渋谷・コクーン歌舞伎 第十八弾
『天日坊』
2022年2月1日(火)〜26日(土)
Bunkamuraシアターコクーン
原作:河竹黙阿弥「五十三次天日坊」
演出・美術:串田和美 脚本:宮藤官九郎
照明:齋藤茂男 音楽:Dr.kyOn、平田直樹 音響:武田安記
技術監督:横沢紅太郎 演出助手:長町多寿子
狂言作者:竹柴潤一 舞台監督:小笠原幹夫
出演:
中村勘九郎(法策 後に 天日坊 実は清水冠者義高)
中村七之助(人丸お六 実は今井四郎娘かけはし)
中村獅童(地雷太郎 実は竹川伊賀之介正忠)
市村萬次郎(猫間光義)
片岡亀蔵(観音院/赤星大八 後に赤星典膳)
中村虎之介(北條駿河守時貞)
中村鶴松(傾城高窓太夫)
小松和重(越前の平蔵 実は廣元家臣平岡平蔵)
笹野高史(お三婆/鳴澤隼人)
中村扇雀(久助 実は大江因幡守廣元)
中村山左衛門
澤村國矢
中村いてう
中村仲之助
中村獅一
中村仲四郎
中村仲助
中村仲弥
中村扇十郎
坂東橘治
土橋慶一
香川正樹
芦田能久
附田健佑
三木将太
中村かなめ
内田紳一郎(トランペット)
大月秀幸(トランペット)
中村勘之丞
中村蝶紫
澤村國久
中村祥馬
中村仲侍
平田直樹(トランペット)
Dr.kyOn(キーボード)
城谷雄策(トランペット)
上石統(トランペット)
田中充[Wキャスト](トランペット)
宇野嘉紘[Wキャスト](トランペット)
仲兼一郎(トランペット)
佐藤純朗(ギター)
ワタナベエス(ベース)
熊谷太輔[2/1〜13](パーカッション)
関根真理[2/14〜26](パーカッション)
STORY
鎌倉時代。木曽義仲が将軍・源頼朝の命令によって討たれた後、都で化け猫騒動が起こる。義仲に娘を嫁がせていた猫間中納言が謀反の疑いを掛けられ自害、その怨霊が帝の愛猫に乗り移っていたのだ。北条時貞と修験者・観音院の力で化け猫は退治された。観音院の弟子、法策は「生き延びよ」という化け猫の不思議な一言を聞く。法策はふとしたことから、飯炊きのお三婆さんの死んだ孫が将軍・頼朝のご落胤であることを知った。証拠の品は頼朝自筆の御書と三条小鍛冶の短刀。拾われた子であり、身元も知れず、親族もいない法策は、ご落胤になりすますことを決意し、お三を殺して証拠の品を奪う。悪事を重ねながら鎌倉へ向かう途中、盗賊・地雷太郎やその女房で女盗賊のお六たち一味と出会い、殺されそうになるが、開き直って、自分の素性と企みを明かし、加担しないかと持ちかける。その時、お六が法策の本当の素性を見抜いた。驚く法策だが、その素性ゆえに盗賊たちも結束し、法策は天日坊と名を変えて、一同は、鎌倉へ乗り込むのだった――【2012年版『天日坊』公式サイトより】
宮藤官九郎さんの脚本により蘇った『天日坊』、10年ぶりの再演。
一昨日の『SINGIN' IN THE RAIN~雨に唄えば~』は英米のエンタテインメントの底力を見せつけてくれたが、虚空雲座による本作は日本のエンタテインメントも負けてへんで!(なぜか関西弁)と訴えかけてきた。
10年前の初演から20分ほど短くなった本作、「持続化給付金」や「ワンチャン」といった近年の流行語も交えつつ(その一方で、「ちょ、待てよ」や「臨兵闘者皆陣裂財前直見」は賞味期限切れかも)、クドカン流歌舞伎が展開されていく。前半はそういった側面が強めだが、終盤になるにつれ、本格的な歌舞伎さながらの格調を備えていく。この落差が激しいところもクドカンらしいところ。
みなしごで二親も知らない法策は、頼朝の落胤と身分を偽ったのも束の間、地雷太郎とお六の夫婦と出会い、実は自分が木曽義仲の嫡男・清水冠者義高だと知る。「俺は誰だあっ!」とアイデンティティ・クライシスに陥いりながらも、最後の最後まで戦い抜く法策の姿は胸に迫るものがあった。
しかし、中村獅童さんもご出演の『鎌倉殿の13人』と時期が重なったこともあり、頼朝の名前が出てくるたびに大泉洋さんの顔が浮かんでくるのは困ったものだ。笑
それにしても中村勘九郎さんの素晴らしさたるや。
初演は観ていないけど、当たり役と言っていいのでは。最後の長めの立ち回りの動きも機敏で、なおかつ法策の心情をありありと感じさせてさすが。
今回、初めての歌舞伎だという小松和重さんは二幕冒頭に登場し、この時間はフリーで、これまでの経緯を説明するとだけ台本に書いてあったと言いつつ、しっかり笑いを取っていた。
ステージ両脇に陣取ったバンドメンバーによる生演奏も心地よかった。
上演時間3時間5分(発端・序幕1時間10分、休憩20分、二幕1時間35分)。