『遠くの空に消えた』(行定勲監督)試写会 | 新・法水堂

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『遠くの空に消えた』



2007年日本映画 144分
脚本・監督:行定勲
プロデューサー:古賀俊輔、飯泉宏之、山本章
撮影:福本淳 照明:市川徳充
美術:山口修 衣裳デザイン:伊藤佐智子
編集:今井剛 音楽:めいなCo.
録音:山田幸治 整音:伊藤裕規
VFXスーパーバイザー:進威志
脚本協力:青木豪、伊藤ちひろ
装飾:大庭信正、田畑照政
VFXプロデューサー:篠田学
キャスティング:杉野剛
スクリプター:山本亜子
助監督:川口浩史
製作担当:大日方教史、千綿英久、刈屋真
主題歌:「甘い香り」Cocco

出演:
神木隆之介(楠木亮介)
大後寿々花(柏手ヒハル)
ささの友間(土田公平)
三浦友和(楠木雄一郎)
大竹しのぶ(BAR花園のママ・みっちゃん)
石橋蓮司(サワコ先生の父・地主の天童)
小日向文世(公平の父、生物学者・土田信平)
鈴木砂羽(公平の母・土田スミ)
伊藤歩(サワコ先生)
長塚圭史(赤星)
田中哲司(青年団のリーダー・トバ)
柏原崇(大人になった亮介)
チャン・チェン[張震](スミス提督)
笹野鈴々音(BAR花園の歌手)、六角慎司(サワコ先生の婚約者・タニシ)、森下能幸(トバの手下)、三浦誠己(同)、中野英樹(同)、山中崇(同)、棚橋ナッツ(同)、岡田光里(同)、神楽坂恵(同)、加藤みづき(公平の姉)、横山あきお(二人組の老人)、大口広司(同)、中島ひろ子(ヒハルの母)、でんでん(信平の友人)、キタキマユ(客室乗務員)、高橋真唯[岩井堂聖子](後輩乗務員)、富永沙織(大人になったヒハル)、傳田怜時(大人になった公平)、西原信裕(ケンジ)、柳田衣里佳(エリカ)、谷本和優(トンボ)、下山葵(みつる)、根岸紗里(民子)、広野健至(師匠)、大浦詩由(馬酔村の子供)、石坂良磨(同)、栩原笑生(同)、長谷川愛美(同)、守山玲愛(同)、森部万友佳(同)、岡村洋一(空港建設反対派の村人)、原金太郎(同)、戸田昌宏(同)、峯村リエ(同)、伊達暁(同)、林和義(雄一郎の部下)、山中聡(同)、山田淳二(同)、小川岳男(同)、武田義晴、渡辺憲吉、吉増裕士、ハルカ[Ilonka Orth](Bar花園の店員)、Syuw(同)、沖田裕樹、杉山大喜、椿直(ガキ大将)、岡本拓朗、小林奨、田口雄一、クリスチャン・ストームズ(神父)、千うらら(天童の妻)、竹内和彦、新虎幸明(村人)、八巻博史、筒井拓視、佐藤智美(村人)、幹山恭一、伊勢田隆弘、内藤しん、野貴葵、武田滋裕、【馬酔村楽団】梅津和時、関島岳郎、中尾勘二、多田葉子、松本治、ASA-CHANG、諏訪創、浦山秀彦、張紅陽/山崎一(警察)、ラッキィ池田、Cocco[Special Thanks](光の声)

STORY
青空と麦畑の広がる馬酔村に転校生・楠木亮介がやってくる。この村には空港建設の計画が持ち上がり、亮介の父・雄一郎はその責任者だった。都会的な雰囲気を持つ亮介はたちまちクラスの人気者になるが、それが気に入らない地元の悪がき・土田公平は授業後に亮介を待ち構える。取っ組み合ううちに肥溜めに落ちた二人はそれをきっかけに仲良くなり、その帰り、空に向かって両手を広げる一人の不思議な少女と出逢う。ヒハルというその少女は二人に「君たちはUFOの存在を信じる?」と問いかける。一方、BAR花園には有力地主の天童を始めとする空港建設反対派が集っていたが、雄一郎は金をバラ巻いて買収工作に乗り出す。そのやり方を巡って父と衝突した亮介はその夜、家を飛び出して公平とともに星空を見上げる。するとそこへ昼間の少女ヒハルが現れる。彼女は父がUFOに連れ去られたと信じており、星をつかめるという天体望遠鏡で星空を眺める。天童の娘で亮介たちの担任・サワコ先生はタニシとの結婚を親に決められていたが、村に墜落したスミス提督を助けて心惹かれていく。空港建設反対運動をめぐって村が揺れる中、亮介は公平、ヒハル、そして知恵遅れの青年・赤星とともに秘密基地で過ごすことが多くなる。そんなある日、いなくなっていたはずの公平の父・信平が突然姿を現わす。雄一郎の幼馴染だった信平は直接、空港建設反対を訴える。運動の波は子供たちにも押し寄せ、何者かの手によって秘密基地が破壊され、ヒハルが丘から転落して大怪我を負うという事件が起きる。亮介と公平はヒハルのためにとある計画を実行に移す。

行定勲監督、久々のオリジナル作品。
神木隆之介くんと大後寿々花ちゃん、天才子役と言われた二人の組み合わせとあれば映画ファンなら見逃す訳にはいかない。
恐らく撮影は1年前の夏だと思われるが、現在の彼らの姿からすると随分幼い印象を受ける。この時期の1年がそれだけ大きいものだという実感を受けるし、二度と戻らないこの時期にこの組み合わせが実現されたことの偶然を喜ばなければならないだろう。

本篇自体は144分もありながら、まったく飽きさせることはない。
当初は神木、大後、ささの友間(笹野高史さんの次男)の3人が出ずっぱりで物語が展開していくのかと思いきや、大人たちの事情にも焦点が当てられていく。
特にサワコ先生とスミス提督のシーンは幻想的でよかったし(ちなみに伊藤歩さんとチャン・チェンさんはこの秋公開の中・日合作映画『呉清源 極みの棋譜』で夫婦役を演じている)、信平が反対運動派を引き連れて音楽を演奏しながら村中をデモするシーンも楽しい(あちこちで書かれているが、クストリッツァ監督の作品を想起させる)。
ただ、“最大のいたずら”でもう少し感動させて欲しかったかなと。予告篇でもネタバレしちゃってるし。

構成としては大人になった亮介が空港に降り立ち、二人の客室乗務員(キタキマユさんと高橋真唯さんという贅沢さ!)に少年時代の話をするという形式を取っているため、空港建設計画の末路は見えてしまっている(それにしてもあの二人、ずっとあんなところで話を聞いていたんだろうか)。
だからと言って少年たちの行為が無駄だったというわけではないことは、はっきりとは映されないが亮介を迎えにきた二人の姿を見れば明らかだろう。
北海道の景色同様、爽やかで清々しい気分になれる一作。

ちなみにこの日は行定勲監督と大後寿々花ちゃんの舞台挨拶つき。
将来、日本映画界を背負って立つ女優の姿を一目見られて本望じゃ。笑