第8回ブス会*
『The VOICE』
2022年11月24日(木)~30日(水)
遊空間がざびぃ
構成・演出:ペヤンヌマキ
音楽監督:向島ゆり子 美術:田中敏恵
照明:倉本泰史 衣裳:加藤佑里恵(藤衣裳)
音響協力:佐藤こうじ(Sugar Sound)
演出助手:井上悠介
舞台監督:竹井祐樹 舞台監督助手:磯田浩一
宣伝イラスト:まいまい堂 宣伝美術:狩野茜 WEB:rhythmicsequences
制作:半田桃子 制作助手:中田夢花
運営:佐藤琴音、松嶋奈々夢、吉田美優、村田紫音
出演:
高野ゆらこ(森木/ハル/測量士/ギャラリー経営・中畑)
罍陽子(フユ)
異儀田夏葉(アキ/蕎麦屋店主の妻)
天羽尚吾(BUS・ボーイ/測量士/まちづくり専攻の大学生)
古澤裕介(村田/BUS・ウズ/床屋/フユの飼い猫・ビーちゃん)
金子清文(BUS・スカイ(カネーコ)/蕎麦屋店主/立候補者・大森タカシ)
向島ゆり子(演奏)
STORY
杉並区に住んで20年になるペヤンヌマキは、都市道路計画により、自分の住んでいる場所が知らない間に立ち退き対象地域になっていたことに気づく。ペヤンヌマキはメタセコイアの大木の近くに住む森木など地元の人たちの声に耳を傾け始める。
ペヤンヌマキさんによるユニット・ブス会*、2年ぶりの公演。
舞台の中心にメタセコイアの木に見立てられた大きな柱。円を描くように縄が置かれ、他に黒い箱馬がいくつか。下手側にピアノ。
開演時間になるとペヤンヌマキさんと向島さんが登場し、向島さんはピアノの前へ。ペヤンヌさんは前説のようにこの作品が出来た経緯などを話し始め、ひとしきり終わると上述の縄の外側に座って上演をずっと観ている形に。
前作『女のみち2020』がAV業界を舞台にしていたのに対し、今回はがらっと変わって地域の社会問題。ギャップがあるようにも感じるが、どちらもペヤンヌさんにとっては重大な自分ごと(※ペヤンヌさんはAV監督としてもご活躍)。ペヤンヌさんとしては都市計画道路の問題を扱うのもごく自然なことなのだろう。
計画自体、戦後間もない頃に作られたもので、時代遅れと反対の声も多い。ちなみに会場である遊空間がざびぃも道路が拡張されることになれば、立ち退きの対象となるとのこと。
今回、ペヤンヌさんは台詞を書いていないそうで、基となっているのはタイトル通り、住民たちの「声」。劇中、韓国のアイドルグループのファンである3人組の女性が出てくるが、そのうちの1人、フユは楽しくアイドルの話をしているさなか、ハルとアキが道路計画反対のデモに参加したと聞いて驚く。デモは活動家が参加するもの、と思い込んでいたフユは2人が議員に推しが出来た、国会中継を見るべし、と盛り上がるのにも当然ついていけない。
実際、政治や社会問題に対して何の意見も持たない人もいるのだろうけど、自分が暮らしている地域や国で何が行われているかに関心を持ち、おかしいなと思ったことに対しては声を上げるのはごく自然なこと。
このタイトルには、そうした住民たちの声以外にメタセコイアの木を始めとして、計画によって失われてしまうかも知れないモノたちの声なき声にも耳を傾けよという意味合いも込められている気がした。
罍陽子さんは改名された際の配信イベントで見事な歌声を披露されていたけど、今回は生でそれが聞けて満足。しかも台詞をしゃべりながら途中途中で歌になるという難易度の高そうなことをさらりとやっていた。
また、向島ゆり子さんはピアノにバイオリン、更に笛のような小さな楽器で鳥の鳴き声も再現していた。
終演後、ライターの丘田ミイ子さんをゲストに迎えてのアフタートーク。
本作では触れられていないが、ペヤンヌさんは今年6月に行われた杉並区長選挙において見事当選を果たした岸本聡子さんを追ったドキュメンタリー『○月○日、区長になる女。』を監督していて、そのことを知った丘田さんがペヤンヌさんに取材を申し込んだとのこと。東京というと近所付き合いのなさそうなイメージがあるけど、お二人のように自ら動いていけば自然と繋がりは出来ていくのよなぁと感じ入ったトークであった。
上演時間1時間11分。