『春原さんのうた』
2021年日本映画 120分
脚本・監督:杉田協士
原作短歌:東直子(ちくま⽂庫『春原さんのリコーダー』より)
プロデューサー:髭野純 アソシエイト・プロデューサー:川村岬
撮影:飯岡幸子 音響:黄永昌 照明:秋山恵二郎 照明助手:平谷里紗
衣裳:小宮山芽以 衣裳助手:田島あかり 編集:大川景子
音楽:スカンク/ SKANK 仕上監修:田巻源太 スチール:鈴木理絵
イラスト:カシワイ 題字:荒木知佳 デザイン:篠田直樹
出演:荒木知佳 (岸沙知)、新部聖子(春原雪)、金子岳憲(沙知の伯父・剛)、伊東沙保(剛の妹・妙子)、能島瑞穂(日髙さんの知人・栗原幸子)、日高啓介(日髙さん)、名児耶ゆり(沙知の元同僚・希子)、北村美岬(詩子)、黒川由美子(カフェ店主・由美子)、深澤しほ(常連客・ゆり子)、安楽涼(喪服の客・涼)、大須みづほ(同・みづほ)、DEG(DEG)、徳倉マドカ(沙知の友人・三上翔子)、清水啓吾(由美子の息子・学)、吉川愛歩(愛歩)、七葉、樹人、東直子、黒川幸則、スカンク、鈴木ユキオ、安次嶺菜緒、赤木はるか、山田暁、小谷葉月、栗朱音、阿部朱里、ボヴェ太郎、柏木陽、尾引浩志、大熊ワタル、こぐれみわぞう、福田毅、三宅一樹、群馬直美、神村恵、上村なおか、鯨井謙太郎、定方まこと、笠井久子、笠井禮示、浅見裕子、砂連尾理、杉本文、吉野さつき、橋本善八、佐藤深雪、佐藤香織、久保友美、堀哲平、塚田美紀、東谷千恵子
STORY
美術館での仕事を辞めてカフェでのアルバイトを始めた沙知(24)は常連客から勧められたアパートの部屋に引越しをする。そこでの新しい生活を始めた沙知だったが、心にはもう会うことの叶わないパートナーの姿が残っている。【公式サイトより】
マルセイユ国際映画祭グランプリ、俳優賞、観客賞受賞作。
杉田監督の前作『ひかりの歌』に続いて本作も短歌が原作で、今回は東直子さんの「転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー」。
この春原さんについては劇中、多くが語られるわけではない。とりあえず主人公の沙知にとっては大切な人だったのだろうということが分かるぐらい。沙知は春原さんを失った心の傷を少しずつ癒やしていく。
沙知のことが心配になって北海道から伯父や伯母がやってくるぐらいなのだが、伯父が突然泣き出すのも理由は特に語られるわけではない。それでもきっとこの伯父にも辛い別れがあったのだろうと推測はできる。
このように登場人物の心の機微が映像と必要最低限の台詞で描かれていくので、正直私もこの映画で描かれていることの半分もくみ取れていないのではと不安にもなるのだが、それでも沙知の風通しのいい部屋(ちなみに最寄駅はアトリエ春風舎に行く際に利用する小竹向原駅だった)のように心に気持いい風が吹き抜けるのを感じた。
荒木知佳さんはこれが映画初出演。
舞台は何本か拝見しているけど(今年に入ってからはスペースノットブランク『ウエア』)、荒木さんと言うとよく汗をかいているイメージ。笑
それが今回、堂々たる主演っぷりで色々な表情を見ることが出来た。特技の書道を披露したり(題字も荒木さん)、最後、沙知たちが向かう先が荒木さん自身の出身地である北海道滝川市だったり、荒木さんの魅力を引き出すべく沙知の設定を寄せていったのだろうな。
他にも小劇場の俳優さんがたくさん出ていて嬉しい限り。黒川由美子さんのみ俳優ではなく、劇中に登場するカフェキノコヤの本当の店主とのこと。