劇団papercraft 第7回公演
『世界が朝を知ろうとも』
前田悠雅[劇団4ドル50セント](女)
井上向日葵(友達1)
清田みくり(友達2)
葛堂里奈[ブルドッキングヘッドロック](とある女)
STORY
存在意義が感じられないと人間が虫になってしまう世界で、人間は虫にならないために仕事とは別のソーシャル・サービスに従事していた。とある女は小学生の時、目の前で保健室の先生が虫になり、つぶしてしまったというトラウマのため、普通の人生を送ってきたが、待望の妊娠をした際、夫がミュージシャンになるために蒸発してしまう。やがて生まれてきた子供はカマキリだった。一方、とあるラブホテルでは禁止されている昆虫売買をしている2人の女子大生が虫の仕分け作業を行っていた。元々フットサルのサークルで知りあった2人だったが、一方が就職するから昆虫売買を辞めると言い出して関係に亀裂が入る。更に別のラブホテル。男は女が性的なソーシャル・サービスをやっていることを非難し、女は男がSNSで他の女と連絡を取っていることを非難する。
劇団papercraft、新作公演。葛堂里奈さん(と音楽の紫乃さん)以外はWキャスト。私はもちろん井上向日葵さん出演のAチームを鑑賞(この劇団を知ったのも井上さんが前々回公演『殻』に出演したことがきっかけだった)。
客席は3方向に配置。舞台奥にダブルベッド(購入した台本では「ベット」になっていた。それなりの値段を取っているんだから、きちんと校正しましょう)。下手にソファとテーブル。照明器具として、白の丸い提灯、裸電球、蛍光灯など。
ラブホテルを舞台にしたオムニバス構成で、3つの話が並行して描かれていく。
中では、冒頭に登場する「とある女」の物語がいちばんよかった。過去に観た2作品同様、本作もやや特殊な設定が用意されているが、とある女のモノローグによってそういった設定をうまく導入することに成功している。更には彼女の話を聞くために集まった我々(観客)もまた、虫であることが分かってくるという構成も巧み。
ただ、存在意義が感じられなくなると虫(人によってコオロギだったりカマキリだったりする)になるという設定は面白いが、虫にならないために人がソーシャル・サービスに従事しているということは仕事に存在意義を見出す人はいないということ?とツッコミを入れたくなった。
キャストでは、ずっとモノローグで喋り通し、なおかつ冒頭で観客を引き込む役割を担う葛堂(かどう)里奈さんがひと際よかった。
上演時間1時間43分。