KAAT×東京デスロック×第12言語演劇スタジオ『外地の三人姉妹』 | 新・法水堂

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KAAT×東京デスロック×第12言語演劇スタジオ 日韓合同作品

『外地の三人姉妹』
외지의 세 자매
 

2023年11月29日(水)~12月10日(日)
KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
 
原作:アントン・チェーホフ『三人姉妹』
翻案・脚本:ソン・ギウン
演出:多田淳之介 翻訳:石川樹里
ドラマトゥルク:イ・ホンイ 
美術:乘峯雅寛 照明:岩城保 音響:星野大輔
衣裳:阿部朱美 ヘアメイク:国府田圭
演出助手:相田剛志 通訳・字幕製作:藤本春美
方言指導:桂吉坊(大阪弁)、佐藤誠(津軽弁)、田中美希恵(長州弁)
舞台監督:小金井伸一
プロダクションマネージャー:平井徹
アシスタント・プロダクションマネージャー:雲田恵
演出部:橋本加奈子、横川奈保子
小道具製作:畠山直子
照明操作:大島真 音響操作:堤裕吏衣
日本語字幕操作:チェ・ヨンウォン
衣裳部:木下明美、柿野彩、小川咲耶
ヘアメイク部:坂口知香 美術助手:正岡香乃
背景:拓人 大道具製作:C-COM、東広
小道具:高津装飾美術 映像技術:マグナックス
衣裳協力:東京衣裳 (株)、世田谷パブリックシアター技術部
運搬:マイド
鑑賞サポート(英語字幕)
英語翻訳・字幕製作・操作:永田景子
タブレット字幕デザイン:南部充央
宣伝美術:吉岡秀典
宣伝写真:宮川舞子 宣伝動面:須藤崇規
広報:勝優紀、植田あす美
営業:大沢清:清水幸 票券:小林良子
制作:林有布子、小倉千明
制作助手:加藤仲葉、チェ・ヨンウォン
チーフプロデューサー:笛木園子、伊藤文一
事業部長:堀内真人 芸術監督:長塚圭史
 
出演:
伊東沙保(長女・福沢庸子)
李そじん(次女・倉山昌子)
亀島一徳(長男・福沢晃)
原田つむぎ(三女・福沢尚子)
アン・タジョン(晃の恋人(妻)・菫仙玉)
夏目慎也(昌子の夫、中学校教師・倉山銀之助)
佐藤誓(軍医・千葉哲人)
大竹直(中佐・磯部史郎)
田中佑弥(中尉・朴(新井)智泰)
波佐谷聡(朴の同僚、中尉・相馬僚)
松﨑義邦(衛生部、伍長・木戸伝平)
イ・ソンウォン(矢内原家の下男・黄斗伊)
佐山和泉(福沢家の女中・サヨ)
鄭亜美(福沢家の下女・カンナン)
 
STORY
将校である父の赴任に伴い、東京から朝鮮半島北部の都市・羅南(らなん)に移住していた福沢家。屋敷には駐屯する日本軍の軍医や軍人が下宿し、賑やかに暮らしている。長女・庸子は教師として働き、次女・昌子は近所の中学教師のもとへ嫁いでいて、三女・尚子は昨年女学校を卒業した。長男・晃は朝鮮人有力者の娘・菫仙玉と交際している。1935年4月下旬。この日は福沢家の父親の一周忌で、三女・尚子の二十歳の誕生日でもあった。そこに、亡くなった父の元部下で新しく羅南に赴任してきた磯部中佐が訪ねてきて……第二次世界大戦直前の時代、日本軍の占領下におかれた朝鮮で、戦争へ向かう帝国軍人達の描く未来像、交差する朝鮮人の想い、三姉妹の日本への望郷の想いとは……【パンフレットより】

2020年12月に初演された作品をブラッシュアップしての再演。佐藤誓さん以外は初演時のキャストが再結集。
 
舞台美術は基本的に初演を踏襲。
前方は赤茶けた瓦礫の山が積まれ、下手にスタンドマイク。開演するとキャストが舞台を組み立て始める。
第1幕・第2幕は福沢家の応接間、第3幕が離れにある二階の和室になるのは同じだが、上手側の床板が外されて階段が現れるというのは今回はなし。また、下手奥の階段もなくなり、客席通路を使用。

 9月に観たunrato『三人姉妹』は英訳版を基にしているとは言え、原作通りにロシアを舞台にしており、どこか遠い国の貴族階級の話を覗き見している感覚だったのに対し、1930年代の朝鮮半島北部に舞台を移して翻案された本作は、登場人物たちもより身近な存在として感じられる。
また、初演から3年が経ち、ウクライナやパレスチナで多くの市民が犠牲になっている現在の状況下では、銃声の音がより大きく聞こえたし、シーンが進むにつれて床に描かれた太極旗をモチーフにした赤と青の円形が現れるあたりもより切実さが感じられた。
晃の登場曲としてBTSが使われたり、終盤、昌子と磯部が再会するシーンで『冬のソナタ』風の音楽が流れたりという多田さんらしい演出も健在だったが、やはりちょっとギャグに走りすぎているような印象を受けた。

日韓の俳優陣の共演も本作の見どころの1つだが、李そじんさんは日本人の役として「朝鮮の子供が日本語を話すなんて気持ち悪い」といった台詞をどのような思いで発しているのだろうと今更ながら気になった。
 
上演時間2時間59分(第1幕・第2幕1時間16分、休憩15分、第3幕・第4幕1時間28分)。

この日はKAAT芸術監督の長塚圭史さんと演出の多田淳之介さんによるアフタートークあり。初演との違いが興味深かった。