『アメリカン・ユートピア』
DAVID BYRNE'S AMERICAN UTOPIA
2020年アメリカ映画 107分
監督・製作:スパイク・リー
製作:デイヴィッド・バーン
撮影:エレン・クラス 編集:アダム・ガフ
振付・ステージング:アニー・B・パーソン
出演:デイヴィッド・バーン(ヴォーカル/ギター/パーカッション)、ジャクリーン・アセヴェド(パーカッション)、グスターヴォ・ディ・ダルヴァ(パーカッション)、ダニエル・フリードマン(パーカッション)、クリス・ギアーモ(ダンス/ヴォーカル/ヴォーカル・キャプテン)、ティム・ケイパー(パーカッション)、テンダイ・クーンバ(ダンス/ヴォーカル)、カール・マンスフィールド(キーボード/バンドリーダー)、マウロ・レフォスコ(パーカッション/ドラム・セクション・リーダー)、ステファン・サン・フアン(パーカッション)、アンジー・スワン(ギター)、ボビー・ウーテン3世(ベース)
STORY
ショーの冒頭、プラスティックの脳を持って登場したデイヴィッド・バーンが、人間の脳の進化について語り始める。「人間の脳は成長と共に衰えていく」という衝撃的な研究結果について話を始めたバーンは、ショーを通じて現代のさまざまな問題について問いかける。コミュニケーションの大切さや選挙の重要性、人種問題など、混迷の時代を生きる現代人の意識を揺さぶる物語が語られる。今回の舞台で、バーンは意識的に何もない空間を選んだ。マイクもドラムセットもなくし、新たな仲間である11人のミュージシャンやダンサーと舞台の上を縦横無尽に動き回る。【「KINENOTE」より】
スパイク・リー監督がデイヴィッド・バーンさんによるブロードウェイ公演『アメリカン・ユートピア』を映画化。
これまであまりデイヴィッド・バーンさんの楽曲を聴いてこなかった(トーキング・ヘッズ時代は少しだけ)ので当初、さほど興味を惹かれなかったさくひんなのだけど、周囲の評判もよかったのでようやく鑑賞。
まず気づくのが、シンプルな舞台。ドラムやキーボードも固定ではなく、移動音楽隊のように首からぶらさげて演奏。そしてバンドのメンバーを見ると、男性もいれば女性もいるし、白人もいれば黒人もいるという具合で多様性を兼ね備えている。
この辺りのことは全部デイヴィッド・バーンさんがMCで説明してくれたけど(笑)、自身がスコットランドからの移民で、バンドメンバーにはカナダ、フランス、ブラジル出身者もいて、移民なくしてアメリカは成り立たないということを表している。
先般、ノーベル物理学賞を受賞した眞鍋淑郎さんも日本からアメリカに渡り、多額の研究費を負担してくれたことを感謝していたけど、移民にもチャンスが与えられるところがアメリカのいいところ(一方、日本は横綱まで登りつめても認めてもらえないけどね…)。
だが、それでも「ユートピア」というわけではない。
終盤にブラック・ライヴズ・マター運動に関連してジャネール・モネイさんの「Hell You Talmbout」を歌うが、いまだに人種差別による犠牲者は後を絶たない。
深読みしすぎかもしれないが、オリジナルロゴのUTOPIAの文字が天地逆さまになっているのは、まだ道の途上、未完成という意味も込められているのであろう。ユートピアは「ユー」(YOU)から始まるというメッセージがシンプルながらも響くものがあった。
最後は出演者が客席まで降りていくのだけど、やはり観客の大半は白人なのよな…。このあたりの格差が解消されたら、ユートピアも近づいてきたと言えるのかも知れない。
