道産子男闘呼倶楽部『きのう下田のハーバーライトで』 | 新・法水堂

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道産子男闘呼倶楽部

『きのう下田のハーバーライトで』



2023年10月24日(火)〜29日(日)
OFF・OFFシアター

作・演出:蓬莱竜太
美術:中根聡子 照明:沖野隆一 音響:今西工
舞台監督:田渕正博 演出助手:渡邊真砂珠
照明オペレーター:野中千絵
宣伝美術:金子裕美 票券:鈴木ちなを
制作:岡島哲也
企画・製作:道産子男闘呼倶楽部
主催:一般社団法人モダンスイマーズ

出演:
津村知与支(原正太郎)
犬飼淳治(伊坂研二)

STORY
仕事で下田のモーテルに宿泊している二人の男。二人は人生を折り返し、50才を前にしている。かつて実演販売での妙技でテレビによく出演していた男と、その付き人兼マネージャーの男であった。付き合いは大学時代から及ぶ。今ではテレビに出ていたその男を覚えている人はいない。今は全国のスーパーやデパートを周り、何とか生活している。付き人は何故自分の人生がこうなってしまったのかを夜な夜な考える。宿泊はいつも相部屋。酒を飲んでいる相手の顔を見ながら、いびきをかいてる彼の顔を見ながら、大学で彼と出会った時からを振り返り、人生の分岐点、修正すべき点を考えてしまう。もう30年の付き合いだ。家族より長い。人生の大半は彼との記憶に埋め尽くされている。今から縁を切れるのか。裏切ることになるのか。相手はショックを受けるだろう。だけどこのままだと自分の人生は失敗だとはっきりと言える。そしてきっと、もう遅い。だから今日も過去に思いを馳せ、自分の人生、二人の人生を振り返ってしまう。何でもない小さな夜も、越えるためには少し力が必要なのだ。引き返せない、やり直せない人生をどう抗うのか、どう受け入れていくのか。朝を笑顔で迎えるために毎夜繰り返される二人の小さな物語。【公式サイトより】

モダンスイマーズの蓬莱竜太さんが劇団員の津村知与支さんに「名作」を書いて欲しいとオファーを受けて書き下ろした二人芝居。

舞台は静岡県下田市のモーテル「ハーバーライト」の一室。下手に木製の机と椅子。上手にも椅子。上手寄りの壁に額縁。

登場人物は50に近い男性2人。1人は一時期テレビのバラエティ番組に出ていた実演販売の男・アッパー伊坂こと伊坂研二、もう1人はその付き人兼マネージャー・原正太郎。2人の出会いは30年ほど前、大学で伊坂が落とした消しゴムを原が拾ったことに遡る。
その後、伊坂は大学を中途退学、原は就職するもくすぶっていたところ、急に伊坂から連絡が入る。生き生きとしている伊坂を羨む原の様子を見た伊坂は、一緒に仕事をしないかと原に持ちかける。
そこから伊坂がテレビに出始め、原が取ってきたバラエティの仕事にアッパー伊坂の名前で出るようになるが、不本意な仕事ゆえに酒が手放せなくなった伊坂は飲み屋で絡んできた大学生たちに暴行したとネットに動画をアップされてしまう。
そんな腐れ縁と一言では言い切れない2人の関係が何とも身に沁みる。あの時、出会っていなければ、あの時、声をかけていなければ、あの時、袂をわかっていれば……様々な可能性が頭を巡るも結局は離れられない。最後はコロナ禍で仕事が次々とキャンセルとなる中、退職金をめぐって口論するのだが、それすら楽しくなってしまう。とりわけ伊坂の最後の台詞がとてもよかった。
津村知与支さん、犬飼淳治さん、アラフィフ俳優の2人が人生の機微を感じさせる演技。犬飼さんの応援団の演舞もよき。

上演時間1時間17分。