劇作家女子会。feat.noo クレバス2020『クレバス2020』 | 新・法水堂

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年間300本以上の演劇作品を観る観劇人です。ネタバレご容赦。

劇作家女子会。feat.noo クレバス2020

『It's not a bad thing that people around the world fall into a crevasse.』



2023年9月27日(水)~10月1日(日)
シアター風姿花伝

作:モスクワカヌ(劇作家女子会。/劇団劇作家)
演出:稲葉賀恵(文学座)
ドラマターグ:オノマリコ(劇作家女子会。/趣向)
美術:角浜有香
照明:松本永(eimatsumoto Co.Ltd.)
音響:星野大輔 音楽:西井夕紀子
演奏:白鳥永晃、日比彩湖、Ingel(Falsettos)、Miuko(Falsettos)
映像:和久井幸一 衣裳:富永美夏
演出助手:大月リコ(yoowa)
舞台監督:土居歩、松谷香穂
照明オペレーター:渡邉日和(eimatsumoto Co.Ltd.)
音響オペレーター:宮崎淳子
宣伝美術:デザイン太陽と雲
ツイート映像製作:佐藤茉優花
制作:植松侑子、古川真央(syuz’gen)
インターン:山尾みる(syuz’gen)

出演:
伊東沙保(無敵)
大石将弘(ケンタウロス/都内の派遣社員・平/ラブホの受付バイト・相澤/タイヤキ好き・冒険者)
勝沼優(レイナの恋人ユウト/リモートワーク中の会社員・長谷川)
木内コギト(ネットカフェを追い出された男・青井/鈴木)
工藤広夢(頭部が馬のサラリーマン・白河/劇団員/右手)
小池舞(うーちゃん)
小石川桃子(祖母の見舞いに行く女性・みづき/ユウトの恋人レイナ)
小早川俊輔(小野の恋人・高円寺)
田実陽子(小野の同居人・若野)
田尻祥子(猫好きのおおかみ男、不動産会社勤務・オオガミ/女子高校生・ジュリー)
西田夏奈子(YouTuber・チムチムリー)
丸山雄也(ツイッターの鍵アカウントの主・宙)
水野小論(若野の同居人・小野)
毛利悟巳(里帰り出産をした女性・アリス/澪標/入院中・ステラ)
ユーリック永扇(明日華)
吉岡あきこ(引きこもり・コクーン/専業主婦・ペチカ/ラプンツェル/中島あゆみ/劇団主宰)
蓮城まこと(水族館勤務の人魚・マーメイド/ラジオ体操を極める人・グリコ)

映像出演:
阿久澤菜々(長野在住・佐藤由香里)
今井公平(ジンロ)
KAKAZU(オリオン)
小林彩(女子大学生・ぺんぎん)
小林春世(藁谷)
β(職人/初心者YouTuber・眼鏡)

STORY
コロナ禍による緊急事態宣言中の2020年の日本を主な舞台に、当時を生きた人々へのインタビュー、ニュース、社会情勢をもとに書かれた50本の短編作品を、長編として編纂したもの。緊急事態宣言中にDV避難を余儀なくされた若者を軸に展開される、コロナ禍を舞台にした群像劇。

2020年、第20回AAF戯曲賞特別賞を受賞した戯曲を文学座の稲葉賀恵さんが演出。
なお、劇作家女子会。は坂本鈴さん、オノマリコさん、黒川陽子さん、モスクワカヌさんの4人の女性劇作家によって結成されたユニットで、nooはモスクワカヌさんの個人ユニットとのこと。

舞台奥に壁があり、中央下の方と左側真ん中あたりが開くようになっている。上手側に階段。客席側にもアクティングスペースがあり、天井からは電球の他、ウィッグ、果物ナイフ、帽子、タイヤキの入った袋、鯉のぼり、アベノマスクなどなどがぶら下がっている。その他、2ヶ所にモニター。

大袈裟でも何でもなく、今、2023年に観るべき作品だった。
登場人物41名、中には人ならざる者もいて、2020年のあの時期をモザイク状に浮かび上がらせる。本作は020年春に50日連続で書かれた短篇作品を長篇化したものということもあり、当時の空気感がそのまま伝わってくる。
もちろん、コロナ禍が既に過去のものになっている人と現在進行形のものと考えている人とでは自ずと受け取り方が異なってくるので、前者にとっては退屈と感じるかもしれないが、アクティングスペースを客席にまで広げることで、これは他人事でも過去のことでもないと訴えかけてくる(もっとも、居眠りしている人がちらほらいたが)。
3年という時間の長さが絶妙で、忘れかけていた感覚を思い出させてくれる作品でもあった。

オーディションで選ばれたキャスト陣いずれもよく、自殺しようとしていた女性を演じた伊東沙保さんが切り込み隊長を務め、覆面YouTuberとして恋愛相談に乗る西田夏奈子さんが裏声と咳払い一つで笑わせる。もう最高最高。大石将弘さんの「こしあん!?」もうまいよねぇ。
中でも作品の軸となる、間もなく出所してくる父親によるDV(性暴力含む)から逃れようとする女性・明日華を演じたユーリック永扇(えいみ)さんの演技が非常に素晴らしかった。彼女を救おうとする小野役の水野小論さんと若野役の田実陽子さんとの連帯にも涙を誘われる。
一人浮世離れした感のあるうーちゃん役の小池舞さんも気になったが、うーちゃんのうーはウイルスのうー? シャボン玉を飛ばしていたのも感染拡大のイメージなのかな。

上演時間2時間41分(一幕1時間34分、休憩11分、二幕54分)。