劇団民藝公演
『破戒』
2022年7月30日(土)~8月9日(火)※7月28日・29日のプレビュー公演、30日・31日の公演は中止。9日夜と10日昼に追加公演。
劇団民藝稽古場
原作:島崎藤村 脚色:村山知義 演出:岡本健一
装置:勝野英雄 照明:前田照夫 衣裳:片野光
音楽:岡本健一 音楽製作:田中志門
効果:岩田直行 舞台監督:深川絵美
衣裳助手:松本昌子 効果助手:戸所杏奈
演出助手班:浦野ひびき、印南唯、金井由妃、佐々木郁美、齊藤みのり、石川桃、船津優舞、滑川龍太、小守航平、大友祐晟
制作:白川浩司、金本和明
出演:
齊藤尊史(瀬川丑松)
加來梨夏子(敬之進の娘・お志保)
塩田泰久(丑松の親友・土屋銀之助)
千葉茂則(思想家・猪子蓮太郎)
平野尚(丑松の同僚・勝野文平)
吉岡扶敏(同・風間敬之進)
横島亘(校長)
吉田正朗(政事家・高柳利三郎)
小嶋佳代子(蓮華寺の奥様)
中地美佐子(猪子夫人)
境賢一(丑松の父)
本廣真吾(市村弁護士)
矢島瞳[Wキャスト](お志保の妹・省子)
花城大恵[Wキャスト](男)
愼将吾(男たち)
滑川龍太(同)
小守航平(同)
大友祐晟(同)
井上晶(女たち)
齊藤みのり(同)
石川桃(同)
船津優舞(同)
STORY
長野県飯山小学校の教師瀬川丑松は誰にも言えない秘密があった。出自のことだ。常々父から身分を隠すことを訓戒とされていた。親友の土屋銀之助や生徒たちにも勿論黙っていた。しかし人権家猪子蓮太郎の著書に感化され、人生の葛藤を抱え深く悩むようになった。いっぽう丑松や銀之助のことが目障りだった校長は、新任の勝野文平を味方に引き入れ丑松たちを放りだす口実を探す。そんな時に丑松へ父親が亡くなった報せが届く。また敬愛する蓮太郎も襲撃され命を落とす。二人の死に丑松はついに覚悟を決めて……。【公式サイトより】
麻生区区制40周年記念。
劇団が青山から川崎市麻生区に拠点を移転してからも40年だそうで、1948年民衆芸術劇場第一回公演で上演された作品を男闘呼組の岡本健一さんが演出(その肩書きは要らんやろ)。
原作をたまたま読み始めた頃にこの公演のことを知って、追加公演で何とか鑑賞。間宮祥太朗さん主演の映画も公開中なんだよなぁ(こちらには高橋和也さんが出演)。
いわゆる部落差別を扱った本作。「穢多」という言葉は用いられず、「部落の人間」と差し替え。また、お志保の弟・省吾が妹・省子(しょうこ)に変更されている。
世にあまたの差別あれど、部落差別ほど根拠薄弱な差別もないと思う。見た目や性格で被差別部落出身だと判断できるわけではなく、丑松の父が助言する通り、自分から言わなければ気づかれずに生活を送ることはできる。
もちろんそれで済めば何の苦労もないわけで、主人公の丑松は自分の出自を巡って苦悩する。原作では穢多を公言して活動する猪子蓮太郎に対する憧れと、猪子に真実を打ち明けられないもどかしさが強く感じられたけど、今回の公演ではそのあたりはあっさりめ。元の戯曲は4幕10場構成だったようで、だいぶ縮約されているせいかもしれないが。
丑松が教え子の子供たちに謝罪するシーンはよかったが、お志保が丑松の出自を知っても関係ないというあたりはやや傲慢さを感じた。勝野文平と校長のやりとりは小物感が溢れていてよかった。
上演時間2時間21分(一幕1時間5分、休憩15分、二幕1時間1分)。