城山羊の会
『ワクチンの夜』
the Night of the Vaccine
2021年12月3日(金)~12日(日)
三鷹市芸術文化センター 星のホール
作・演出:山内ケンジ(青年団の山内健司さんとは別人の ましてやかまいたちさんではなく)
舞台監督:神永結花、森下紀彦 照明:佐藤啓、溝口由利子
音響:藤平美保子 舞台美術:杉山至 衣裳:中島エリカ 演出助手:岡部たかし
大道具製作:六尺堂、新海雄大 宜伝美術:螢光TOKYO+DESIGN BOY
イラスト:コーロキキョーコ 撮影:ムーチョ村松、手代木梓(トーキョースタイル)
収録:原口貴光(帝斗創像)、宝隼也、神之門隆広
制作:渡邉美保、小池瑠奈(E-Pin企画) 制作助手:平野里子、三木万侑加、高橋由希
制作プロデューサー:城島和加乃(E-Pin企画)
出演(登場順):
岩本えり(母・シズエ)
岩谷健司(父)
朝比奈竜生[青年団演出部](息子・秋彦)
岡部たかし(祖父)
中山求一郎(増淵)
春原愛良(佐々木エリカ)
STORY
2回目のワクチンを接種した中年夫婦。夫は何ともなかったが、妻は頭痛がして発熱した。妻は解熱剤を飲み、大学生の息子・秋彦に言われるままにパンを食べて寝室に向かおうとする。義父はふらつく嫁を心配する振りをしつつ、抱きついたり下半身に手を伸ばしたりする。その後、秋彦の後輩・増淵とエリカがやってくる。エリカの論文執筆のためだったが、2人が一緒にワクチンを接種してきたとして動揺する秋彦。祖父は秋彦の父親の振りをしてエリカに馴れ馴れしく接する。寝室にいた父が真っ裸で下に降りてきたり、父と祖父が取っ組み合いの喧嘩を始めたりしているうちに、増淵が発熱。熱が下がって降りてきた母は増淵を見て、ワクチン接種会場にいた医者ではないかと尋ねる。その医者は母のかつての恋人に似ているという。
城山羊の会、1年ぶりの新作公演。
三鷹市芸術文化センターでは『相談者たち』以来4年ぶり。
その時と同様、同センターの森元隆樹さんの前説から始まり、本篇が始まっても森元さんのナレーションが入る。これ、他の劇場で上演する時は面白さが半減してしまうよなー。
舞台はリビング。テーブルやソファ、椅子が置かれただけのシンプル設計。
下手に玄関へと通じる出入口。奥にはそれぞれ1階の別室とキッチンに続く出入口。
上手に2階へと上がる階段。上手側の壁には時折、映像が映し出される。
昨年の『石橋けいの あたしに触らないで!』に続く“主婦の妄想シリーズ”第2弾だそうで、登場人物同様、見ているこちらもワクチン接種の副反応による発熱のような症状を引き起こしそうな艶笑譚。
主婦の妄想というより、主婦がこんな妄想をしてくれたらいいなぁという山内さんの妄想のような気もするけど、「何のお構いもしませんで」という何でもない母の台詞がこれほどまでに面白く響くのはもはや名人芸。
キャストはいずれもよかったけど、中でも岡部たかしさん扮する祖父のエロ爺っぷりが可笑しくて仕方ない。嫁に対して好色のまなざしを向け、孫の後輩にも馴れ馴れしく接する。自分の息子のことを「森番」と称するのは『チャタレイ夫人の恋人』のイメージからだろうけど、年上の岩谷健司さんとの親子喧嘩も笑いを誘う。
岩本えりさんの滲み出るエロス、春原愛良(すのはらあいら)さんの天然の小悪魔性と女優2人はそれぞれに魅力を発揮。どこかトボけた味わいの岩谷健司さん、声が小さすぎながらも心優しい朝比奈竜生さん、発熱ゆえかまんまと母の手に落ちる中山求一郎さんと男優陣も個性的。
上演時間1時間49分(前説除く)。