日本悲劇総合協会『ドライブイン カリフォルニア』 | 新・法水堂

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日本悲劇総合協会vol.7

『ドライブイン カリフォルニア』



【東京公演】
2022年5月27日(金)〜6月26日(日)
本多劇場

作・演出:松尾スズキ
美術:長田佳代子 照明:佐藤啓
音響:藤田赤目 衣裳:戸田京子
ヘアメイク:大和田一美 映像:ムーチョ村松
歌唱指導:蔵田みどり
アクション指導:冨田昌則
演出助手:大堀光威 舞台監督:二瓶剛雄
演出部:戸沢俊啓、岩本武士、高原聡、岡田三枝子、對馬和美
美術助手:小島沙月
照明操作:石井宏之、中村佐紀
音響操作:常田千晴 衣裳進行:梅田和加子
ヘアメイク進行:井草真理子
映像操作:トーキョースタイル
映像助手:吉田りえ 制作助手:諸星奈津子
稽古場代役:根本大介、塚本真美理
小道具製作:佐藤涼子
衣裳製作:梅津佳織、田鎖みさと、岩渕玲子、梅田和加子、アトリエハリコ
衣裳協力:東京衣裳 森田恵美子
かつら製作:APREA
大道具:C-COM舞台装置 伊藤清次
植栽:櫻井忍 小道具:高津装飾美術 西村太志
電飾:イルミカ東京 小田桐秀一 運搬:マイド
劇中イラスト:松尾スズキ、河合優実
劇中曲作曲:星野源 ヘアメイク協力:ACSEINE
プロデューサー:長坂まき子 票券:河端ナツキ
制作:北條智子、赤堀あづさ、横山郁美 
企画・製作:大人計画、(有)モチロン

宣伝美術:榎本太郎 宣伝イラスト:信濃八太郎
宣伝写真:端裕人 宣伝ヘアメイク:大和田一美
宣伝衣裳:宮本茉莉 宣伝動画:原口貴光
宣伝協力:る・ひまわり

出演:
阿部サダヲ(我孫子アキオ)
麻生久美子(マリエ)
田村たがめ(マリエの息子ユキヲ)
谷原章介(芸能マネージャー若松)
猫背椿(若松の妻クリコ)
小松和重(アキオとマリエの腹違いの弟ケイスケ)
村杉蝉之介(アキオたちの父・我孫子ショウゾウ)
川上友里(アキオの恋人・石垣マリア)
河合優実(アルバイト店員エミコ)
皆川猿時(エミコの元夫、高校教師・大辻)
東野良平(クリコの不倫相手ヤマグチ)

STORY
裏手に古い竹林が広がるとある田舎町のドライブイン。経営者のアキオは妹に対して、兄妹愛と括ってしまうにはあまりにも純粋な思いを抱いていた。妹マリエは14年前、店にたまたま訪れた芸能マネージャー若松にスカウトされ、東京でアイドルデビューするも結婚を機に引退。その後、夫の自殺など数々の経験を重ね、中学生の息子ユキヲと共に地元に帰ってくる。このカリフォルニアという名のドライブインには、腹違いの弟ケイスケ、アルバイトのエミコが働いていた。そして兄妹の父親ショウゾウ、高校教師の大辻、アキオの恋人マリア、若松の妻クリコ、クリコの不倫相手ヤマグチなどを巻き込み、複雑に時が流れだす……【公式サイトより】

1996年初演、2004年に再演された作品の三演。

舞台はタイトル通り、カリフォルニアという名のドライブインで、上手背景部分に「DRIVE IN CALIFORNIA」の看板。壁には細長い窓があり、その奥に竹林が見える。
店内は下手側奥が高くなっていて、カウンター。手前にトイレの扉。フロア部分にはテーブルや椅子があり、上手奥にも段差があり、ホテルへの扉となっている。手前には店全体の出入口。

語り手はマリエの息子で中学生のユキヲ。制服姿の彼は既に死んでいて、14年前、自分を産む前の母親が若松にスカウトされる日のことから話を始める。
本作は学生時代に学生劇団が上演したのを観たことがあるが、ほとんど記憶になかったのだけど、奇しくも渡辺裕之さんや上島竜兵さんのことがあったばかりで観るとなおさら胸に迫るものがある。

竹林で縊死していたユキヲが自らの意志によるものなのか事故だったのかは触れないでおくが、ユキヲの父親も祖母も自殺をしており、母マリエも自殺を図ろうとしたことがある(とアキオは思い込んでいる)。松尾さんも最近のメルマガで言及していたが、芸能人ばかりが注目を集めるが、一般人の自死もまだまだ多い。
本作には過去のある件がきっかけでびっこを引いていくケイスケという人物が登場する。アキオやマリエにとっては腹違いの弟である彼は背中に「バカになれ」と書いてあり、マリエもシャツを脱いで体中に「バカになれ」と書いてくれとせがむ。
この「バカになれ」というフレーズには息苦しい思いをしている(していた)人たちに対する優しさが込められているように感じた。それにしても皆川猿時さんの長台詞に泣かされるとは思わなかったなぁ。
ところで「じぇじぇじぇ」を台詞に入れ込んできたり、麻生さんにジェームズ・ブラウンさんのマント・ショーをやらせたりといったクドカンオマージュ?はなんだったんだろう。笑

阿部サダヲさんはいつも通りと言えばいつも通り。
麻生久美子さんはセーラー服から東京から出戻ってきた大人の女性まで振り幅も大きく、上述のシーンでは下着姿まで披露。
初演から唯一同じ役を演じている田村たがめさんは、隙のない中学生男子っぷり。『フリムンシスターズ』に続いて松尾スズキ作品に出演の河合優実さんは今まで泣いたことがないのに、ユキヲのために涙を流そうとする女性を好演。2人のキスシーンもいいシーン(田村さんはその前に夫でもある皆川猿時さんとキス。笑)。
川上友里さんは金髪姿で登場時から暴れまくり、強烈なインパクト。劇団「地蔵中毒」の東野良平さんも個性的なキャラクターで印象を残した。

上演時間2時間12分。