夫婦から借金を作る一方、5年間新作が書けないでいた。そんな彼が書き始めたのは、愛を持たない男の愛についてのお話『ぬけ男、恥さらし』で、担当編集者の堀が尽力するも出版の見込みはなさそうだった。小説の主人公・ふうたは子供の頃から愛というものが理解できず、母親を心配させる。高校生になり、捺月と交際するもうまくいかず、昼休みに校内でさきとセックスすると言い出して同じクラスの三瓶を戸惑わせる。そんな折、担任の堀先生が歯は親が危篤のためにしばらく不在となり、ともこ先生が代わりを務める。ともこ先生を見たふうたは言いようのない感情に襲われる。

再演2本を同時上演する「MCR EXPO '23 W」のうち、まずは『ぬけ男、恥さらし』。2013年初演。

下手の一角に和室。ちゃぶ台があり、永井が小説執筆に使用。残りのスペースは小説内世界で、椅子代わりの白い立方体が4つ。壁は格子状の模様。

愛を持たない男の愛についてのお話。
というわけで、小説を書いている永井とその小説世界の物語が並行して描かれていく。小説の主人公・ふうたには作者・永井自身が投影されているとのことで、子供の頃から愛というものが理解できないでいたふうたがやがて愛というものを知る。
こう書くと何だか高尚な雰囲気さえ漂うが、安心してください、はいて…じゃない、いつも通り、笑えますよ。特に小説世界の登場人物はテンションが高く、総じて女性陣が振り切っている。
終盤、永井が小説を書き始めた理由が明らかになっていくのだが、中では姉が入院したことを知った房子が義兄である永井に抗議に来るが、ひたすら小説を書こうとする永井の姿は胸に迫るものがあった(途中、房子が夫をビンタするシーンでは、客席から「すごーい」と驚きの声が。笑)。
前半で永井が妻に携帯電話を見られたことを恨みがましく言う点がちょっと整合性が取れない気がするし、なくてもいいのではと思ってしまったが、愛というちょっと気恥ずかしい題材を見事に作品として結実させていたと思う。

上演時間1時間37分。