フライングシアター自由劇場『仮面劇・預言者』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

フライングシアター自由劇場

『仮面劇・預言者』

MASQUE PLAY "THE PROPHET"


【東京公演】
2023年12月5日(火)〜12日(火)
高田馬場ラビネスト

原作:スワヴォーミル・ムロージェク「予言者」
翻訳:米川和夫
上演台本・演出・美術:串田和美
照明:齋藤茂男 音響:市來邦比古
衣装協力:中野かおる
舞台監督:成瀬正子、福澤諭志
制作:長谷川きなり、串田明緒
仮面・宣伝イラスト:串田和美
宣伝美術:GRiD CO.,LTD. 

出演:
井内ミワク(首相)
大森博史(預言者1/ボードビリアン)
真那胡敬二(預言者2/ボードビリアン)
近藤隼(東方の三賢者・キリガフ)
串田十二夜(東方の三賢者・カロネリ)
柳本璃音(東方の三賢者・パルネバ)
串田和美(首相の小使)

STORY
国民の不安を鎮めるべく預言者を呼ぶことにした首相。しかし、やってきた預言者は2人で瓜二つ。首相は三賢者に判断を求める一方、どちらなのかはっきりするまで小使に国民の気を惹くよう命じる。

オンシアター自由劇場の解散から27年、串田和美さんが再開する新たな自由劇場、旗揚げ公演。

背景にカーテンが描かれた幕。中央は出入口となっていて、奥の壁にバルコニーの手すりが見える。床の中央にはカーペットが敷かれ、左右両方に椅子が並ぶ。下手側には音響ブース、上手側のテーブルには小道具。天井と足元にはLED電灯。

原作者であるポーランドの劇作家・小説家のムロ―ジェクについては、筒井康隆さんの短篇「ムロジェクに感謝」を通じて名前だけは知っていたが、その作品には触れたことがなかった。そのため、今回の上演がどの程度、原作戯曲(白水社刊『現代世界演劇』8巻に収録されているもよう)を改変しているのかは分からないが、実に上質な喜劇を堪能したという思いを味わえた(ホットワインで温まりつつ)。

開場時から役者陣は舞台上を行き来しているのだが、開演時間になると井内さんと串田さんが、今日12月11日は「胃腸の日」だという話をし始め、漫才のようなやりとりを始める。実はこれが前説で、諸注意も交えつつ本篇へ。
ついでマイクの前に立ったのが三軒茶屋ならぬ三賢者。最初の段階では正体が明らかになっておらず、ドラゴンの話をしながら、歌も披露(十二夜さん、シンプルに歌がうまい)。
更に現れるのがボードビリアンのような男性2人。真那胡さんと大森さんが体がくっついた状態で出てきて、息がぴったり(笑)なところを見せるのが可笑しくて仕方ない。
その後、三賢者が仮面をつけてようやく(?)本筋が始まっていくのだが、瓜二つの預言者(真那胡さんと大森さん、背格好や白髪具合も似ているので本当に見分けがつかないほど)に翻弄される首相たちの姿を滑稽に描きながら、ブラックな笑いも含めつつ最後まで楽しませてくれた。

役者陣は出番のない時は左右の椅子に座っているのだが、特に串田さんは終始リラックスした表情で演技を楽しんでいるように見えた。
ポッと出の役者や演出家には出来ない、これぞプロの技を見せてもらった。

上演時間1時間28分。